《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

ホワイトデーのターン。さぁ、それではさっそく参りましょう。今週の爽ちゃんニュース!

君に届け リマスター版 21 (マーガレットコミックスDIGITAL)
椎名 軽穂(しいな かるほ)
君に届け(きみにとどけ)
第21巻評価:★★★☆(7点)
   総合評価:★★★★(8点)
 

バレンタインが終わり、次は男の子のターン! それぞれのホワイトデーの行方は…? そして爽子たちもいよいよ3年生! 進むべき道を悩みつつ、高校生活最後の1年が始まります…!

簡潔完結感想文

  • ホワイトデー。お姫様たちへ王子様たちから心を込めた贈り物です。
  • いよいよ3年生。志望校を決めたり、塾に通いだしたり、忙しい日々。
  • 風早の誕生日。来年の誕生日はどこでどんな状況で迎えるのだろうか。


どんどん恋愛の比重が下がって、文科省推薦の受験漫画みたいな21巻。

完全な悪口じゃないですよ。
一生懸命な人ほど金言をたくさん見つけるだろう。
でも序盤の笑って泣ける恋愛漫画とはやはり視点が変わってきている。

高校生が主人公の恋愛漫画は3年間きっかり描けば大作に感じられる一方で、
どうしても進路が重いテーマになってしまいますね。
「受験生」が重くのしかかる前に連載をやめるのも一つの手なのかもしれません。
最近読んだ作品だと『ストロボ・エッジ』『360°マテリアル』などですね。


作中の昨年末の描写が異様に長かったせいもあって、時間の進みが早く感じられる。
今巻は3月のホワイトデーから5月中旬の風早誕生日後まで描かれている。あっという間だ。
もしかしたらこれは爽子たちの体感時間と同じかもしれない。
進路に迷ってすっきりとした答えが出せないまま、時間ばかりが経過していく。
高校生活も、好きな人と一緒にいられる時間も、もう少ないのかもしれない…。


男たちのホワイトデーのお返しがそれぞれ高額じゃなくて良かった。
張り切って押しつけがましくなりそうな心配もしていた(風早と健人)。
爽子カップルは風早よりも爽子がもの欲しそうにテンション高め。意外と欲張りなのが出ちゃってますね。
健人のは飴かな。奇しくもピンと同じですね。ピンの飴は食べずにお守りにしそうだな、矢野ちん。健人…(泣)
この中では龍のが一番手が込んでますね。相手を熟知している感じがする。
龍は風早よりもずっと長く片想いしてるのに、答えを求めたりせず、相手の準備を待っている。
どんだけ我慢強いんだか。でも案外、計算してるかもしれませんね。
兄の失恋なぐさめ10ポイント、君は薔薇だと贈り物20ポイント、ホワイトデーのお返し5ポイント、100ポイント到達で千鶴は完落ちするぞ、と。

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プレゼントへの喜び方が自然な爽子。普通のカップル感が凄い。
しかしホワイトデーの贈り物こそライトだったけれど、風早より先に結婚という言葉を持ち出したヘヴィな健人にドン引きです。
しかも健人は根本的に矢野ちんに成長を望んでいない様子。
自分の手のひらの中で大事に飼っていたいという感じです。
妻を家に縛り付ける精神的DV夫ですね。ここにもロクでもない男がいたか…。

今巻のラストで、駅の向かいのホームにいる健人を見ようともしない矢野ちん。
将来のことで頭を悩ませているとはいえ、象徴的な場面です。
付き合い始める前、ホームで乗るはずの電車を見送って矢野に話しかけに行った健人とは対照的だ。
彼女の目に自分は映っていないのではないか、健人のたれ目が悲しみの色をたたえている。

一方で風早は爽子がためらっている事を感じ取っている様子である。
上手く背中を押してほしい。困難を乗り越えられる確かなものが君たちにはあるから大丈夫、なはず。


そして高校生活もラストイヤー。
しかも進路を決めたり、受験をしたりすると1年に満たない期間しかない。
そういえば3年生に進級した途端にこの漫画に存在しなかった「後輩」が登場しましたね。
爽子と風早の噂話をしているモブキャラだけですけど。
2年生進級時はカップル成立直前の微妙な時期だったんで、お話として新キャラや新たな恋模様など投入する隙がなかったのかな。
以前にも書きましたけど、私の夢想は爽子に恋する後輩の子の登場でした。
風早の嫉妬と焦りを見たかった。余裕なくなって失敗するパターン。

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ピンが薦めてくれた大学に行くことは、風早と離れることを意味するが…。
そして5月15日は風早バースデー。
5月のいつか、という情報はありましたが15日だったんですね。
誕生日は苦も無く一緒にいられるみたいですね。やっぱり爽子にはバレンタインの呪いがかかってますね。


そして爽子の初塾。
爽子は高校受験の時は一人で勉強したんでしょうね。
目標を持って頑張れる、それだけで凄い才能だと思います。
塾通いをお年玉で賄おうとする爽子に母は「頼りなさい!」と一括。黒沼親子らしい会話ですね。
自費で勉強をしようなんて考えたこともないなぁ…。


『前巻』からまた再登場したくるみが今度は勉強面でもライバルになりそう。
いやライバルじゃないか。風早の恋人は一人だけだけど、学校に入れる人は複数人いるんだから。
くるみも教師志望。祖母の代から教師一家とは意外ですね。設定は後からでも付け足せます。
くるみは意外と身持ちが固いですね。
恋愛面では追い立てられるように恋をし続ける矢野ちんより私は好きかもしれません。
慎重な爽子の尻をたたいて、最初の一歩を踏み出せるようにするくるみは名調教師かもしれません。
これからも爽子と一緒に歩いていって下さい。


全体としてコマ割りが大きくなって、手書きの書き込み文字が少なくなった気がします。
3巻あたりまで、書き込みの字が小さくて大量で何て書いてあるか読めないよー、と嬉しい悲鳴を上げていたのに…。
かつての、かしましいほどの会話は少なくなりましたね。