《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

主に少女漫画と小説の感想ブログです

サンタさんはもう来ないけど 大好きな家族と大好きな人から優しい贈り物が届きました。

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椎名 軽穂(しいな かるほ)
君に届け(きみにとどけ)
第6巻評価:★★★★(8点)
   総合評価:★★★★(8点)
 

吉田の想い続けてきた、龍の兄・徹が帰ってきた。吉田の想いが叶わない時、爽子と矢野はそれぞれ吉田のことを思いやり、吉田のことを想う龍も優しく包みこむ。2学期も終わり、クリスマス会が開催される。楽しみな爽子だが…。

簡潔完結感想文

  • 好きな人と再会して即、失恋した千鶴。その後の自分の行動に苛立ちます。
  • 失恋した人とどう接するのか、それぞれ不器用なりに対処法を見つけます。
  • クラスのクリスマス会が催されますが、爽子は家族との時間を大切にして…。


龍の兄・徹と予期せぬ再会に舞いあがったのも束の間、開始4ページで失恋する6巻。

届かなかった想いをフォローするには自分は何が出来るのか、多くの登場人物が自分の無力さをかみしめる。
爽子が友達の失恋に頭を悩ませるなんて開始当初には想像もつかなかった光景だ。
友達や恋愛感情を獲得したからこそ出来る苦悩だ。
爽子が悩んでいる事にも喜んでしまう、この構造が本書はずるいですよね。
何もかもにそれまでの過程が思い出されるのだ。

全てに達観している矢野ちんも風早師匠でも友人の失恋には何も出来ない様子。
ただ風早の言葉ではないが「自分のことで悩んでくれる人がいるのは 心強い」、それは間違いない。
どんな時も一緒にいてくれる、それが友達なのだ。

そして千鶴自身も気持ちの落としどころに悩んでいる。
千鶴の投げやりなプレゼントの渡し方さえ反省する誠実な姿がすきだ。
千鶴を想う龍は「これで千鶴が兄ちゃんをあきらめられるから」と恋心をにじませるような、そして挑発するような言葉を投げる。
対して千鶴には怒り以外の描写がなかったけど、この言葉から何も予感しなかったのかな。
龍は今後も苦労しそうですね。
それでも自分以上に千鶴の恋をしっかりと終わらせる人を召喚している。
あからさまなセリフですが龍の兄の背を「ぬかすよ」という宣言は恋のライバルとして、兄以上の存在になるという宣言でしょうね。
皆、千鶴の事を思いやっているのだ。

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恋に関してはエゴイスティックな面もある龍
落ち込んだ千鶴の居場所を龍だけが探し出せるというのも龍の千鶴マイスター感がよく出ている。
最後に岸壁で千鶴が落涙する場面、龍はどのような気持ちで受け止めていたのか。
千鶴の事をずっと見てきたから徹への想いが果たされなかった痛みを共感しているのか、千鶴を抱きしめてる事を少しは喜んでいるのか、俺が徹を忘れさせてやると新たに決意をしているのか。
こうなってくると、この恋の行方も気になってしまう。


『前巻』の感想で少し触れましたが、風早と龍は恋バナをしてるのか問題、これは特にしてない様子ですね。
それでもお互いの好きな人が筒抜け状態なんだから、どれだけガードが甘いのか。
幼なじみに長年好意を持ってる龍はともかく、風早の爽子への好意が寝てばっかりの龍にまで伝わってるなんて大事件だ。


クリスマス会は久々の爽子メインの話という事もありますが、爽子を含めた登場人物全員善人の構図で特に好きな回です。
多分、去年までは爽子にとって1年で一番といっていいほど楽しい日だったのに、それが気持ち一つで疎ましいとまでは言わないまでも、明らかに優先順位が変わった様子がうかがえる。

会場の風早から電話を貰った爽子に対しては何も泣くことはないでしょ、とも思うけれど、その切実さが背中を押す家族と彼らからの娘への贈り物を見た時の感動が倍増したのも確かだ。
風早から爽子への個人的なプレゼントは最初ネックレスかと思い、随分思い切った物を贈るな、と風早の先走りを責めてしまった。
しかしそれが出来過ぎなぐらいタイミングが合った物と知った時には一転して、決して高価ではない良い物だ、と風早のセンスをべた褒めした。
クラスでのプレゼント交換は出来なかったけれど風早と父親の品が交換されてしまうというハプニングも含めて、泣き笑いのエピソードである。
やっぱり本書の中でも上位の話だ。

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娘を必要と思ってくれる人たちと繋がれるように お父サンタからの贈り物
爽子がケータイを持った事で関係は進展するのでしょうか。
放課後や休日に呼びだすには便利ですよね。
爽子は受信オンリーだろうから、風早のメール攻撃でしょうね。
ケータイという高校生の必需品もこういうドラマがあると、今後、爽子がケータイを手にする度に温かい気持ちに包まれるだろう。
願わくばそのケータイが受信する情報が全て爽子にとって良い物でありますように…。


手作りのクリスマスプレゼントで判明しましたが、爽子は裁縫や手芸が得意みたいですね。
正確には手芸「も」ですね。
以前の描写から料理も人並み以上に習得してるみたいだし、何より勉強が学年上位。
あれ、それこそ見た目に引きずられてたけど実は完璧超人なんじゃないだろうか。
唯一の欠点だった対人スキルもタイミングの問題だけで、風早が契機になって矯正されたらクラスメイトにどんどん信頼されていった。

これは美人じゃないとか「ぼっち」とか色々と共通点を見い出して共感していた読者には手痛い現実である。
これで風早という彼氏まで出来てしまったら爽子は完全に「あちら側」の人間だ。
もちろん成長は嬉しいけど、この彼我能力差を考えるとほんの少し裏切られたと思ってしまう自分がいる…。

君に届け 6 (マーガレットコミックス)

君に届け 6 (マーガレットコミックス)

  • 作者:椎名 軽穂
  • 発売日: 2008/03/25
  • メディア: コミック