《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

玄関にヤドリギのリースを見た瞬間から、ヒーローは彼女を そこに誘導したかった説

高嶺の蘭さん(4) (別冊フレンドコミックス)
餡蜜(あんみつ)
高嶺の蘭さん(たかねのらんさん)
第04巻評価:★★★(6点)
 総合評価:★★★☆(7点)
 

互いの想いが通じ合い、ついにおつき合いがスタートした蘭と晃。なんだが付き合う前よりも、晃のことがキラキラと輝いて見える蘭だけど、親友の智ちゃんの一言でキラキラだけでなくドキドキも加速してしまいます! そんな蘭に、晃はある提案を持ちかけて…!?「別冊フレンド」で純“愛”度100%で大人気連載中! 高嶺女子×お花屋男子のピュアラブストーリー、第4巻!!

簡潔完結感想文

  • 名前で呼ぶこと、手を繋ぐこと、交際の一つ一つを悩みながら前進していく。
  • 彼の友達だからと よく知らない人を自宅に招く。命じられればキスもする!?
  • 寒いのに室内に入らないのは、彼女にキスを命じることが出来る特等席だから!?

一段一段 大人の階段を上っていく 4巻。

『4巻』から交際編となり、恋人を名前で読んだり、触れたり、デートしたり、クリスマスを迎えたりと2人で過ごす喜びと緊張が伝わってくる内容になっている。相変わらず心を通わせるよりも、肉体的な接触での胸の高鳴りが重視されている。
今回の接触におけるキーワードは「手」ではないか。ヒロインの蘭(らん)が交際相手の晃(あきら)に手を握られ彼の胸に触れたり、初めて手を繋ぐまでのプロセスが描かれていたり、蘭が晃の手にハンドクリームを塗りこんだりと、手によるコミュニケーションが目立った。特に一番最後の行為は もはや愛撫といえると思う。こんなスキンシップをされて晃が平常心でいられる訳がない。

「これから手 つないで 見つめ合って ちゅっちゅしたりする」交際の模様が全部 暴露される

面白かったのは晃が植物知識を活かして蘭の行動を包囲していること。北ヨーロッパでは「ヤドリギ(宿り木)の下では女性は男性のキスを拒めない(音久無さん『星伯爵は星を愛でる』3巻より)」という習慣があるので、蘭の自宅玄関にヤドリギのリースを発見した晃は その場から動こうとしないのには笑ってしまった。
クリスマスイヴの夜、寒空の下で それまでは室内にいたし、家の中には家族は誰もいない。それなら いつもの優しい晃ならば蘭が風邪を引いてしまうと室内に戻ることを提案するだろう。しかし この日の晃は それをしない。ヤドリギの下から一歩も動こうとしないのだ(笑)

晃が、これはキスのチャンス!と思ったのは、その前の仲間内で始まった「王様ゲーム」のような催しが影響しているのではないだろうか。この時、蘭は晃以外のクラスメイトとのキスを命じられ、生真面目だから それを実行しようとする気配を見せた。ここが晃の企みの伏線になっている。蘭は命じられたことを、約束事を遂行しようとする人だと分かったから、晃はヤドリギの習慣を利用しようと計画を思い立ったのではないか。
交際の模様は恋心よりも肉体的な接触に重きを置き、やや情緒がないのだけど、このキス計画は とても念入りに前置きや伏線が用意されているように思えるから笑える。

一つ疑問なのは、このクリスマス回において蘭は よく知らないクラスメイトの男子生徒を家に招くという心の動き。いくら晃の友達だからといって まともに会話をした覚えがない人を家に招こうという気持ちは私には理解できなかった。せめて この前に2学期に文化祭があって、そこで この仲良し5人グループが何となく形になったとかの前段が欲しい。この数か月ずっと2人の話だったから、そういう展開を用意できなかった事情も理解できるけれど展開が急すぎる。せめて蘭が彼らと仲良くなりたいと思っていた などの布石は打てなかったか。丁寧な話のようで割と雑なのが作者の作風のような気がする。

「Episode 13(カモミール 花言葉:あなたを癒やす・これからもよろしく)」…
晃との両想いは蘭の脳の処理能力を超えた現実だったのか、その後また熱が ぶり返す。久々の登校で晃と対面したらパニック状態。友人に報告すると早くも この次の展開について話され、今度は その情報で蘭の頭は いっぱいになる。

下校時、晃からの一緒に帰ろうと言われ、その途中で彼から呼称の変更を提案される。蘭は晃に蘭と呼ばれ、蘭は晃を晃さんと呼ぶことにしたのだが気恥ずかしい。やがて晃は蘭の戸惑いを知り、彼女だけがドキドキしているのではないと蘭の手を自分の心臓に触れさせる。やっぱりスキンシップが多い作品だ。
最初に惹かれた時と変わらない晃の笑顔を見て、蘭は自然と彼の名前を呼べるようになる。交際は1人で頑張るものではなく、2人で問題を乗り越えることが出来る状況なのである。2人の交際はカモミールティーから始まる。まさに これからも よろしく、である。

「Episode 14(ラベンダー 花言葉:繊細・優美)」…
次の交際のハードルは初デート。今度も そのことで頭がいっぱいになる蘭。意外に一度に処理できる情報量は小さいのかもしれない。名前呼びの時とは違い、蘭は自分から勇気を出す。それに晃は笑顔で応える。それが蘭は嬉しい。

2人で出掛けるなら どこでも楽しいが、2人で決めた場所はプラネタリウム。商業施設の中にあるプラネタリウムなので その前にショッピングを楽しむが、こういう場所に慣れていない蘭は空回りしてしまう。少女漫画では そうやって落ち込んだ後に幸せは待っている。2人は当初は照れから避けていたカップルシート券を くじ で当て、それを利用する。そこで自然と近づく距離。途中で晃が眠ってしまったため、蘭は彼の手に小指だけ触れる。その幸福感に包まれる蘭だったが、やがて目を覚ました晃は蘭の手を握る。2人が内に秘めていた願望が(人工とはいえ)満天の星空の下で叶うのが ちょっとした奇跡なのだろう。

「Episode 15(ポインセチア 花言葉:祝福・私の心は燃えている)」…
2学期の終業式に晃の友人の山田(やまだ)が失恋したことを知り、蘭はクリスマス会の開催を提案する。蘭の母親は、娘が晃と交際していることを晃の実家の花屋で彼の母親から聞いていたこともあり、この家でのパーティーを許可する。

集まったのは計5人。これが今後も仲良しグループとなる。蘭は初めて晃の友人たちと接し、彼らから聞く晃の情報を新鮮に聞く。特に悠哉(ゆうや)は小学校時代からの幼なじみといえる存在で、晃情報に明るい。そして蘭は晃も立派な彼氏になるために努めていると聞かされ、自分と同じであることを知る。悠哉に年上彼女がいる情報は当て馬では ございません、という間接的な宣言なのだろうか。

5人でパーティーゲームを始めるが、始めたのは王様ゲームの要素が入ったジェンガ。ここで蘭は晃以外の男性2人と恋人繋ぎをしてしまったり、キスをする命令を引いて大パニックに陥る。

「Episode 16(ヤドリギ 花言葉:キスしてください)」…
生真面目な蘭はキスをするべきなのか悩むが、蘭ならキスをしかねないと考えた晃が山田とキスをして この場を収束させる。晃がキスに抵抗がないのは、これ以前にキスをしたことがあるからなのか。これが嫌な伏線でないことを祈るばかり。

グループで遊んだ後は、2人きりの時間となる。晃は自分が初のクリスマスで空回っていることを自覚していた。これは初デートの蘭と反対の構図である。だが蘭にとっては空回っている晃も かわいく思える。蘭は水仕事が多い晃のために手作りしたハンドクリームをプレゼントとして手渡す。これは前回のプラネタリウムデートが伏線となっている。こうやって話が ちゃんと繋がっている構成は作者の集中力を感じられて好きだ。スキンシップ多めの作品なので蘭はハンドクリームを晃に塗ってあげる。指でクリームを塗り込む作業は直接的にエロティックである。

蘭の真面目さ × 流されやすさ × 交際の事実 × ヤドリギ = キスの成功率1000%!

友人たちを見送った後も2人は家に入らず外で過ごしているのだが、これは蘭の家の玄関にあるヤドリギのリースの習慣を実行するためなのだろう。ヤドリギの下ではキスを拒めない。その習慣があることを蘭に伝え、それを実行しようとする晃だが、彼女の緊張を感じ取り、今回は頬にする。手繋ぎ、キスと さっさと消化してはイベントが無くなってしまうという理由もあるだろう。

このまま2人で居たら口にキスをしかねない雰囲気が流れるが、そこに蘭の父親が帰宅する。晃は蘭の家族とは初対面。これにて両家の挨拶が終わり正式な婚約となる。…が、蘭の父親は晃が娘の交際相手と知って動揺する。そして蘭には過去に何か男性トラブルがあったことを ほのめかす…。