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少女漫画と小説の感想ブログです

悪魔の所業 その8。186歳年上ヒーローが一番 鈍感というヒロインにとっての地獄。

花と悪魔 8 (花とゆめコミックス)
音 久無(おと ひさむ)
花と悪魔(はなとあくま)
第08巻評価:★★☆(5点)
 総合評価:★★☆(5点)
 

魔王ルシフェルにはなが何を言ったのか!? それを確かめるために、魔界へと向かったビビ。はな達の心配をよそに無事帰ってきたビビだったが、ローゼマリーと結婚することが決まったと報告! それは、はなの身の安全と引き換えにした、魔王との取引だと言うのだが──!?

簡潔完結感想文

  • 最終回に向けて魔界の状況・魔王の現状などを設定し ようやく縦軸が完成する。
  • 結婚式を阻止せよpart 2。感情はともかく、やっていることは1回目と同じで幻滅。
  • なぜか結界内に捨てられていた はな という疑問を ここにきて解消。遅くない?

想いの はじまりは物語の終わり、の 8巻。

白泉社作品は両想いが その作品世界の終わりを意味することが多い(もちろん例外もある)。そして本書では本当に一つの世界が終ろうとしていた。
この『8巻』は作者が物語を畳み始めたことがビンビンと伝わってきた。また ようやく『8巻』にして大悪魔であるビビが何度も魔界への帰還を要請される理由が判明し、連載の延長を重ねて どこに向かっているか分からなかった物語に縦軸が初めて生まれた。ここは ある意味で関心した。これまで起こしてきたバラバラな要素を上手く取り込んだなぁ、と思う反面、連載のペースが掴めてきて、ようやく作品を見渡す余裕が出来たのだろうな、と思う。もう少し早くビビが魔界にとって必要な人材であることを描いて欲しかった。

そして個人的に再定義されて安心したのは、屋敷の結界問題。ビビは地上に移り住む際に人間が屋敷に入らないように結界を施した。これで彼の平穏な生活が保障されたはずだったのだが、地上暮らしの2年目で はな が屋敷の敷地内に捨てられていた。ここに矛盾が生じ、もしかして はな は特別な血を持っているのではないか、とか悪魔の血が流れているのではないかなどと邪推をしたが(花を枯らさない時点で違うのだが)、それが結界の範囲の問題だというエクスキューズが今回 用意されていた。遅い。あまりにも遅い。作者が気づかなかったことなのかどうか私には分からないが、もう少し早く この問題に気づいて欲しかった。

こうして物語の終わりに向けた準備が着々と整えられていく。クライマックスに向けての環境は整い、そして恋愛面でも ようやく両片想いが成立した。恋の決着はビビの手に かかっているのだが、彼に課せられた役目を考えると なかなか一筋縄では いかなそうである。

はな が屋敷の敷地内に捨てられた謎が明らかになる。しかし明らかに後付けの説明だなぁ…。

語の骨子は しっかりしてきたが、内容面は褒められるものではない。

『5巻』とはビビと はな2人の立場こそ真逆だが、結婚式の阻止という焼き直しが起こる。私にとって良い漫画とは同じことを繰り返さない作品である。しかし本書は それを堂々と繰り返す。大体 予想した通りに物語は進み、登場人物の行動理由も以前 描いたことと同一であって新鮮味がまるでない。作者は婚約者や結婚というベースでしか物語を作れないのかと その発想力の貧困さに泣きたくなる。

今回、ビビは はな を守るために魔王と取引をした。これは『5巻』で はな がビビを守るために魔王と取引をしたのと意図的に対称性を持たせているだろう。その対称性が美しければ良いのだが、特に それを描いたことでの意味や感情の揺さぶりが起きていない。相手を守るために遠ざける、という繰り返しは本当に辟易とする。そのテイストを入れることで、作品内が ほぼ同じ味になっている。作者は無自覚にやっているのだろうが、引き出しの少なさを露呈している。月2回の定期連載だと立ち止まっていられないのだろうけど。

また はな は徹底的に無力に描かれていて、彼女を甘やかす周囲の人々のサポートのお陰で、ようやくビビの結婚を阻止できている。最初は幼かった彼女が立派に成長した姿を この辺で見せて欲しかったが、ビビも含めて愛されるヒロインという立場に甘んじているように見える。連載を通して はな も作者も分かりやすい成長を感じられないのが残念だ。


ビは自分を避ける はな の態度の変化の裏に魔王の存在があると勘づき、魔界に向かう。更にビビは魔王の異変を感じ取っていた。最近やけにビビに構うのも、地底の穴も濃くなった瘴気も全ては魔王の力の減衰によるものだとビビは考えていた。すなわち魔王の死期が近いというのが彼の推理。それは魔界の均衡が崩れ、悪魔にとって魔界が快適な場所ではなくなることを意味していた。世界の終わりは近い。

実は魔王側は次期王の選出に乗り出していた。ビビを欲するのは魔王として擁立したいから。1話からの謎が ようやく明かされる。だがビビは魔王になるつもりはない。話し合いは決裂し、ビビは帰るつもりだったが はな の名前を出され、彼は捕獲されてしまう。そしてビビは魔王と取引をするのだった。


一方、残された はな は、ビビが豪雨で教会に足止めをくらった はな を助けるために、無理に結界を突破して怪我をしたことを知る。はな はビビと一緒にいるために恋心を隠し、これまで通り家族のように過ごすことを決めた。なのにビビは自分のために無理をして、そして はな が嫌な態度を取ったために魔界に行ってしまった。一緒にいるはずが離れ離れになってしまうことを はな は後悔する。

そんな悲嘆に暮れる はな がビビのベッドで疲れ果てて寝てしまい、目を覚ますとビビが帰還していた。そこで彼女は胸に秘めていた好きという言葉を口にするのだが、その真意が伝わるまでに屋敷にビビの婚約者・ローゼマリーが登場する。
さらにビビはローゼマリーとの結婚を発表する。これが取引内容で魔王から はな を守るためにビビは要求を呑んでいた。ただし完全なる政略結婚でビビは地上暮らしを継続できるという。これは ある意味では はな の一緒に暮らす願いは叶えられていると言える。

長寿の悪魔にとって結婚の意味・意義って何? 結婚や婚約など色恋でしか悪魔を語っていない。

王の念書も貰い はな の身の安全は確保された。
ローゼマリーはビビが次期魔王の候補だから結婚をしてやる というスタンス。だが結婚早々別居は体裁が悪いので、ビビが地上にいるなら この屋敷で暮らすと宣言をする。

こうして はな がビビの隣から弾かれた形になる。つい この間まで はな はビビを寄せ付けなかったのに、自分はしてもいいが、されると悲しむというダブルスタンダードは、少女漫画ヒロインのスタンダードな造形と言えよう。

ビビに気持ちを伝えず逃避ばかりの はな の態度を見て桃(もも)は彼女に喝を入れ、本音をぶつけさせるために一緒にビビのもとに走る。だがビビは魔界に旅立ってしまっていた。しかしトーニが遅れてビビに仕えるというので桃は はな と一緒に同行を願い出る。また このパターンか…。もう魔界に特別感がない。


な はフェルテンなど周囲の人にビビへの本当の気持ちを伝え、彼らの協力を得る。既視感たっぷりのビビの結婚成立阻止作戦が開始される。はな たちは成長薬を飲んで それぞれ「弐號」状態になって、フェルテン・エリノアの新しい付き人として会場に入る。

皆の協力のお陰(特に自分に甘い男たちの力)で はな ビビの前に到着する。ビビと対面して はな は結婚しないでと彼に願望を伝える。その願いには好意が含まれていることを伝える直前に またもローゼマリーが闖入して伝わらない。

その後、はな と桃は牢獄に入れられる。結婚式の開催が近づき絶体絶命のピンチになるが、それを助けるのはローゼマリーのメイドや執事(見習い?)たちだった。本来の はな たちと同年代の彼らは、ビビが大嫌いという理由で、この結婚の阻止をしたかったという。

彼らは魔界の孤児で魔物に命を狙われていたところをローゼマリーに拾われ、家と仕事を与えられた。はな におけるビビと同じ境遇だ。ビビが はな にメイド仕事など屋敷や身の回りの仕事をさせなかったのは種族が違うからか。ローゼマリーと違って いずれ捨てる者に教育をしても意味がないと思ったのか(でも勉強は習っていたよね)。これはやっぱりヒロイン様は何もしなくていい、ということなのか。最終回までに はな を好きになれるかなぁ…。


ローゼマリーの屋敷に仕えているメイドたちは、ローゼマリーが婚約者であるビビを嫌いという言葉を額面通り受け取っていた。そこからローゼマリー視点での回想が挿まれる。なぜ彼女は拾った子供に こんなに内心を吐露するんだ、と疑問であるが。

ローゼマリーの家は血統だけは由緒のある没落貴族で、彼女は家の再興のために努力を重ねていた。しかし どうしても勝てないのが天才肌のビビだった。しかもビビの方はローゼマリーの存在を認識していない。そこで努力することで1位になり、彼に自分の存在を認めさせたかった。なんだか南マキさん『S・A』みたいな設定である(掲載誌は同じ「花とゆめ」)。

しかし自力で振り向いてもらえないまま、彼との婚約が決まり、彼は自分を認識した。振り向かせられなかった自分も、ビビを頼って再興しようとする家もローゼマリーは好きになれない。
そして この日、結婚式直前になっても彼は自分ではなく、はな のことを考えている。女性としてのプライドまで壊されローゼマリーは怒る。なぜなら本当は彼女はビビに惹かれているから。

だがビビは婚約の解消を申し出る。既にローゼマリーは独力で家の再興を果たしており、この結婚の意義は薄い。ローゼマリーは何とか魔王の妻という権力欲に取り憑かれたような発言をしてビビを繋ぎ止めようとするが、彼は はな が結婚しないで欲しいと泣いたから、結婚はしないという。なんだか初期の頃のように、はな のワガママによって彼女の幸せが成立し、その裏では別の女性が泣いている図式となっている。

ただ これまでと違って、これが はな だけの願望じゃないことは明らか。ビビに結婚を止めて欲しいと告げた はな の願いをビビが聞き入れたのは、その言葉が嬉しかったからという動機がある。そして今回は自分の願いで誰かが悲しむという現実を はな が理解している。自分が間接的であっても誰かを傷つけていることを自覚しながら彼女は自分の願いを優先する。


な は再度ビビに会う直前に薬が切れ、いつもの彼女に戻る。これは再会前に起きなければならなかったイベントだろう。わざわざ一緒に薬を飲んだ桃との時間差を作っているのも、はな がビビの恋愛対象の弐號ではなく、今の はな として想いを伝え、そして受け入れられるということが重要なのだ。ここは偽りの姿では意味がない。

はな はビビと再会して、彼の お嫁さんになりたいと告げる。それが好き以上の愛を伝えるための言葉だったから。

ようやく ここで初めてビビは はな が自分を避けて隠していたことを知る。そうして彼も覚悟を決め、魔王に婚約破棄を伝え、そして自分たちの取引も無効にする。彼は はな の危険は自分で命をかけて守ることにした。

最後にローゼマリーが魔王の前でロリコンと判明した男とは結婚しないと強がりを言って婚約破棄を承知したことで結婚は破談となる。


婚阻止のはずが今度は はな がビビと婚約状態となった。

魔界からの帰還後、この屋敷の結界が張り直される。これは今後 はな を狙う刺客が現れるかもしれないので結界を強力なものにするため。上述の通り、これは結界の張り直しというより、捨てられていた はな を巡る謎の再定義の意味の方が大きいだろう。

こうして騒動が落ち着いた際に、ビビはフェルテンたちから からかわれて初めて はな への気持ちを自覚する。鈍感 × 鈍感だったから これまで話が進まなかったのか…。200歳の初恋かぁ。ちょっと気持ち悪い(笑)

しかし はな が屋敷内で倒れてしまう。どうやら魔界の瘴気に人間の はな は当たってしまったらしい(桃も)。しかも現在は魔王の力が弱まって瘴気が濃い状態になっている。だから一層 影響を受けたらしい。だからこそ魔界にはビビが必要になるのだが…。