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少女漫画と小説の感想ブログです

万全な終活は心残りは生じないかもしれないが、それでも残された者に悲しみは溢れる。

紅茶王子 第10巻 (白泉社文庫 や 4-18)
山田 南平(やまだ なんぺい)
紅茶王子(こうちゃおうじ)
第10巻評価:★★★★(8点)
 総合評価:★★★★(8点)
 

そめこの3つ目のお願い…それは紅牡丹に、誕生日までの期限付きで彼氏になってもらうこと。複雑な気持ちを抱えたまま、お茶会メンバーは紅牡丹の最後の仕事を手伝うことに。そめこ好みに大ヘンシンした紅ちゃんとのデートは…!?一方、自分の気持ちを自覚した奈子とアッサムの間はどうもギクシャクとして…!? 解説/安斎あざみ 2007年5月刊。

簡潔完結感想文

  • 想定外でも想定内でも、2つの18歳での別れの、悲しみの深さに変わりはない。
  • 紅茶王子たちは魔法を自重し、そめこ は別れを選んだのに、奈子は変わりがない…。
  • 奈子とアッサムをクローズアップするために美佳やアールグレイの重要性が希薄に。

にも話してくれない親友に ひがみ根性が爆発しそうな 文庫版10巻(TSP.114~125)。

そめこ とホンムータンの終活のような、最後の一時まで2人一緒に過ごそうとする姿に心打たれた。

しかし一方で どうにも主人公・奈子(たいこ)に対しての不満が溜まっていく。どうやら私の中では平素の彼女が あまり好きではないらしい。学校イベントなど何かに熱中している時の彼女は応援したいと思えるのだが、普段の彼女の態度には納得できない部分が多い。そして悪いことに物語も3度目の夏を迎えているとイベントは少なく、日常回ばかりになっている。その中で周囲の者たち(美佳(はるか)や そめこ・紅茶王子たち)が相手の心情を考えて思慮深く動いているのに対し、彼女だけは自分の特権を これまでと変わらず使っていることに腹立たしさを覚えてきた。

紅茶王子たちは、1人の学生として参加した合同体育祭(『3巻』)を通して、以前より頻繁に魔法を使わなくなった。そして そめこ は自分の紅茶王子・ホンムータンとの別れで大きく成長した。彼が別れた後の自分のことを心配しなくて良いように、テストで好成績を取ることを目標にしたし、彼との別れの後は一人称を変えて、自分の足で大人になっていく決意が見える。


のに奈子は変わらない。私には そう見える。
そめこ がホンムータンと別れた後、奈子は そめこ と映画を見るために紅茶王子に子守(弟の健太(けんた))を頼む。ホンムータンのことを機に、奈子の中で紅茶王子との別れを意識した行動が見られるかと思ったが、相変わらず紅茶王子を便利屋だとでも思っているような使い方なのには心底 軽蔑した。そめこ は自立を画策しているというのに、お前は…という成長のなさである。

奈子は自分の努力で出来る範囲の願いごとなんて願わないなどと初期では言っていたはずなのだが、今の彼女は自分の都合で紅茶王子に物を頼んでおりダブスタ女でしかない。せめて健太を一緒に連れていって、映画の間だけアールグレイと一緒に過ごさせるとか出来ないのだろうか。それが無理なら母親に しっかりと この日は健太は見られない、と話を通すべきではないか。
『9巻』で母と子育ての運命共同体だ、とまで言われておいて、第三者アールグレイ)に責任を押しつけている。もし事故があったりしたら どう説明するのだろうか。色々なことに覚悟が足りない奈子の成長のなさには唖然とする。

もうちょっと自分の言われたことや周囲の変化に気を遣って行動できないものか。この回だって、たとえ そめこ を元気づけるためのイベントであったとしても、健太を誰かに押しつけるような真似をすべきじゃない。そしてアールグレイを活用した この行動は そめこ に対しての配慮も足りない。私が そめこ だったら、いいよね、奈子ちゃんは、願いごとを使わなくても何でも言うことを聞いてくれる王子様がいて、とひがみ根性を爆発させてしまうところである。お茶会同好会の中で一番 遅く召喚したのに一番 早く その人と別れることになったことに対して そめこ は どう考えているのだろうか。

この場面、奈子はホンムータンの別れや自分の奈子への感情を消化しきれずに機嫌の悪いアッサムの皮肉がなかったら、願いごとを使おうなんて思考に まるで至らなかっただろう。ホンムータンが融通が利かないから そめこ が彼との別れを早めたことなど、そめこ の事情を考えれば自分も自分の出来る範囲で物事を処理しようと思ってもいいはずだ。全ての「別れ」には感傷的にはなるが、結局、色々なことを先送りにして、ホンムータン召喚前と同じように そめこ を孤独にしているような気がいてならない。作中の そめこ は良い子で、それでも奈子の幸せを願ってくれるのだが、私なら別れに対してセンシティブのようで実は他者の悲しみに対して鈍感な彼女にイラっとしてしまうだろう。

美佳が この頃 アッサムに苛々しなくなったのは監督モードになったから。プレイヤーは引退状態!?

た作中のアッサム以外の男性の扱いにも首を傾げる。
以前から書いているが美佳は当て馬にもさせてもらえず、漁夫の利を狙うような男に成り下がっているし、これまでずっと健太の面倒を見てきたアールグレイよりも健太はアッサムとの関係を望んでいるような描写もアールグレイの気持ちを考えると複雑だ。
彼は優しいから主人の弟である健太にも等しく博愛精神を発揮しているのに、まるでアッサムが一軍で、アールグレイは二軍かのような描写になっているのが気になる。
小さい子供≒無垢な存在が安心するからアッサムにはヒロイン・奈子との恋愛の資格があるということなのだろうか。これは もちろん、アッサムに人間の血が入っていて子供は そこに本能的に反応して安心感を覚えたという描写でもあろう。これとは逆にセイロンが子供の頃に人間だったアッサムの母親に恐怖を覚えたように、子供は異質か同質かを察知している事例だろう。

ただ美佳にしろアールグレイにしろ これまで積み上げてきた想いや関係性を一気に壊していくような描写になっているのが気になった。どうも終盤の この物語は物事を雑に扱っているような部分が少なくない。前半の丁寧さが どこかにいってしまったような気がする。話も不必要に複雑になってるし。


めこ の新しい彼氏の噂は、自演の甲斐あって すぐに校内で広まる。この時の すぐに飽きて別れるよ、という女子生徒の ひがみ根性から予想が別の意味で当たってしまうのが悲しい。陰口は叩くけど、そめこ批判にギリギリならないというのは少なくとも中学から一緒の、受験から解放された私立学校の生徒たちの絆なのだろうか。

そめこ の理想とするカレシに仕立てるために長かった髪をバッサリ切ったホンムータン(それでも長めだが)。学校内外で これでもか と見せつけることによって2人の交際の話は学校中を駆け巡る。だが噂を広めすぎて、この学校と、そしてカレシのホンムータンが在籍しているという話になった男子校の新聞部と この学校の新聞部が結託し、このカップルを追うことになる。少女漫画の新聞部にプライバシーという概念はないのである。

そめこ はデート帰りにホンムータンに家に送ってもらい、両親に彼の存在を見せ、自分が やりたいことを次々とクリアしていく。ちなみに そめこ を送り届けたホンムータンが帰るのは広いセイロンの新居であった。人間と紅茶王子の場合だと、紅茶王子が小さくなって1つのベッドで男性同士が寝たりするが(美佳とアッサム)、紅茶王子同士だと そうはならないみたいだ。これはセイロンだからなのか? というか やっぱり美佳とアッサムの距離感が変なのでは…(笑)

だが新聞部の報道によって、他校(という設定)の生徒が この学校に簡単に出入りしていることが職員の間で問題になり、そめこ は担任教師らに注意されてしまう。だが そめこ には一分一秒が惜しい。遠慮していたら心残りが出来てしまう。だからホンムータンにカレシ用に無理に口調を変えさせたりせず、ありのままの2人で「恋人」の時間を楽しむことにした。


子たちは2人のために誕生日パーティーの時間を早める。そして その後は誕生日が終わる その日の24時まで2人にデートを提案する。そめこ が選んだのは遊園地だった。
そめこ のアリバイ作りのために駆り出されるのはアールグレイ。そめこ に化けて、その晩 そめこ の家族を騙すために、ホンムータンの即席カレシと同じで、そめこ になるため慣れない口調の特訓が始まる。だがホンムータンと同じくアールグレイも不器用で「自分」というものを捨てきれていない。セイロンが そめこ の真似が上手なのは器用だからなのか、それとも彼が そめこ を よく見ているからなのか。

一方、アッサムは そめこ よりも奈子のメンタルを心配する。そうやって主人以外の周囲の人物にまで深入りしすぎるアッサムの悪いところをセイロンは指摘する。
確かにアッサムのように時間をかけるばかりでは、仕事量は ある程度 割り切っているセイロンやアールグレイの方が多くなるという皺寄せがありそうである。結果、仕事の回転率はセイロンが一番多くなって、彼ばかりが割を食っているのではないか。それなのにセイロンは冷淡みたいな言われ方をするのは心外であろう。ちゃんと紅茶王子の「仕事」は歩合制だろうか心配になる。一律の月給だったりしたらセイロンたちの不満ばかりが溜まりそうだ。


して当日。奈子たちから贈られたプレゼントは そめこ を着飾る服・靴・アクセサリーだった。なんだか奈子のプレゼントだけ安上がりとか思ってはいけない。

遊園地では奈子たちも尾行する。アールグレイも そめこ の両親に お休みの挨拶をした後に合流する。
だが すぐに閉園時間が来てしまう。そめこ はホンムータンに最後にキスをお願いする。そしてホンムータンは目をつぶったまま の そめこ の前から消えていく。このキスは未遂と読み取るべきなのかな。未遂の方が未練が残らないのかな。どうなんだろう。

ただキスの準備といて目を閉じていた分、彼が消えるところを見なかった分、そめこ は現実を受け入れやすかったのではないかと思う。むしろ奈子やアッサムが しっかりと紅茶王子が消えるところをペコーに続いて見たことの方が傷は深そうである。このホンムータン消失に関してはアールグレイやセイロンのショックを描いて欲しかったかなぁ。


ンムータンとの別れの後、そめこ は近くに奈子がいることを信じて彼女の名を呼ぶ。そして彼女に抱きしめられて初めて号泣する。そめこ はアクシデント的に別れた元生徒会長とペコーのようにならないように、その話を聞いてから半年以上、この日のために準備してきた。心残りはない、だが そうだからといって悲しくない訳ではない。紅茶王子たちを大事に思っている人の その悲しみは等しい。2つの別れを通して、どう やっても逃れられない悲しみを奈子たちは思い知る。

だからアッサムは奈子のことを思って、アールグレイに あと60年くらい つきあってやれ、と遠回しに願ったのだろう。人間界の60年は紅茶の国では5~6年のことらしい。つまり紅茶の国の時間の流れは、こちらの世界の1/10の速度ということだろうか。

そんなアッサムの悲痛な願いを聞き、アールグレイは彼の心境を読み取る。つまりアッサムは奈子を好きになっている、と。

少々 幅はあるだろうが時間の流れは1:10。成人してるアッサムなら200歳以上ってこと!?

ホンムータンが国に帰った翌日、奈子たちは お店を貸してくれた怜一の店の片づけをする。奈子たちは昨晩、2人で泣きまくったという。そめこ は遅れて店に向かうが、その途中で会った怜一に対し、自分の一人称を「あたし」にして話す。18歳となった、大切な人との別れを選んだ彼女の再出発である。一連の話で そめこ のことが好きになった。


一方で、お茶会同好会での活動がないと、何だか好きになれないのが奈子である。

そしてアールグレイはアッサムの奈子への接近を より一層 警戒する。それが本来 仲の良い2人の紅茶王子間にギクシャクとした雰囲気を生む。この刺々しい関係性は一昔前なら これは美佳の役目だっただろう。だが美佳は いつの間にかにフェイドアウトして、アールグレイがアッサムの監視役のような存在になっている。そうなる原因は この後にそれぞれの事情が語られている。そこにフォーカスを合わせたかったのだろう。


ンムータンの国の庭園を訪れて物思いに耽っていたオレンジペコーは、ホンムータンが本国に帰ってきたことを知らされる。あの学校での2人は仕事を終えた者同士、そして同じ喪失感を抱える者同士である。

そうして2人は一緒に お茶をする。どちらかと言えばセイロンに仕事に対する考えが近かったホンムータンだが、今回ばかりは堪えているようだ。そして いつかのアッサムの父親と同じように、紅茶王子という仕事から逃れるために国王になりたいとすら願っていた。

ちょうど そこに登場するのがアッサムの父・ゴパルダーラ。紅茶王子にとって人間は社会勉強の道具。その経験を踏み台にして それぞれが王になる。だから その駒である人間に肩入れするな、というのが国王の考えである。
どうにも この国の王族の大人たちは二極化しているのではないかと思う。人間に寄り添うか、それとも心の崩壊を自己防衛するために人間に無関心、または彼らを憎悪の対象にするか。紅茶王子制度が王族の心を歪ませていやしないか。そろそろ紅茶王子の仕事の意味や始まりなどが語られても不思議ではない雰囲気になるが、根本的な制度の変革などは ないまま話は進む。

それに反論したいペコーだったが、王は彼女に内々で進んでいた婚約の話を告げる。


茶の国ではオレンジペコーの婚約話を発端に、王たちが集まる。それをペコーとホンムータンが盗み聞きする。
ゴパルダーラとセイロンの母親の目論見は、セイロンの即位にある。オレンジペコーとの結婚は その手段に過ぎない。セイロンは成人前だから単独では追うにはなれないが、伴侶がいるなら未成人でも王になれる。そのルールを利用しようとしている。そしてセイロンが継ぐべきは王位ではなくセイロンの父親が担っていた仕事だという。それに関わっているのがダージリンだという。

セイロンの母親・ケルニワースは、自分の人生を、夫の王家のために捧げている。10歳で嫁ぎ、そして病弱な夫に代わって執務をし、ようやく恵まれた子供を育てた。更に夫亡き後は正式に王として生きることになった。自分が捧げてきたもののためには子供も利用することを厭わない。紅茶王子とは、そういう王の支配下にある子どもたちなのである。


コーは王たちの会話の中でアッサムが人間との間に生まれた子であること、そしてダージリンが渦中の人であることを初めて知る。ホンムータンは自分の知っている情報をペコーと共有する。この過程で読者も これまでの経緯を整理できる面もあるだろう。

彼の整理する情報で目新しいのは、過去にホンムータンがアッサムの母の死の直前の姿を見たのが、彼が6歳、アッサムが5歳の頃だったということ。
その時のアッサムの母親は80歳を過ぎた姿をしていた。先の2つの世界では約10倍、または1/10、時間の流れが違うという話からすると、ホンムータンの生まれる前の両親の結婚式には、アッサムの両親は夫婦で列席していたので、少なくともホンムータンの誕生と妊娠期を合わせた7年以上=約70年ぐらいの経過とみるのが適当か。そうなるとアッサムの母親は10代後半か20代までには この国に来て、そして呪いのように齢を重ねていったと考えるべきか。

ダージリン紅茶王子の封印はホンムータンの誕生より以前であることは確か。だが彼は その後、奈子の父親の召喚に応じて人間界に行っている。そこから人間としての地位を用意され、怜一として生きている。つまりは封印が破られたということだ。

ホンムータンは、ダージリンの国外脱出がセイロンの父親の死去に際してあったと考えている。それが この国では2年前。つまりは人間世界では約20年前である。となるとダージリン=怜一は奈子が生まれる前から奈子の父親に召喚されていたのか。

そしてホンムータンはセイロンの即位とダージリンが国に戻ることの関連も考察し始める…。


ンムータンの件、紅茶王子との時間を考え、今年は例年以上に遊ぶ奈子の青春を感じ取った母親の提案で、アッサムや怜一たちを招いてのバーベキューが開催される。
母は奈子の想い人としてアッサムを観察する。母の目から見て彼は合格点。交際は可能だろう。だが その前に乗り越えるべき身分・世界の差がある。

ちなみに この回で美佳が どうして事態を放置しているのかが説明される。美佳は2人の関係性を理解しているし、その前に2人が違う世界の住人であることを理解している。だからアッサムが奈子に手を出さないという予想があって放置している。自分の出番は2人の別れの後だという計算高さも見える(だからダメなのだ…)。当て馬として活動はしないが、漁夫の利を狙う。卑怯者と罵られても仕方ない。美佳ファンはガッカリする展開だろう。

ただし そめこ は2人が くっつけば いいと思っている。自分たちが出来なかったことを奈子たちに託したいという気持ちがあるらしい。しかし そめこ は奈子が自分に相談してくれないことに対して何も思わないのだろうか。相手の事情には お節介を焼くのに、自分の事情には入らせない不均衡が気になる。ホンムータンが帰った日にでも そめこ に伝えて、痛みを共有すればいいのに。奈子と そめこ の不平等さばかりに目が奪われる。


してタイムリミットという点では健太の成長がある。彼はアールグレイの魔法を日常的に目にしており、アールグレイも健太の前から出たり消えたりしている。だが健太は そろそろ その秘密を秘密と思わず誰かに話してしまうような年齢・喋りの上達が見られるようになった。奈子にとって お荷物みたいな描かれ方はどうかと思うが、人間界の時間の流れ、人の成長などを表すという意味では彼の存在意義は とても大切だ。

奈子たちは それを口止めしようとするが、それは こちらの都合だ。だからアールグレイは健太が全てを忘れたほうが楽かもしれないと口に出す。
そんなアールグレイの態度をアッサムが責める。アールグレイが そういう後ろ向きな思考に囚われるのは彼の過去が関係しているらしい。どうやら彼もまた人間に恋をした紅茶王子の一人だったのだ。しかし許されない恋を引き裂かれたからこそ、彼はまだ紅茶王子をしている。アールグレイが思い止まったのは「僕が僕であることを やめることを選べなかったから」だという。アールグレイはアッサムに自分が出来なかったことや選べなかったこと、その問いに直面する時点に行って欲しくないのだろう。苦しみを回避できるなら そうなる前に自分が阻止するという考え方なのか。

この話をアッサムは奈子にも聞かせる。なぜなら奈子も「無関係じゃない」から。だが どうしてアッサムが奈子に話を聞かせたかという動機については先延ばしになる。読者には明白だが、奈子が それに気づいてはいけない。白泉社漫画は両想いを もったいぶるからだ。話は上手く お流れになるように構成されているが、ここまできて核心に触れないのは隔靴掻痒の印象を受ける。2つの世界とも思わせぶりな言動や描写だけが続いている。


バーベキュー後の花火で奈子が火傷をする。その時、アッサムは奈子のことを初めて「ゾウ足」ではなく「奈子」と呼ぶ。もう彼の中で感情を隠しきれないようだ。アッサムの中でのタイムリミットも近い。

そしてアッサムは健太に懐かれる。ずっと同じ時間を過ごしてきたアールグレイでもなく、奈子の前の好きな人だった怜一=ダージリンでもなく、アッサムこそが子供に選ばれた。恋愛としては そういう描写も分かるが、これではアールグレイが可哀想な気がした。彼が直接、抱っこを拒否されたわけではないが、これだけ長い間 一緒に居るのに、健太が交流は短時間でも本能的にアッサムを選んだとなると傷つくなぁ。

最後に紅茶王子が人間だったらという話の流れから、そめこ は主人の願いごとで紅茶王子は人間になれないのか、という疑問を彼らにぶつける。答えはNO。それは前例がないことだという。願いごと的にも誰かに影響が出るから難しいのでは というのが奈子の見解。そうやって自分の気持ち、そして湧き上がりそうな希望を消しているのだろう。