野切 耀子(のぎり ようこ)
甘くない彼らの日常は。(あまくないかれらのにちじょうは。)
第01巻評価:★★★(6点)
総合評価:★★☆(5点)
高校生活初日に財布を落とした緑は、同じクラスの一条礼に助けてもらう。お礼を言うチャンスをうかがっていたけれど、彼とその友達の3人がなかなか学校に来ない…。噂では3人で問題を起こして停学になったみたいだけど…!?そんななか、緑は学校で禁止されているバイトをしているところを理事長に見つかってしまう!! 停学と特待の取り消しになるところだったけれど、理事長は見逃す交換条件に「彼らを学校に連れ戻してほしい」と提案してきて…? イケメン問題児3人組とのドキドキ・スクールデイズ開幕です!
簡潔完結感想文
作品に少しも悪いところはないが、深みもない 1巻。
晴海ひつじ さん『斎王寺兄弟に困らされるのも悪くない』の感想文で「少女漫画において 生活の困窮から女性を救うセーフティネットはイケメンである。」と書いたが、本書もそれである。困ったヒロインがイケメンとの交流をすることで生活が保障される。その上、恋愛も成就するから一石二鳥である。
そして少女漫画においてヒロインの不幸とは他の人とは違う存在価値となる。そのためなら一族郎党を皆殺しにしてしまうぐらいヒロインの承認欲求は強い(苦笑) 不幸があって他の同級生より苦労があって人生経験があることでヒロインは特別になる。そう考えるとヒロインは同級生にして酸いも甘いも噛み分けた魅力的な年上の女性のような地位と見識を手に入れることになる。本書のヒロイン・七海 緑(ななみ みどり)が こじらせた男子3人から好感を持たれるのは、自分の境遇を嘆くばかりで他人に責任を転嫁させる精神性の幼い彼らにとって緑が頼れる お姉さん的な存在だからかもしれない。
白泉社作品を例に出すまでもなく、庶民どころか貧困にあえぐヒロインは読者の共感を得やすく、そんな彼女が御曹司など とにかく金を持っている男性に近づき、攻略していくからカタルシスが生まれるのだろうか。
最底辺ヒロインが御曹司ヒーローから見初められることで、作品内では革命が起こる。この大逆転劇、無双状態が読者には喜ばれるのか。そう考えると、白泉社作品など庶民が特殊な環境の中に入っていき、そこで上級国民たちに影響を与えるのは、いわゆる「転生モノ」で、異世界に入った途端、主人公に価値と強さが付与されるのと酷似した関係なのかもしれない。
さて、そんな貧乏ヒロインの無双が見られるのが本書である。
私の中で本書は初読と再読の時の心境が全く違った。初読は楽しい。クラスのトップ3を一気に取り込むヒロインの逆ハーレム状態で少女漫画を読む楽しみを得られる。ただ再読すると作品の薄っぺらさばかりが目に付いた。「少女漫画あるある」で話を作ったら こんな感じ?と思うほど既視感が強い。そして健気だったはずのヒロインは、傍から見ればサークルクラッシャーでしかない迷惑な存在にも思えてきた。恋の自覚が遅い(遅すぎる)無自覚天然の白泉社ヒロインと違って、本書のヒロイン・緑は最初から恋愛を意識している。
ただ その自覚的な恋心に由来する行動は肉食的に映った。そんな肉食感を貧乏設定で打ち消そうとする計算が見える。
しかも本書は登場する女性キャラが ほぼヒロイン1人なのだ。年上女性(端的に言えば おばさん)はいるが、同年代の固有名詞を持つキャラは いない。形式的な友達はいるが、名前もなく、一緒に行動をしたりはしない。常に緑1人に対して男性が3人という構図である。ライバル女性による意地悪を望んでいる訳ではないが、ヒロインの他に女性キャラがいないと彼女が悪い意味で「姫」にしか思えない。しかも姫自身が他の女性とイケメンたちとの接触を願っていない。モヤっとするのは当然だが、『1巻』でヒーローの口からヒロイン以外の女性は眼中にないと言わせてしまったのは残念だった。
この時点で、緑が誰を選ぶかという問題しか残っていないし、そして緑が誰を選ぶのかは一目瞭然。3人いる男性キャラだが誰がヒーローになるか、という楽しみはなく、ダンスの相手を交代するように、お姫様の緑が男性たちの間を彼に舞うだけである。
少女漫画読者が願っている夢みたいな内容ではあるが、あまりの内容の無さに愕然とした。良書が多いと思っていた掲載誌「デザート」だが、その中でも好みはあるものだと、私が近頃 読んだ「デザート」作品の いまいちな出来に落胆している。
貧乏による男性との接点の持たせ方も既視感があった。それでも展開に工夫があればいいが『1巻』では4回、緑のピンチにヒーローが登場するだけ。都合よく現れるヒーローを優しい、好き!と緑が思うだけの内容である。
再読して作者の狙いや、登場人物の言動に新発見が見えてくればいいが、『1巻』を読むと展開を優先すためか、そのキャラらしくない言動があって首を傾げてしまった。とにかく内容も心情描写も薄い。悪いところは一つもないが、取り立てて良いところもない。特に こじらせ男子たちの家庭環境や そこから生じる彼ら独自の思考が見えないのが残念だった。特に3人の男性の中でヤクザの息子については、その設定が欲しいだけであって、彼が悩むべき問題に全く触れていない。
ヒーローが最初から決定しているのは仕方ないが、もう少し それぞれの内面を掘り下げてくれても良かったのではないか。
高校生活初日から緑は財布を落とす。その財布には母と弟と3人で慎ましく暮らす一家の1週間の生活費が入っていた。しかし捜索中、目の前で財布を拾った男性2人が横領しようとしていた。
そこに現れたのが謎のイケメン。財布が自分の物だと言い出し、緑を差し置いて男性たちのバトルが勃発寸前。だがイケメン男性の方に仲間2人が現れ、人数的に分が悪くなった最初の拾い主が退散する。今度はイケメンに財布を接収されると緑が諦めた時、彼は緑に財布を返却する。お礼を言おうにも彼は名も名乗らず立ち去ってしまった。その男性に緑は感謝以上の感情を抱く。物語的には男性たちに奪い愛される財布は未来の緑の姿だろう。そして この時点で正ヒーローが誰なのかも分かる。
ただ謎のイケメンを活躍のためとはいえ、今後の家族の生活を考えたら、最初の男性たちに緑が黙り続けているのは ちょっと不自然だ。家の事情に加え、こういう不正に対して緑は臆するような子ではない。初読では気にならないが、再読すると その人の行動に疑問が出てくるのは、作者が性格を無視して物語を進めているからだろう。こういう部分は今後 何回も目にする。そういう点が作品の完成度を低くしている気がする。
その謎のイケメンヒーローの名は一条 礼(いちじょう れい)。後から現れた2人も加え、3人組は全員 緑のクラスメイトだった。だが3人は固まっており人を寄せ付けないので緑は お礼を言えない(ここも緑なら受けた大きな恩に対して即座に行動する気がする)。
しかも彼らは4月中に学校に姿を見せなくなった。どうやら校内での喫煙だとか教師への暴力だとかで停学処分になったらしい。しかも3人の内の1人はヤクザの息子だという。
彼らにまつわる噂を全く知らなかった緑だったが、なんと その3人と関わり合うことになる。
事の発端は校則で禁止されているバイトを学校理事長に見つかったから。不覚にも居酒屋でのバイト終わりの夜、制服で繁華街を歩いていたのを発見されてしまった。
このことで後日、理事長に呼び出される緑。ここで理事長による身分調査を通して緑の事情が明らかになる。父は多額の借金を残して蒸発、母は返済(と生活)のために働き、緑自身は学費免除の特待生で この学校に入学して、バイトを始めたという。緑が この学校を選んだのは特待生制度があるからなのだが、校則違反者への規定により それが剥奪される危機となる。
だが理事長は それを回避する代替案を用意していた。それが あの3人のクラスメイトたちの学校へのカムバック支援だった。どうやら当初の彼らの停学は1週間だったが、それが明けても登校してこないらしい。学校からの呼びかけを無視し続ける彼らとの調停役になって欲しいと、苦学生の緑を選出したという。この理事長の考え、後に明らかになる理事長の立場を考えると、ボンボン特有の甘ったれた礼の性格を叩き直すためにも思えてくる。礼に世の中には色んな立場の人がいることを教えるために緑が選ばれたのではないか。2人の出会いは理事長によるマッチングの結果である。
そして2週間後の中間テストを彼らが受けた場合、緑は学校公認の働き口を斡旋してもらえる。もちろん これが強制ではなく特待生剥奪を選ぶ道もあるのだが緑が どちらを選ぶかは明白だ。全ては理事長という神の思うがままである。そして緑は現実的な問題に加え、礼に会えるという特典に動かされる。
ただ入学早々、教師たちが匙を投げるのは無責任で、理事長には理由があるとはいえ、直接 動かないのも卑怯だ。全ては「少女漫画」の成立のためなのだろうが、大人たちの無能さに腹が立つ。そして本書の大人たちには立場はあるけれど深みがない(子供側もないが)。
緑は教えられた礼が一人暮らしをするマンションへと向かう。理事長は3人のプロフィールを用意しており(個人情報漏洩な気がするが)、緑は本人たちから聞く前に彼らの素性を知る。礼は財閥の御曹司、残る2人の五嶋 千尋(ごしま ちひろ)はヤクザの五嶋組の跡取り、家入 雪之丞(いえいり ゆきのじょう)は医者の息子だという。この3人の家庭環境は庶民の緑からすれば縁遠い存在。しかし後で弟に指摘されるが学校側の意向を受けた女性1人が男性の1人暮らしの家に向かうのは問題だろう。
3人に理事長との取引の話をして彼らの説得をするが、それは緑側の事情でしかない。ここは彼女のミスだろう。せめて例に財布の お礼を言おうとした緑だったが、家庭の困窮を伝えた上に、財布を取り出したことで礼に金目当ての行動だと思われてしまう。そこで礼は自宅にあった7万円を彼女に差し出す。手間賃として それを渡す代わりに出入りの禁止を言い渡す。
この行動に少なからず礼に惹かれていた緑は失望する。だから話は終わったとばかりに背を向ける彼らに、一介の高校生=緑にとっての7万円という金額の重さを力説する。その価値を知らずに金をバラ撒くような真似をする礼を一喝して、緑は この家を出る。
叱られたことのないボンボンに庶民ヒロインが正論を説くことで彼の印象に残る、というのは格差のある作品の1話目の お約束。
緑は礼の二面性に悩む。初対面でヒーローとして認識した彼は実は冷酷だった。
緑の相談役になるのは中学生の弟・紺(こん)。緑の行動に的確にダメ出しをしたり現実的な助言をする彼だが、それは姉のためだからだろう。彼は4人目(もしくは1人目)の緑を守るナイトなのだ。彼もまたイケメンで、ヒロイン以外は女性0人の清々しいほどの逆ハーレムが完成する。緑は紺のバイト(新聞配達)を あれこれ理由をつけて阻止するが、これは自分1人が苦学生じゃないとヒロイン性が輝かないからだろう。それなら紺を小学5,6年ぐらいにするのではダメだったのだろうか。
紺との話の中で礼たち側の事情について思いを馳せた緑は再度 礼のマンションに向かう。インターホンで門前払いされてしまうが、緑は自分の存在を無視できなくなるぐらいの お節介を焼き始める。
まずテスト対策用のノートなどを用意し、連日、自分の存在をアピールする。それに対し、表面上 一番 緑の頑張りを買う態度を見せるのは雪之丞だった。同情せざるを得ない、なんて言って礼の心を動かす。巻末の言動と食い違う気がするが、どうやら体よく あしらうことを狙った発言らしいことが後に判明する。
1週間、頑張り続けた緑は、マンションのエントランスに礼の姿を認める。すると彼はテストは受けると互いの譲歩案を出す。それで緑の問題はクリアになるが、彼女は礼たちに学校に来て欲しいと欲を出す。
この2人、2人きりになると お互いの身の上話をし出す。ここでは礼が緑の身の上話を聞く。緑は家計が苦しい自分に取って高校に進学することは特別なものであることを話す。そして ようやく緑から入学初日の話を聞き、礼は あの日 助けた女性が緑だったと認識する。そんな自己憐憫たっぷりな話に礼は心を動かされる。ちょろいものだ。
その帰り道、今度は千尋に会う。そこで千尋から停学処分の顛末を聞く。要するに喫煙を疑われ、千尋の家庭の事情から冤罪なのに責められ、因縁をつけた教師を振り払おうとしたら肘が当たって暴力事件に発展したらしい。しかも それを話し合う場で、校長(理事長ではない)も両家の子である礼と雪之丞に千尋との交際を止めるように言われ、3人ともカチンと来てしまったらしい。そうして学校への信頼を失った3人は不登校になった。
千尋は緑と同じく親を選べなかった者。そんな偏見のない緑に千尋は感心する。ちょろいものだ。
緑は彼らの冤罪と学校に適切な処分をさせるために、喫煙事件を調査する。すると すぐに真犯人が犯行を繰り返しているのに遭遇。しかも彼らは最初の財布をネコババしようとした者たちだった。盗み聞きした会話から彼らは自分たちの犯行発覚のピンチを千尋に なすりつけていたのが発覚。緑は その会話を録画する。
だが彼らの仲間に緑が捕らえられる。そこに現れるのはヒーローたち。緑からの連絡を貰って参上してくれたらしい。こうして緑は3人が悪い人じゃなかったことに安堵し、礼に再び トキメく。
ここで疑問なのが確かに緑はテスト対策ノートと一緒に連絡先を明記したが、それを礼たちが登録した描写はない。しかも既にグループLINEをしているのも不思議。描写が無いのに納得しろというのは内容が多くてキツキツの1話だからと言って許されない。
こうして事件は解決し、学校側も理事長が出ることで改善する。こうやって便利に理事長を使えるので彼を配置したことは良かった。
そして学校の風紀が改善したことで3人も復学。緑も新たなバイト先を得た。だが理事長は彼らの卒業まで導いて欲しいという。これは作品的には卒業まで描くという意味なのだろうか。
しかし彼らは まだ団体行動が苦手で学校内で逃避する。それを連れ戻すのが緑の役割。昭和の時代なら不良生徒と お節介な学級委員長という感じか。
腫れ物に触るようなクラスメイトたちとの交流が次の課題。そんな時に学校イベント・体育祭が迫る。それにしても こじらせ男子たちは話し合いの場から逃げた癖に、出場種目に文句を言う大人げない人たちだ。心も身体もボンボンだなぁ…。
だが緑は早くも彼らの人の好さを利用して、団体行動をしてくれないと神経が摩耗すると訴える。うん、大丈夫、そんなこと出来るなんて神経は図太いから。緑は作品の女王で、彼らのお姫様だから言うことは絶対 聞くし、ピンチには助けられる。構図が分かりやすい。
彼らは体育祭で使用する応援の旗を作る作業に参加するが、周囲は3人を遠巻きに見る。そこで千尋が塗り方が上手いことを発見する保育園の先生・緑。礼は塗り方が速く、雪之丞はセンスがある。こうして良いところを伸ばし、周囲に溶け込ませるようとする。同級生というより保護者である。
作業は下校時間まで続き、旗はベランダで乾かし、残りの作業は明日の朝に回される。人数不足(礼たち)のため作業が遅れているのだ。
学校帰りに買い物をした緑は途中で犬の散歩をする礼と遭遇。だが突然の雨になり、礼は自宅マンションから傘を取ってくると言ってくれる(優しい)。けれども緑の心配は応援旗。買い物の荷物を礼に預け、学校に引き返す(優しい)。
緑にとって それは礼たちが周囲に馴染むシンボル。それをダメに したくない。しかしベランダから回収途中に緑が落下の危機。それを助けるのは当然、礼。ピンチにナイトが現れるパターンは早くも2話目で飽きた。礼に この旗の自分の中での意味を伝える緑。そういう目標は自分の胸の内に秘めとけよ、と思うが礼は それに心 動かされたようだ。そして緑も礼との接近を望む。
翌朝、誰よりも教室にいたのは礼たち3人だった。姫の言うことは絶対なのである…。
体育祭本番前に緑の新しいバイト先が描かれる。そして ここから3日間は詳細に描かれる。
バイト先はイタリア料理店で理事長とも懇意な夫婦が経営している。そして礼たちにとっても開店してから10年以上の行きつけの店であることが判明する。初日から 大忙しだが、緑はヘコたれることなく仕事を全うする。それでオーナー女性からの信頼を得る。
オーナーは礼たちを親戚の子のように見守ってきた。中学に入って より他を寄せ付けなくなった彼らが緑とは気安げに話していたことにオーナーは安心する。彼ら夫婦は礼の母親、そして理事長と大学時代の友人だと言う。礼の母親は2年前に病気で この世を去ったという。緑は理事長が礼たちを気にかける理由を初めて理解する。
だが翌日の日曜日、礼が体調を崩したらしく、オーナーは緑に礼のマンションへの見舞いに行かせる。
いきなり風邪回である。ちなみに風邪の原因は、応援旗を守るために雨で濡れたからのようだ(正確には その後、緑にジャケットと傘を貸して冷えたからか)。
緑は以前、マンションに入ったことがあるから礼の家に入るのも抵抗がない。2人になるとプライベートな話をしがちな2人。礼は緑から借金の原因となった父親への思いを聞く。そこで緑は憎いけれど、後ろ向きの考えに囚われるのは不健康だから自分で自分を不幸にしないようにしていると答える。少女漫画ヒロインの条件は心が濁らないことだろうか。
ここで緑はバイト先から持ち込んだ料理を温めるのに失敗する。それでも礼は緑のしたことに感謝する優しさを見せる場面だ。しかし なぜレンジを使わないのか謎だ。鍋で温めた方が美味しいと感じるからだろうか。でも これは失敗させるための選択だ。胸キュンや優しさの演出を優先してばかりで必然性や合理性がない。
緑が洗い物をしている内に礼が部屋で熟睡してしまう。飼い犬が物を落とし、それを拾う際に緑が見たのは写真立てから飛び出した礼と母親の写真。そして折りたたまれ見えないようにした父親の姿だった。どうやら父子で すれ違っているらしい。
改めて緑は礼が この広いマンションで独りであることを痛感する。御曹司ではあるが人生に苦しみがない訳ではない。そんな彼の苦しみを救うのがヒロイン的な目的となる。両想いどころか告白する前から彼女面である。なんかもう先が読めてしまうし、早くも他の2人が無価値・無意味になってはいないか。もっと誰が本命なのか分からないぐらいの混沌とした展開なら面白いのに、一を聞いて十を知る という感じで何もかもが予想の範囲内で進んでいく。
そんな時、雪之丞が見舞いに現れる。事情を説明し、雪之丞に看病や家事をバトンタッチする緑だったが、雪之丞は2人の接近に思うところがあるらしい…。
そして その翌日の月曜日に体育祭が行われる。なぜ週末ではないのだろうか。
礼も熱が下がったらしく参加する(何だか作品内の日程がタイトだ)。本調子でない礼のために他の2人が出場種目の変更手続きに出る。だが100m走とリレーは変更不可。緑はリレーは自分が代役を務めると立候補する。実際に彼女は俊足らしいが、礼を一本釣りしようとする出しゃばりが鬱陶しいと思うのは雪之丞だけじゃないはずだ。
3人は それぞれ足が速いらしく それが女性たちの人気になる。足が速くてモテるのは小学生まで、とはよく言われることだが、少女漫画においてはイケメンで足が速くないとモテない。優秀な身体能力=男性としての強さ=子孫を残したい!ということなのだろうか…。
借り物競争に出場した千尋が選んだのは緑。彼への お題は「異性の友達」だった。千尋は迷惑かもしれないが他に頼める人がいなかったというと緑は友達なんて嬉しいと無邪気に喜ぶ。礼と同じく千尋は緑に「へんな奴」というが、それは他の女性とは違う気に入った!ということなのだろう。実際に体育祭でも最初から礼から色眼鏡で見ないのは緑だけだと褒められている。これは今後どれだけ学校内で女性人気が上がっても緑しか眼中にないと言う彼の色眼鏡だろう。
この回でも緑にピンチが訪れる。人との接触で転び、リレー前に足に怪我をしてしまう。
誰にも気づかれないヒロインの体調不良や怪我を見抜くのはヒーローの役割。礼は緑の怪我を知り、結局リレーに出場する。そしてイケメン3人の活躍もあり緑のクラスは1位でゴールする。
だが礼は少し無理をしたらしい。緑の前では平気な振りをするが、顔は青白く、サボるためと言いながら保健室で横になるほどだ。
緑の恋心を3人の内で最初に見抜くのは雪之丞(全男性キャラの中では弟の紺が最初に予感している)。そして雪之丞は緑を牽制する…。