《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

親に金で売られた遊女が、大旦那の息子に水揚げされ その後 身請けで玉の輿に乗るハッピーエンド。

蜜×蜜ドロップス(8) (フラワーコミックス)
水波 風南(みなみ かなん)
蜜×蜜ドロップス(みつ みつドロップス)
第08巻評価:★★(4点)
 総合評価:★★(4点)
 

HONEY(ハニー)制度廃止の大改革に激震の走った九華(くげ)科。でも実は主人(マスター)の気持ちを引き締めるものだったなんて。ほっとしたのもつかの間、可威(かい)の両親に正式に紹介されてドキドキの柚留(ゆずる)。なのに母親にダメ出しされちゃった!!そんな…、これから可威のそばにいちゃいけないの!?いよいよ涙の最終巻!

簡潔完結感想文

  • HONEY制度編 終了。日本の未来のためにも制度は廃止した方が良かったんじゃないか。
  • 最後まで柚留への試練は続く。何かを学ぼうとすると勉強の邪魔する色欲魔が問題⁉
  • どんな最低な行為や描写があっても、結婚するぐらいの純愛なので文句は言わせない。

描写が売りの作品だが、性描写が ことごとく無意味な 最終8巻。

なんだか戦ってばかりの少年漫画と同じように、ヒロインに試練が繰り返されるだけの漫画だった。
序盤からヒーロー・可威(かい)に振り回され、
彼の元を簡単に去らないか、身勝手に下半身を触られることで試される。

その試練を越えた後は、ずっと2人の仲を引き裂こうという目論見が繰り返されるだけ。
だから一本調子で飽きる。

しかもヒロインの柚留(ゆずる)は下半身をつけ狙う2人の男性や制度に振り回されるだけで、たいして努力をしない。
バスケの練習も中途半端だし、勉強も赤点を取ってから頑張るだけ。
『8巻』で出てきたマナーの習得も1週間の付け焼刃だ。

彼女が手に入れたのは、自分の失敗を100%許してくれる男ぐらいだろう。
最初は試練を与えていたはずの可威が、彼女の失敗全てを許すことで柚留の成長が止まった。

可威が甘くなったら、柚留は色欲に溺れるだけ。
勉強をしていても落ち込んでいても可威の慰め方は愛撫か身体を重ねるかしかない。

頭が おかしくなりそう、もぉ らめぇー 何も考えられないぃーーー、と本当に何も考えなくなる。
最終盤の性描写は本当に無用の長物。
柚留は優先順位を考えないし、口だけヒーローから脱却したはずの可威が再び高慢になってしまっている。
作者にとって性描写は一種のノルマなんだろうけど、それが彼らを堕落させている。

もしかしたら、これは可威と柚留のペアだけ、
MASTERとHONEYの立場が実質的に逆になっている、という表現なのだろうか。

本来は、堕落したMASTERを自立させようとするのがHONEYの役割だが、
愛されヒロインの柚留は、ずっと成長しなくても身の回りのお世話を可威がしてくれるよ、
という どこまでも夢見る読者には甘い結末。
こういう甘いばかりの話を読んでいると読者は恋愛糖尿病になりそうである。

柚留が「性欲処理機(冬唯・談)」から脱却できたのか甚だ疑問が残る展開だった。

マナーや勉強、柚留を成長から遠ざける可威の「生娘をシャブ漬けにする戦略」。最後までヒーロー失格。

して今回の感想文のタイトルにもしたけど、
改めて本書は、身体を売るしかなかった遊女の話に思えてならない。

金で売られ、金で買われた事実を、
ただ若い肉体に惹かれたMASTERを好きと思い込むことで忘れようとしては いないか。

HONEY制度や結婚を利用してはいるものの、
結局、どこまでも金持ち坊っちゃんの都合の良い道具でしかなかった。
娘を売った柚留の一家に全く成長や変化が見られないのも残念なところである。

前作に引き続いて結婚という結末を用意するのも、
男性は結果的に一途な愛を貫いたから、同意のない性暴力の数々も不問にしようという力技に感じられる。

男性の豹変も制度も全ては柚留に苦労を強いるために生み出されたもの。
全てが不自然で、全てが空虚。
その構造に気づかない年齢層の読者には波乱万丈に見えるかもしれないが、
読者の年齢が上がるほど、世界観の浅薄さに気づくのではないだろうか。

過激な性描写より問題なのは奥行きの無さである。
この連載の後から少女漫画界は性描写が自粛され、それ以降は実力勝負となる。
その後も2作が実写映画化されるなど作者は活躍を続けているが、
ちゃんと作家としての実力が向上しているのかを見てみたい。

最終巻の本編は3/5ほど。
残りの2/5は完全な読切短編が2作品。
本編も含めて3回連続、どこで男性を好きになったのかが分からない作品であった。
それでも画力だけは格段に向上している事が分かった。


よいよHONEY制度の存続をかけたテストの結果が発表される。

現 生徒会長の絃青(げんじょう)は採点結果をすり替えて、全員合格を発表するが、
実は学力テストで不合格だったものがいる(全学年で9名。1/3は不合格。誰だかは分からない)。

そういえば絃青の父親もCD-ROMの中身を すり替えてましたね。
名字を含めて、何かを入れ替えるのが得意な一族なのかな。

これにてHONEY制度=柚留と可威の関係も絶体絶命!

が、ここで可威が珍しく新理事長に頭を下げる。
これはHONEY制度の真の意義を理解せずに壊そうとした過去の反省でもあった。
でも、その本心は柚留と離れたくないだけ。
結局、利己的に見えるのが残念だなぁ。
もうちょっと九華科同士の特殊な関係性を描いてもらいたかった。

その後、九華科全員が、HONEY制度の存続を心から望んだところで、種明かしとなる。
これは壮大なドッキリだったのだ!

今後は数年に1度 このドッキリが行われるのだろうか。
(でも2回目以降は生徒間で噂が出回りそうでドッキリしなさそうだ…)

これで現在の九華科の問題は解決した。
だが、いずれまた同じ事態が起きるだろう。
新理事長がHONEY制度を批判した根拠は根本的に解決されないままなのだ。
作品が物語の根本を破壊しすぎて、その意味を失わせてしまった。
やはり順次 HONEY制度の廃止を進めた方が 世のため人のためでは なかろうか。


この結果、DROPゲームでも最下位のHONEYDROPはなくなり、罰ゲーム制になる。
(でもDROPゲーム自体はやるんだ…)


中、ずっと裏切者だった千駿(ちはや)も心を入れ替え、可威の友達に正式に立候補する。

これは可威にとって「好き」という言葉が言えなかったように、千駿にとって素直に言えなかった言葉である。
それを言える事が彼の成長なのだろう。
邪魔するつもりが、柚留と可威の愛の力に改心してしまった、というところだろう。

これにて学校内における試練は全て終了となり、ここからは未来への試練となる。

しかし 可威も千駿も こじれてしまった人格なんだろうけど、
それによって周囲(主に柚留の下半身)に被害が及んだ。

男性のワガママに振り回されるヒロイン、というのは少女漫画らしいが、
ずっと同じ問題が続いていたのは問題だ。

やっぱり九華科の個人回を作って、話にバリエーションをつけた方が良かった。
柚留と可威の甘い味 一辺倒では飽きる。
たまに口直しがあれば、作品世界も広がったのになぁ…。

白泉社的な制度を採用したのであれば、
同じように白泉社が どう群像劇を楽しませているかを研究すれば良かったのに。
この制度と人数を用意しておいて2人の性愛しか描かないのが悔やまれる。


いては、可威の母親からの試練。
結局、徹頭徹尾、柚留への試練だけで物語は構成されている。
別れさせようという勢力に どう対処するかが問題となる。

柚留を親に紹介した可威。
だが対面時の食事で彼の父親に粗相をしてしまう柚留。
以前、千駿から食事マナーを覚えておくようにと助言をしたのに結局 無視するからこうなるのだ。

落ち込む柚留だが、可威もマナーや服装の前に性欲を全面に押し出すから彼女が成長しない。
結局、この2人は刹那的な欲望を優先して、人間的な成長が見られないまま。

柚留は男性には とことん愛されるが、女性からは反感を買うばかり。これが最後の試練。

柚留に試練を与えるのが母親というのがポイントですね。
彼女は柚留と同じHONEYの立場から、公私にわたるMASTERのパートナーになった人。
将来的な姑が、息子の嫁に対して花嫁修業をさせる、という内容でもある。

1週間後のパーティーへ向けて、マナーの特訓が行われる。
本書では、短い期間で特訓するのも もはやパターンと化している。

この1週間でも、柚留が吐く弱音を可威が優しく受け止めるというパターンではあるものの、
その後に人前で おっぱじめたりと台無し。
いっつも同じ展開である。
これが「甘い」の表現だと思っているなら大間違いだ。

パーティーも無事に切り抜け、
柚留は可威の母親から認められ、その証として可威の好きな料理のレシピが渡される。

親との対面、そして許諾を経て、一気に結婚一直線である。


から最後は時間が一気に飛び、彼らの大学の卒業式の前日となる。
(大学でも九華科は存在するのかな? 柚留は6年半HONEYだったみたいだけど)

そして可威は卒業式のその足で南の島(どこかは不明)に行き、明日 結婚すると言い出す。
柚留に贈る3つ目の指輪を渡し、2人の愛は永遠になった。

独身最後の夜も2人は燃え上がる。
どこでもかしこでも盛っていた2人ですが、きっと今回も前作同様、避妊具は100%していたのでしょう。

結婚式は同窓会の様相を呈す。
那由太(なゆた)&絃青をはじめ、柚留の家族、
茅架(かやか)に冬唯(とうい)。こちらは一足先に結婚済みらしい。

上記の通り、結婚した事で過去の行為の全てが許されると思っている節がある。

不器用だから、可威から好きだと言われる前に全てを奪われる柚留。
不器用だから、友達になりたい人の大切な人を壊そうとする千駿。

好きな人への嫌がらせが、本書の場合、下半身への性暴力だっただけなのだろう…。
今更ながら、何もかも間違っている。


「氷点下のマリア」…
予備校のテストで頭がいっぱいの澪菜(みおな)は、
ある日、雪の中に倒れている男性・陸弥(りくや)を発見する…。

サスペンス風の展開だが、いかんせん恋愛部分が駆け足。
お互いにどこを好きになったの??という感じ。
全体的に展開が早回しで、彼らの気持ちの変化が追いつかない。

真面目系の女子が、あっという間に悪い男に堕ちる話にしか見えない。
そして このまま遊び惚けて、志望校は志望校のままになる未来が見える。

「恋愛祈願」…
告白して両想いになった桃(もも)と、家庭教師の竜矢(たつや)。
だが受験が終わるまでは 家庭教師と生徒の関係でいるとの約束があって…。

初めての交際に浮かれる女性の姿と、受験生という足枷を描いた作品。
だが山もオチもない作品である。
まるで、この前に2人が両想いになる過程が描かれた読切短編があって、本書はその続編みたいな感じを受ける。
でも そんな事実はなく、両想いという状況だけが与えられて、
ヒロインが右往左往するばかりである。

2作続けて受験のお話で、ヒロインたち から見れば大人に見える大学生の男たちなのだろう。
けれど出会ったばかりの女子高生にいきなりキスしたり、
生徒である女子高生の告白に応えたりと、かなり問題のある人間にも見える。