《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

合宿1日目は愛する人と一緒の布団で、2日目は違う男の胸の中で眠る 不埒なヒロイン。

萌えカレ!!(4) (フラワーコミックス)
池山田 剛(いけやまだ ごう)
萌えカレ!!(もえカレ!!)
第04巻評価:★★★(6点)
 総合評価:★★★☆(7点)
 

宝くんと両思いなれて幸せいっぱいのひかる。しかも新の略奪宣言のおかげ(?)か宝くんが積極的!!週末は合宿…ということはそろそろ初H?ドキドキのひかるだけど合宿はハプニングの連続で!?●収録作品/「萌カレ!!」#16~20/番外編「新の鬱で幸せな一夜」

簡潔完結感想文

  • 空手部の合宿は お風呂でのハプニングや同衾、遭難からの異母兄弟の急接近!?
  • 無自覚ヒロインが違う男の名前を出す回数だけ、硬派なヒーローがキスで口を殺菌。
  • 三角関係が安定し始めた頃に新キャラ登場。クライマックスに向けて物語が動く。

手の恋心を誰よりも信じているのは異母兄弟の2人、の 4巻。

本書はヒロイン・ひかる、宝(たから)、新(あらた)の三角関係をメインに描く物語。この半年間、ひかる と宝が交際しており、順調に愛を育み、いよいよ性行為も視野に入っている状態。安定した交際描写になると退屈も感じるところだが、性行為を匂わせたり、新という悪魔なキューピッドが いることで物語にアクセントを加えている。

だが ひかる と宝との交際にも問題がある。それが本当に好きだからこそ嫌われたくないという気持ちが強すぎる点だ。ひかる は宝が初恋の人で、この恋を大切にしたいから彼に自分の良い面しか見せようとしない。彼の口から別れるという言葉が出るかもしれなかった時は、宝から全速力で逃亡することで自分の絶望を先延ばしにした。少し自己中心的で まだまだ心から相手の愛を信じ切れていないと言える。

そして宝の心配事は新という存在。自分の異母弟である新を脅威に思うからこそ、ひかる と新の接触を快く思わないし、彼女の口から新の名前が出るたびに胸が痛んでいる。そんな自分の心理を ひかる に言えないのは、自分を小さな男だと思われたくない硬派な宝の意地であろう。だから宝は自分の胸の痛みを表現するため、新の名前が ひかる の口から出るたびに、その口をキスで塞ぐ。少女漫画的には他の男の痕跡を消す「消毒」と呼ばれる行為であろう。だが宝の場合、自分に害を与える新の名前を「殺菌」しているような気がする。消毒は彼女を守るための行為だが、殺菌は新への敵意すら感じる。優しいが故に口に出せない気持ちがストレスになっている。そして自分が不安を感じると有無を言わさず ひかる にキスをする姿は硬派な宝というよりも俺様ヒーローのような独り善がりな行動に移る。このところ新が ひかる にキスをしたり性暴力をしない代わりに、宝の方が ひかる に暴力的なキスをしている。ひかる は その強引さにも ときめいているようだが、この宝の不機嫌からの暴力は初期の新を連想させる。
彼もまた ひかる の自分への愛を信じ切れずにいると言える。だが巻末でクリスマスにホテルで過ごすことを約束した2人。心も身体も繋がることで そんな不安は消え去るのかもしれない。

宝が不安な気持ちをキスで処理している心理は、初期の新と大差ない。完璧に見えて宝も未熟なのだ。

新の場合は、初登場からの俺様ヒーロー的な行動が祟り、ひかる への好意を少しも理解してもらえない焦燥がある。宝しか目に入らず、新の気持ちを蔑(ないがし)ろにするのは無自覚ヒロイン・ひかる の罪であろう。上述の宝の暴力的なキスと反比例して、新は ひかる に決して手を出さなくなる。

それが鮮明に浮き出るのが今回の合宿での遭難の夜だろう。これは『2巻』のラストで新が酔って眠る ひかる を自宅マンションに連れ込んだ際と同じシチュエーション。宝が夜通し、ひかる を探して走り回るのも同じ状況。とても賢く お話を作る作者のことだから、この類似性はネタの枯渇ではなく、意図的なものであろう。
あの時は力ずくで ひかる を奪おうとした新だったが(それも未遂に終わったが)、今回は高熱を出した ひかるを献身的に看護することに徹している。冷えた身体を温め合うのなら服を脱がしてもいいところだが、今回は それをしない。ただ ひかる の苦しみを自分が引き受ける気持ちで彼女を優しく包むように抱きしめた。
しかも今回の新は、自分が かなりの怪我をしているのに、それを隠して ただ ひたすらに ひかる の体調を考えた。これを愛と言わずして何と言おう。さすがに ひかる も新の自分への想いが本気であると気づき始めていく。

眠り姫状態の ひかる は、新もまた王子様の資格を持っていることを無意識に感じ取っている。

れに いち早く反応するのが宝。だから彼は ひかる が自分から離れないようにキスや、それ以上の行為をして繋ぎとめようとする。彼が ひかる と心も身体も繋がりたいのは間違いなく自然な気持ちだが、その中に少しだけ新よりも先んじたいという気持ちはあるだろう。

三角関係としては『3巻』と ほぼ同じ構図で事件は数多く起こるが退屈も感じる。ただ その三角形の中で1つの線分だけ確実に距離が短くなっている。それが宝と新の異母兄弟の関係性。

生まれながらに容姿や性格が恵まれている宝が唯一 過剰に反応するのが新という存在。だからこそ ひかる から遠ざけようと必死だったが、今回の遭難騒動によって宝は、新が決して自分への復讐だけで ひかる を汚そうとするのではなく、自分と負けないぐらい純真な気持ちで ひかる に接していることを正しく理解する。鈍感ヒロインの ひかる よりも正確に彼の愛を理解しているからこそ、宝は新の怪我を心から心配する。
そこで異母兄弟の間に信頼感が生まれたからこそ、文化祭では新が宝に お節介を焼いている。

次作『うわさの翠くん!!』でも見られる図式だが、本来ライバルであるはずの男性同士の絆が しっかりと描かれている点は この頃の池山田作品の特徴だろう。おそらくオタクの作者が強い影響を受けたガンダムSEEDシリーズやコードギアスのせいなのだろうが、男性同士の特別な関係に「萌えカレ」していらっしゃるのだと思われる。

ただ作者が凄いのは、その関係が成立したからこそのエンディングを用意している点だ。これは決して作者が萌えるための展開ではない。世界で一番好きな女性を、他の男に託す、という とある男性の気持ちの根幹が今回 描かれている。


に自ら純潔を捧げる気だった ひかる だが、宝には刺激が強すぎて未遂に終わる。性の匂いに釣られて新刊を手に取った読者は4ページで失望することになる。ただし次の機会は空手部の合宿に設定され、読者の鼻息は継続して荒いまま。

池山田作品の合宿と言えば風呂シーン。今回も露天風呂が男女混浴という設定でドキドキさせられる。濁り湯という訳でもないのに、他の人から見えない水中などツッコみ所が多いシーンだが、私が一番 気になったのは宝の腰タオル。少女漫画的には伝統的なシーンだが、私が読んだ過去2作品の池山田作品は腰にタオルを巻いたりしてなかった。だが本書では巻いている。男性オンリーだと全開放で、今回は ひかる がいたから露出控えめなのかもしれない。

宝は2度続けて ひかる の前で興奮し過ぎて倒れるが、そんな宝の姿も ひかる にとっては好ましい。一気に距離をつめているようで、一歩一歩お互いを理解し合う2人が描かれている。
それにしても合宿で2人きりの部屋で男女が同衾するのは宝の特権なのだろうか。宝は無自覚に優遇されている部分が多そうだなぁ。新は そういう点が気に入らないのだろう。


かる は まだ新の好意を本気にしてない。新には前科があるとはいえ不憫に思う。
合宿中も新と言い争いになった ひかる は、ペナルティとして2人(と旅館の人で)で買い出しを担当させられる。前夜の宝との同衾の方が よっぽど部内の規律としては問題だと思うが。

買い物は山道を通るが、少女漫画の山道と言えば遭難するためにある。今回は ひかる が宝から贈られた携帯電話を落としたことで、彼女と それを追った新が遭難する。遭難を自覚した ひかる が性暴力者である新との距離を取ろうとした際、崖から転落。それを守ろうと新は怪我をするが隠し通す。

お約束通り運よく見つかる山小屋に避難し、降ってきた雨から身を守る。だが雨に打たれたため ひかる は高熱を出し倒れる。新は2人の体温で互いを温めることを提案するが、それでも ひかる は新に近づきたくない。そんな彼女に対し新は、ひかる の身体が最優先だと訴える。
いよいよ倒れた ひかる を新は抱きしめ温める。朦朧とした意識の中、ひかる は この優しい感触は宝だと勘違いする。これは『1巻』1話ラストの、眠ったひかる に新がしたキスが、ひかる の夢の中では優しい「王子様」からのキスだと勘違いした時に似ている。先入観のフィルターを外すと新の本来の優しさを感じるのかもしれない


が明けて、帰り道を探す際、ひかる は新が足を引きずっていることに初めて気がつく。かなりの怪我をしている新が、それでも ひかる の体調を優先してくれたことを知る。

2人に和解の空気が流れる中、現れるのは宝。これは『3巻』の新のマンションでの朝チュン風景と似ている。ひかる目線では宝という本物の王子が迎えに来てくれた場面だが、新目線で考えれば自分の恋路を邪魔するのは いつも宝に思えるだろう。

ただ新の ひかる への真剣な気持ちを一番 理解しているのは宝である。そして2人は ひかる を この世界で一番大切に想っているという共通点を持つ。宝は新の怪我を知り、彼を背負って帰る際、ひかる の名前を出して新の強情をコントロールした。恋のライバルではあるが、この2人の異母兄弟は相手の長所を少しずつ理解し始めている。


3年生が引退し、2年生の宝が空手部の部長になる。この間に2か月が経過し、新の怪我も回復した。この時間経過は弱っている新の描写を割愛するためかもしれない。

新に守られた記憶が ひかる の彼への認識を更新し、警戒心が弱まる。その油断から宝への配慮も減り、彼の前でも新の話ばかりをしてしまう。そんな ひかる の口を塞ごうと宝はキスをして黙らせる。ここでは宝が本音を言わない分、俺様ヒーローみたいな行動で感情を表現している。2人の交際は、互いに格好つけている面もあり、それが微妙な距離感も生み出してしまう。

そんな2人の距離感を縮めるのは、なんと新。悪魔なキューピッドとして、宝を面倒くさい理性から解放し、ひかる のために行動させる。この新の行動は、合宿の際、負ぶってもらった借りを返すためでもあった。そして その結果、ひかる の笑顔が見れたので新も満足する。当て馬らしい損な役回りである。


3人の関係が安定してきた頃に登場するのが、転入生の小早川 亜美(こばやかわ あみ)。宝の幼なじみで ひかる と同じ学年に転入してくる美女である。

亜美は先制パンチとして ひかる に対して攻撃的な発言を浴びせる。亜美は宝の発言をでっち上げ、ひかる に精神的ダメージを与える。宝が自分の悪口を言っていると洗脳された単純な ひかる は宝との接触の機会から逃亡する。そして不器用な宝は ひかる との距離の縮め方をキスしか知らない。ひかる もそれで洗脳が解け、きちんと宝に向き合い、やがて亜美の発言が全くの嘘だと言うことを理解する。

こうして2人は、クリスマスの日にホテルに宿泊する約束を交わす。このクリスマスの夜に宝は ひかる と繋がりたい、愛し合いたいとハッキリと宣言。相変わらず性の匂いを巻末に漂わすが、今回ばかりは ここ2巻 横行していた「するする詐欺」では ないだろう。

亜美は自分の作戦が不発に終わったことを知り、嫉妬の炎を燃やす。新の立ち位置が邪魔者から協力者になったと思ったら、邪魔者の椅子に亜美が座ることになった。ベタな展開だが目の離せない展開なのは間違いない。