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少女漫画と小説の感想ブログです

禁断の恋愛に必要なのは、親世代の性の乱れ と 親世代の口封じ。純愛×ジェノサイド。

True Love(7) (フラワーコミックス)
杉山 美和子(すぎやま みわこ)
True Love
第07巻評価:★★★(6点)
 総合評価:★★★☆(7点)
 

兄妹でありながら惹かれ合う愛衣と弓弦。自分たちの関係が、大きな悲劇を生んだことに苦しみ、悩みぬいた果てに、ふたりは別れを選ぶ。時はながれ、愛衣は高校3年生に。自分の進路を思い描けないでいる愛衣に、母がすすめた道は・・・。愛衣と弓弦の生きる道は、もう決して交わることはないの・・・!? 衝撃の結末から、その後のふたりを描いた番外編2作も収録。純粋すぎる禁断の恋、感動の最終巻!!

簡潔完結感想文

  • かつての同級生たちは、兄妹たちの事情・本音を引き出し、伝書鳩として拡散する。
  • 禁断の恋愛を偽装するために多くの人が この世を去る。死者の多さが悲劇性を演出?
  • 兄と一緒の学校に通う目標で成績は向上するが、母の母校に通う目標では成績は停滞。

実を知る者は消される運命となる、超絶サスペンス展開、の 最終7巻。

色々とツッコミ所の多い最終巻でしたが、『1巻』の感想文でも書いた通り、作者が描きたい内容がギュッと詰まっていることが私の評価になっている。作品を継続させるなら、たった3か月余りの交際中の描写を詳細に描いたり、裏切られたナナヨの復讐を描いたりすることも出来ただろうに、作者はそれをせず、必要最低限の描写で、作品内のスピード感と緊迫感を優先したように思う。その お陰で兄妹間の恋愛という眉を顰める内容も、この恋の結末や次の展開が気になって、気づけば作品に没入していた。

いきなりネタバレになるが、結局は血の繋がりの無い2人。これは このジャンルでは よく見られる結末だ。けれど本書で大事なのは、2人が認識としては兄妹のまま性行為にまで至ったということだと思う。どこまでもヒロインの純真を守る少女漫画において、これは本当に勇気のいる描写だと思う。血縁関係のない結末が用意されているのなら、ハッピーエンドの後に身体を重ねれば良い。なのに本書は その順番を変えている。
彼らは自分の意志で兄妹のまま愛しあった。このことから例え2人は本当に血の繋がった兄妹であっても、その苦渋の道を進み続けたのではないだろうか。もしかしたら数十年が経過して、彼らの親族が皆 旅立った後、2人は もう一度 恋をしたのではないか、と考える。そんな悲痛な想いと悲壮な決意を彼らからは感じる。それは『7巻』で登場する一組の許されないカップルと とても似た感情であろう。


品、というか兄妹間の恋愛という禁断の設定では、こういう方向に持って行かざるを得ないよね、というジャンルの限界が見え隠れした。特に主人公たちを苦しめるために関係者の多くが この世を去っているという状況は、主役たちがハッピーエンドに終わっても後味の悪さを残す。

中でも主人公の両親の行動には不可解な点が多く、主役のために犠牲になり、主役のために不幸になっている気がしてならない。今回は両親の行動に補助線を引いて、彼らの言動を理解に努めてみようと思う。

本書では特にヒロイン・愛衣(あい)の父親の他界は、完全なる口封じである。主人公たちの苦しい恋愛を救済しかねない、全ての真実を知る父親は、彼らの苦難の連続=作品の継続のためには排除すべき対象だから、作者という巨大な意思によって抹殺された。

父親が妻である母親に真実を告げないまま。結婚生活をスタートさせ、世界で一番 大事な女性であるはずの妻と離婚の危機に際しても、口を割らなかったのは とても不自然なことに思えるが、もしかしたらジャーナリストっぽい職業の父親は、作品に巣くう巨大な闇の組織(またの名を ご都合主義)に気づいていたのかもしれない…。ヒーロー・弓弦(ゆずる)の本当の両親など、真実を知る者から抹殺されている状況から見て、妻に真実を告げることは彼女の死を意味しており、だからこそ妻にも真実を秘匿にしていたのではないか。そして父は、自分の死の直前に一通の手紙を残す。それが弓弦の苦しみを解放することになるが、それと引き換えに自分は死ぬ。巨大な闇の組織の手が間近に迫っていることを直感し、彼は手紙を まどろっこしい手段で残した。これは弓弦が悩む時間が少しでも長くなるための作品の都合であろう。その意味では、母親は真実を知らなかったからこそ存命のままエンディングを迎えられたと言える。父の行動は正しかった。

そんな妄想は さておき、関係者の多くが抹殺されるのは このジャンルの宿命と言えよう。同じ小学館なら和泉かねよし さん『そんなんじゃねえよ』が似たような設定だった。事実を知る者(特に男性)は ことごとく この世を去っており、この作品でも どんな血縁関係でも子供たちを育て上げた母親だけが作品内を生きのびていた。以前も同じジャンルの感想文で書いたが、複雑な血縁関係のために必要なのは、親世代の乱れた性と真実を知る者の少なさなのだろう。子供世代が苦しめば親世代の生死など些末な問題なのだ…。


衣たち兄妹はともかく、母親に関しては離婚するほど悩むのなら、真実を知る手段を講じられたのではないか、と思ってしまう。戸籍の問題がどうなっているのかとか、血液型やDNA鑑定から親子関係を証明する手段はあるだろう。母は名門大学出身のはずなのだが、ここも作品の都合上、その知性が発揮されることはない。

兄妹間の恋愛に対する母親の過剰反応や狂気に関しては、同じく小学館青木琴美さん『僕は妹に恋をする』の母親と似ている部分があると思った。2つの作品のネタバレになるが、2人の母親に共通しているのは、自分の2人の子供が、異母または異父兄妹であるという疑いを持っていることだろう。

本書の母親に関して言えば、夫と不倫相手の子=弓弦、夫と自分の子=愛衣という図式が頭の中で固定されてしまい、子供世代が愛しあっている現実が、不倫相手(弓弦)が夫(愛衣)の遺伝子を求めているように感じられてしまったのではないか。かつて子供たちが小さい頃に離婚の原因となったのは、かつての夫の不義。それは夫のついた嘘だったのだが、真実を知らない母親にとっては事実として認定され、いつまでの夫を信じきれない一因となった。

母が娘に「普通」の幸せを与えようと必死なのは分かるが、これだけ束縛したら娘たちも委縮するって…。

こうなると分からないのが、なぜ彼らは復縁したのか、ということ。離婚の原因である不義の子の真実も知らないまま、なぜ母は同じ過ちを繰り返すのかが理解できない。これもまた子供世代のための ご都合主義であろう。子供たちの切なさの描写は素晴らしいが、親世代の気持ちの描写には明らかに不足がある。

それでも復縁したと言うことは、母には夫の不義に対して一定の許容が出来たのだろう。しかし弓弦と愛衣の関係を知ることで、母の心に再び不倫相手の影が出現してしまう。不倫相手は架空の存在だが、見えないからこそ、相手の影に怯える。次世代でも愛しあおうとする夫と その不倫相手を拒絶したいという気持ちが、愛衣に対する過剰な束縛に繋がったのだろう。

母親が愛衣を守ることは、自分の女としてのプライドや妻という立場の尊厳を守る戦いでもあったのだと思う。この後、愛衣を自分の思い通りのレールを歩かせようとするのも、母親が自己肯定をするために必要だったのかもしれない。

弓弦の出生の秘密を知ることで、母親は自分の妄執から解放されて、本心から娘のことを祝福できるようになった。そして「番外編2」で弓弦が語るように、不義の子である弓弦には嫌な態度を一切取らず、実子である愛衣と分け隔てない愛情を注いでくれたことは素晴らしい。もちろん間接的にストレスになって、その不満が夫に向けられたのかもしれないが。

そう考えると愛衣の母親の役割は、子供世代におけるナナヨに似ている気がする。母とナナヨは、例え相手(夫・弓弦)に裏切られても、その血縁者(弓弦・愛衣)に復讐することはしなかった。自分が被害者だと思い込み、復讐しイジメ抜くことをしなかった点が彼らの感情が知性や常識によって上手く抑制されているように思う点である。

また学校関係者で言うと修二(しゅうじ)は愛衣の父親に よく似た立場であることが分かる。2人の男性は、自分の身近な人たちが兄妹間で愛しあっていても、彼らのそばを離れなかった。そして彼らの困難の際には手を差し伸べ、自分の出来ることを尽力している。真実を知っても離れない人たちがいることが、どれだけ弓弦の本当の両親、そして弓弦にとって ありがたかったことか。その後の修二は法律と優しさを使って人々を救うような人になるのだろう。

愛衣たちの恋はドラマチックな恋愛であったが、絶対的な悪人がいないのは本書の特徴であろう。そのことが 一度は離れ離れになった高校時代の仲間たちを最後に再集結させている。父親の件だけは残念だが、総じて どの人にも感情移入できる作りになっており、読後感も悪くない。何より、冒頭の通り、作者の構想を描き切ったという充実感に溢れている。画力と構成が見事に相乗効果を生み出した作品ではないだろうか。


衣の お見合い情報を掴んだ修二は、結果的に その情報を拡散させる。
1人目は当然、弓弦。だが弓弦は、修二が期待した行動を取らない。愛衣が周囲から祝福される結婚をするなら、それでいいと思っている。それは自分たちのせいで家庭が壊れ、そして愛衣が自由を奪われた事実があるから。もう自分は その時に一度 愛衣の手を放してしまっているという意識が弓弦には ある。
そして修二が情報を伝える もう1人の相手はナナヨ。修二が参加した合コンに偶然ナナヨも参加していて、彼らは あの兄妹の話をする事になる。

その情報を知ったナナヨは弓弦とは違い即座に動く。愛衣の住む長野県に向かい、1年半ぶりに愛衣に会う。ナナヨは語学留学を前に愛衣の顔を見に来たという(これでナナヨが高校3年生の夏に合コンに参加する理由は分かったが、遠距離恋愛前提の出会いを求めたのだろうか?)。

ナナヨは、嘘をついていた愛衣を無視し続けることで距離を取っていた1年半前の自分の感情を語りだす。そして彼女は この1年半で、愛衣が自分に真実を伝えられる訳がなかった、と愛衣側の事情も考えられるようになっていた。

ナナヨが追放されないのは被害者で、直接的な害意を愛衣に向けなかったから。シン・ヒロインである。

だから愛衣が お見合いをするなら、幸せになってほしいと本心で思っている。しかし愛衣の表情は伏し目がちなことから、ナナヨは その見合いが愛衣の心底 望むものでは ないことを初めて知る。

だが悲壮な愛衣の決心に触れ、ナナヨは自分の言葉を呑み込む。どんな道でも前に進もうとする人を止める権利はない。その代わりに、留学先が弓弦と同じ大学であることを告げ、伝言を ことづかる。

こうして愛衣は お見合いをする。母は さすがに自分の手で愛衣の人生を決定していることに詫びるが、愛衣は全てを前向きに考える。まぁ この母親も『6巻』の感想文で書いた通り、時折 謝るが、結局、自分の進ませたい方向に愛衣を誘導しているし。


ナヨはアメリカに旅立ち、弓弦と再会する。
当初は まだ弓弦に未練があるような振りをしたナナヨだが、弓弦から「好きじゃない女と つきあえない」という彼の本音を聞き出したところで、「愛衣は今 好きでもない男と結婚しようとしてる」と彼に切り返す。

そして愛衣が自分のために生きるのではなく、母親のため、周囲のため生きていることを教える。その愛衣を救えるのは弓弦だけ。ここまで愛衣の人生を歪めてしまうことはナナヨの望んだ結末ではない。ナナヨはそこを悔いていたが、そのナナヨの悩みを弓弦は自分の罪として受け入れる。


れでも自分が動けないことを痛感していた弓弦だが研究室の教授から ある話を聞かされる。

それは教授の かつての教え子だった日本人夫婦の話。そして その人物は弓弦に似ていたことを思い出す。教授は、弓弦が父親の遺品として持っていた父のアメリカ留学時の写真の中に、その日本人を見つけ、それが弓弦の父親だという。だが教授が指摘したのは、弓弦の父親ではなく、その隣で写っている日本人だった。

それが弓弦の両親だと確信する教授は、研究室の中から1枚の写真を取り出す。それは日本人夫婦と赤ちゃん、そして弓弦の父親が写った写真だった。

否定する弓弦に、弓弦の父親から教授へと手渡されていた手紙が差し出される。それは教授が「いつか息子だという人物が もしも ここに来たら渡してほしい」と頼まれていたものだった。その内容を読んだ弓弦は日本へ向かうため空港へと駆け出す…。

手紙には、弓弦が自分たち夫婦の子供ではないことが綴られていたのだ!


一方、愛衣は その頃『5巻』で弓弦と来た軽井沢の教会で、結婚式の下見に来ていた。婚約者である加藤(かとう)教授が仕事のため、当日は愛衣1人での参加になる。

ドレスを試着し、教会の中で立った愛衣は、これからは兄の記憶を反芻し、幸福に浸ることも出来ないことを再確認する。いよいよ記憶を封印する時が目前に迫り、愛衣は「お兄ちゃん」と叫びながら号泣する。

そこへ現れたのはヒーロー・弓弦(どうして ここに来れたのかの説明は一切ない。泣いているヒロインの前に瞬時に現れるのはヒーローの特殊能力である)。

弓弦は1人の男として愛衣を迎えに来た。愛衣に自分のそばにいるように命じる弓弦だったが、愛衣は それを受け入れられない。なぜなら愛衣の中では まだ兄妹だから。しかし弓弦から血の繋がりがないことを教えられる。こうして2人の関係における最大の問題が消失した。


が手紙をしたためたのは、弓弦が愛衣を ひとりの女性として愛していることを感じ取っていたから。そして弓弦の本当の両親のことを語る。彼ら夫婦は弓弦が生まれた直後に事故で他界していること、そして今の父親が弓弦を引き取ったのは、彼らの子を引き取る者が誰もいなかったからだった。

なぜなら彼らは兄妹で恋をしていたから。

その兄妹の間に生まれたのが弓弦なのだ。その禁忌の子供を親族たちは引き取らなかった。それにしても弓弦の両親も、その関係に加えて、避妊に対する認識も甘く、若くして子供をなすという とんでもない人たちである。優秀なのかもしれないが、人生設計は甘い。

そして父親は日本に帰国後、当時の交際相手である愛衣の母親に、弓弦が自分の不義がなした子だと説明する。これは弓弦が日本で生きていくために必要な嘘だったのだろう(戸籍はどうなっているのか。本書は そこまで考えていないだろう…)。

これは弓弦を守るためでもあった。兄妹間の子ということを知られないように父親は慎重に慎重を重ねた。

母は父親の浮気を許し、弓弦について何も聞かず、恋人と弓弦をいっぺんに面倒を見ることにした。これが彼らの学生結婚の真実なのだろう。この時2人は まだ20歳そこそこなのに、子供を育てることを決意している。若いからこそ出来る飛躍なのだろうが、金銭面など現実的な話は一切ない。この時、父親は働き始めているのだろうか。

だが結局、この時の(架空の)不義が遠因となって、その後、愛衣を授かった後、6年余りで彼らの結婚生活は破綻する。離婚することになっても、父は真実を告げなかった。そこまで弓弦や、弓弦の両親の名誉を守りたかったのだろうか。でも自分の浮気を許し、その子も育てようとするぐらい懐の深い大事な人にも嘘をつき続ける必要性が感じられない。

自分たち夫婦の秘密にすると約束して、弓弦の出生に関して話すべきだった。そうしなかったのは10数年後に真実を知る人の数を制限するためでしかない。親世代の行動には納得できない部分が多すぎる。


には秘密を通した父親だが、弓弦が不必要な苦しみを、自分の両親たちと同じ苦しみの中にいるのなら救いたいという気持ちで父は手紙を残した。まさか それが遺言になろうとは彼も思っていなかったと思うが。

父は弓弦が東京で再始動した家庭に寄り付かない理由に、妹である愛衣への恋愛感情があることを知っていた。だから愛衣と本当に人生を共にするのなら、家に帰ってきて、俺に一発殴られろ、と書く。それは父親が娘の結婚相手として弓弦を許すということでもあった。そんな広い心を持っているなら、弓弦に出生の秘密や、兄妹間の恋愛が自由であることを さっさと教えてあげなさいと思わざるを得ない。父の秘密主義は謎すぎる。


からの最後のメッセージによって2人は禁断の恋から純愛に変化する。

こうして恋人として再会できた弓弦は愛衣をアメリカに誘う。もはや2人には何の障害もない(加藤教授が不憫だが)。だから弓弦の当初の構想の通り、2人だけで暮らすことも可能なのだ。愛衣は その場で快諾はしないが、星空の下、キスをする2人の頭上に流れ星が瞬く。そこに込めた2人の願いは同じで、今度こそ2人の願い事は絶対に叶うはずだ…。(それにしても目を閉じてキスをしてたのに察知するとは…)


「番外編1」…
兄妹ではなくなった2人が初めて迎えるクリスマス。受験生ながら愛衣は単身、アメリカに飛ぶ。だが、到着早々、弓弦は大学の研究室に呼ばれ、そして愛衣が返却した弓弦からの贈り物のヘアピンは他の女性の手にあるという。そこで弓弦の心変わりを勘違いした愛衣だったが…。

愛衣は その「女性」が小さな女の子であることを知らなかったから嫉妬をしていた。こうして約2年ぶりに、愛の結晶であるヘアピンは愛衣の手に戻ってきた。そして このクリスマスでは これまで恋人である証拠すら1つも残せなかった関係から一転し、愛衣と弓弦はペアリング(ブランド品)をつける。

その翌日、愛衣は弓弦の本当の両親の墓前に挨拶する。両親への挨拶は結婚へのカウントダウン。そして次の番外編は結婚式の場面から始まるのだが…⁉

「番外編2」…
「番外編1」から2年、20歳になった愛衣の物語は、ナナヨが外国人御曹司と結婚する場面から始まる。てっきりナナヨは、犬猿の仲の修二と交際するかと思ったが、意外な相手に落ちついた。

愛衣は結局、2回 母の母校を受験したが失敗してパンの専門学校に通っているという。そして弓弦とは日本 ⇔ アメリカの遠距離恋愛が続いている。弓弦は早くも大学を卒業しているが、次の大きな仕事を抱え10年は日本に戻れないという。愛衣をアメリカに連れていくのは、母を孤独にしてしまうから弓弦は二の足を踏んでいる。

一方、愛衣は弓弦が今、仕事や勉強が楽しいということを察知している。これはきっと、弓弦が自分のために自分の能力を発揮しているからだろう。これまでは愛衣の隣に立てる人間になるために、そしてアメリカに渡ったばかりの頃は、自分の苦しみから目を背けるように自分を研究に没頭させ、酷使することで精神の安定を保っていた。だが今は弓弦は自己実現のために仕事をし、それが充実感へと繋がっているのだろう。

愛衣も弓弦も それぞれ飲酒することで本音を友人たち(ナナヨ・修二)にぶつけるが、それを他の人には言えない。だから愛衣は、弓弦から日本に帰らないと告げられても、愛衣は日本での生活の継続をすると返答する。お互い、自分の居るべき場所で生活し、遠距離恋愛をするべき、というのが愛衣の考え。

だが そこに母親から連絡が入り、呼び出される。母は、ナナヨ・修二から 子供たち2人が本当は結婚したいことを聞かされていた。その話を聞いた母は怒る。大事な話を他人から聞かされるし、本人たちが親や祖父母に気を遣うしで、腹立たしいのだ。今度こそ母は、2人の自由を束縛する存在にはなりたくない。

ただし その条件はTOEIC700点以上。きっと それは母がアメリカでの生活に愛衣が困らないための語学力を、という配慮だろう。愛衣は参考書を買いに本屋に急ぐ。

残された弓弦は母親に、養母と血の繋がらない息子という特殊な親子関係に感謝を述べる。真実を知るまでは母親にとって、弓弦は旦那がこさえた不義の子。なのに母は 惜しみのない愛情を注いでくれた。血の繋がりは無くても間違いなく親子で幸福だったことに弓弦は感謝する。弓弦は息子であり、婿である。2人が結婚しても母は やっぱり2人の母親のままだろう。

それにしても愛衣はパンの専門学校を卒業したのだろうか。なんとなく愛衣が中途半端なのが気になる。

アメリカの生活もバイトにしか見えないし。ナナヨも玉の輿に乗っているから、女性側がエリート男性に扶養されるばかりで経済的に自立していないのが気になるところ。愛衣の母親の方が自立していた。

ちなみに加藤教授は出版した本がベストセラーになるという救済策が取られている。修二は希望通り法曹関係の道に進むようで、ナナヨは妊娠しているという その後も描かれている。

愛衣たちも結婚したようで、エリートの旦那とアメリカ生活という少女漫画の夢を体現している。ちなみに結婚に際しては戸籍はどうなっているのだろうか。最初から別だったら問題ないが、父親が血縁を偽装して戸籍作ってたりしたら大問題である。まぁ ご都合主義ということで…。