《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

少女漫画においてタバコは、くわえさせておけば一目で不良と分かる便利なアイテム。

GET LOVE!!(2) (フラワーコミックス)
池山田 剛(いけやまだ ごう)
GET LOVE!! ~フィールドの王子さま~
第02巻評価:★★★(6点)
 総合評価:★★★(6点)
 

相楽は1年生で初のスタメンに。美樹は相楽をはげまそうと「シュート決めた数だけキスしてあげる」なんて約束を…?カッコかわいい相楽くんとサッカー部の先輩達が大活躍する超人気シリーズ☆待望の第2巻!!●収録作品/GETLOVE!!~フィールドの王子さま~GAME.1~6

簡潔完結感想文

  • 『2巻』から8話の短期連載分。前の話が次に繋がる連載を意識した構成に。
  • サッカーしない回やワンシチュエーションコメディなど創意工夫が見られる。
  • サッカー場も校内も大人がいない無法地帯。ヒロインのマドンナぶりに辟易。

泉社ばりの逆ハーレム状態が目につき出す 2巻。

作者のデビュー作である読切短編から始まった本書。
この『2巻』から全8回の短期連載になり、
それも しっかり成功させることで長期連載への道が拓かれた。

しっかり読むと『1巻』とは違い、連載を意識した構成になっていることに気づく。
1つ目の話の結果が次の話の端緒になるという、連鎖的に物事が続いていく。

物語のバリエーションも豊かにしようという工夫が見られて、
様々な角度から恋人となった美樹(みき)と相楽(さがら)の姿を描いている。
全8回の連載を安全策で乗り切るのではなく、
自分は こういう話も描けるんだ、という才能を示すことに成功していることに感心する。


だし、さすが小中学生をメインターゲットにしている雑誌と作品だけあって、
なんだかな、と嫌になる部分も多い。

その中でも特に気になるのがヒロインの立ち位置。
ヒロインが、サッカー部のマネージャーになったことで、彼女は部で ただ1人の女性になる。
こうして恋人の相楽だけじゃなく、全部員の男性が彼女をチヤホヤしてくれる。

少女漫画読者にとって異性から もてはやされるのは悪い気分ではないだろうが、
そりゃ、学校の女子生徒も やっかみたくなるわ、と共感してしまうほど、ヒロイン中心主義。
その役割は「マドンナ」と言った方が良いかもしれない。

ギャグやエロシーンもそうだが、女性の立ち位置も古臭い印象を受ける。
『1巻』の感想でも書いたが、2004年の連載時よりも もっと前、
作者が子供の頃に読んだ少年誌の雰囲気が強く反映されていると思われる。

また、ヒロインを世界の中心に据えるためか、
このサッカー部には顧問や監督がいないのが気になる。
常識的な「大人」の存在は、物語にドラマが生まれないのも分かるが、
いるべきはずの人を いないように描く不自然さが気になる。

これによって相楽をはじめとしたサッカー部員の男性たちが、
美樹を守るために独断で行動できるようになっている。
そのくせ、今回サッカー部が「停部」になったり、大人の判断が下されるからチグハグなのだが。


人がいないという問題にも関連するが、
サッカーを題材としながらサッカーのルールを無視しているような描写が気になる。

今回、卑劣なプレーを許さない相手チームと険悪なムードになった時に、
マネージャーである美樹が仲裁にフィールドに入っていくなんて言語道断だろう。
しかも相手チームの1人が その美樹の胸を揉む。
その行為に対して、試合を見ている人間の反応は一切ない。
どのチームにも監督も観客もおらず、22人の男性と1人のヒロインしか世界にはいない状態。

本書の男性は、自校のサッカー部員以外は全員ケダモノ。暴力と性暴力でヒロインを襲う。

こういう問題行動があってこそ、相楽がヒーローになるんだろうけど、
荒唐無稽すぎて、こういう部分は楽しめない。

サッカーを表層的に楽しめればいいというのは、サッカーを題材にした別作品『うわさの翠くん!!』でも感じたところ。
愛読する『キャプテン翼』の真似事が出来れば作者は満たされ、
競技をするキャラに萌えているだけなのだろう。


1話目の騒動を受け、2話目ではサッカー部は停部となっている。
これも連載化ならではの連続性である。
この停部に対して、美樹や相楽の行動に部員からは何も文句が出ないのが、
本書における美樹のマドンナっぷりを表していると言える。

こういう愛される美樹が嫌がらせにあうのが次の話。
そんな騒動の中で開催される体育祭で、美樹を呼び出したのは上級生の女性とたちだった。

彼女たちはサッカー部の先輩男性のファンで、美樹が交際していると勘違いした。
上記の通り、美樹の愛されっぷりは目に余るので、この女生徒たちの行動には共感する部分もあったり…。

でも彼女たちの理不尽な暴力を前に美樹も黙っていないところが良い。
勿論、この後、相楽が助けに来てくれるのだが、負けん気の強さや、
理不尽な嫌がらせに対して当然 持つべき怒りを表明しているところが良い。

そして美樹を守るために、
自分との交際を証明するためにも、相楽は嫌がっていたカップルレースに参加する。
美樹のために動く時の相楽は無敵です。
あり得ない描写だけど、それもまた面白い。


育祭のカップルレースの商品んでテーマパークの招待券を貰ったことから初デート回となる。
停部中と体育祭という前の2話を出来事を踏まえた展開で、本当に巧い。

エロいギャグシーンも作者は楽しんでやっているんだろうなぁ。
センスがオヤジ的なので、お色気シーンといった感じで過激さや下品の一歩手前で踏みとどまっている。

この回は、遊園地デートと水着回を同時に済ませる大盤振る舞い。
美樹が空回って、相楽がフォロー&リードするという基本形が見られる。


うした期間を経て、サッカー部の活動は再開されたが、
次の話はサッカーをせず、部室でだけのワンシチュエーションコメディというのも面白い。

事の発端は、学校内で犬を拾い、サッカー部で犬を飼うことになったこと。
部室で犬を飼うなど学校側が許すなどとは思えないし、
エサ代や世話など どうなっているか、など疑問も多いが、細かいことは気にしてはいけない。

この犬がロッカーを荒らして、相楽のユニフォームが床に落ちていたことで、美樹は変態行為に走る。
相楽のユニフォームを自分で着てみるという欲望を満たしている最中に、
本人が部室に来てしまいロッカーに隠れる美樹。

それがバレ、恥ずかしさに耐える美樹だが、相楽は優しかった。

ただし美樹が事情を説明している際の、
「言えば言うほどいいわけくさい ウソつき変態だと思われてる!!」という言葉は ちょっと分からない。
事実、ユニフォーム着てるので変態は確定してるし。
これ以上 分かりやすい説明もないだろうに。


いては美樹の同窓会と、相楽が先輩から強制的に参加させられた合コンの開催場所がバッティングしたことで起こる騒動。
相楽が合コン相手の女性とキスしているところを、美樹は目撃してしまう。

これは1巻に1回の割合である、すれ違いや喧嘩の回ですね。
『1巻』の時もだったが、相楽は先輩によって美樹と喧嘩してしまう。

この回で またまた飲酒シーン。
酒は、美樹の記憶喪失の道具なので、
大胆になっても、愛を囁いても、それが全てリセットされるし、
それでオチも作りやすいから便利なんでしょうね。


うして地区大会の季節が巡ってくる。
初戦の相手は暴力高校で有名な学校。
悪い奴は大体 政治家の息子、タバコを吸っているのが目印。

美樹が不良に巻き込まれる展開は『1巻』の時と同じような感じ。
今回は、この後サッカーで決着をつけるからか、相楽もサッカーボールではなく、直接手で応戦。

作者はこういうシーンが描きたいのだろう、乱闘シーンとシュートシーンは活き活きしてる。

あまり喧嘩が強くなさそうな相楽が互角なのは、美樹を守る専守防衛だからか。
体育祭の激走といい、美樹のためならポテンシャルを200%発揮できるのだろう。
(寿命縮めそうだけど)

だが どこまでも卑怯な相手は、帰ると見せかけて不意打ち。
そのピンチを相楽から守ったのは美樹。
しかし骨にひびが入るほどの怪我を負ってしまう。

こうしてヒロインを傷つけられた怒りに燃えるサッカー部員たち。
この騒動の決着は、サッカーでつけられることになる。以下 次巻!!