《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

アイドルも少女漫画の男性キャラも多人数の方が、支えてくれるファンの裾野が広がるんでっせ。

GET LOVE!!(3) (フラワーコミックス)
池山田 剛(いけやまだ ごう)
GET LOVE!! ~フィールドの王子さま~
第03巻評価:★★★(6点)
 総合評価:★★★(6点)
 

青南対星条の因縁試合が始まった。星条のエース志摩にケガをさせられた美樹のためにも、この試合は負けるわけにはいかない!闘志に燃える相楽だが、志摩は再び汚い手を!?カッコかわいい相楽くんが大活躍する超人気シリーズ☆感動の1stStageクライマックスと相楽弟も登場するラブラブ2ndStage収録。●収録作品/GETLOVE!!~フィールドの王子さま~GAME.7~11

簡潔完結感想文

  • マドンナに怪我を負わせた相手に試合での勝利を約束するフィールドの王子さまたち。
  • 長期連載開始。相楽に価値があると知った女生徒たちが突然 追っかけファン化して…。
  • 部員たちがマネージャーに望むのは目の保養、セクハラの対象⁉ 全員、発想がオヤジ。

ギュラーメンバー11人に それぞれファンが付けば儲かりまっせ、の 3巻。

この『3巻』から長期連載がスタートする。
4回の読切短編と、全8回の短期連載という試用期間を経て、
いよいよ「少女コミック」のレギュラーの座を勝ち取った作品。
デビュー作の作品が後に長編化され、人気作品になっていった。
これは1年生ながらレギュラーになったヒーロー・相楽(さがら)と似ている。

相楽は恋人・美樹(みき)のためなら不思議な力を発揮できるが、
作者は毎回、漫画のために並々ならぬ努力をしていると思われる。

長期連載に入ってからは、これまでは紙面の関係で出来なかったレギュラーメンバーを全員紹介している。
一部は連載前から温めていた人物であるらしい。
作者の豊かな想像力が物語を内包していることの証明だろう。

商売的には、11人以上の部員を紹介することで、それぞれに固定のファンがつくことになり、
そのファンたちは熱心に作品を購入し 読み込み、布教し 更に人気を拡大させたことだろう。
長期連載の手始めに読者の好きそうな個性の強い新キャラを出すという戦略が功を奏している。

こうして乙女ゲームのようにイケメンキャラが乱立することになる。
これが作家の本能的なものなのか、完璧な戦略なのかは分からないが、
売れるべくして売れる作品と言えるだろう。

美樹と相楽は1話目から交際しており、その関係性も強固なものなのに、
それでも読者を惹き付け続けるだけの娯楽を提供できていることに感服する。


区大会の初戦で対決する相手の高校の生徒から暴力を振るわれ、腕の骨にヒビが入った美樹。
しかも学校からの正式な抗議は政治家である主犯の親が揉み消してしまう。

それに納得のいかない美樹LOVEの部員たちは殴り込みを計画するが、
「聖母」である美樹の「暴力に暴力でやり返しても 何も解決しない気がして…」という言葉で矛を収める。
彼らはサッカーの試合をリベンジの機会とし、勝利を美樹に捧げるために練習を積む。

血気盛んな男子部員たちの頭を冷やさせるのもマネージャー兼 聖母の役割なんだぞ☆

それにしても犯人の男・志摩(しま)の言い分がダサすぎる。
事件の揉み消しを親に頼んでいないとか、自分がかわいいだけとか幼稚なことを言っている。
しかも自分の犯行、そして親への反抗の動機がなんなのか説明できないくせに、
「オレのバックの権力ってヤツにビビッちまったか?」と親の七光りを利用していて失笑してしまう。

だが試合中に相楽は志摩のラフプレーで立て続けに怪我を負う。
フィールドを降りることを提案する先輩たちに、相楽は引き下がれないと語る。
そうして いつものことながら美樹のためなら不思議なパワーが湧いてくる相楽。
この話の結末は分かり切っているが、それでもしっかり面白いと感じる。

ラストに志摩に対する報復があるのも良い。
このために あの種族は存在したのか…。


1回戦突破後は酒盛り。
今回は審判の姿を描いた1コマはあったが、あとは「大人」はいない。

部室での祝宴を抜け出して、2人きりになる美樹と相楽。
だが先輩たちは黙っておらず、追跡されてしまう。
逃げ込んだ体育倉庫は扉が開かず、朝まで2人で過ごすハメになる。

寒さ対策に2人で肩を寄せ合い、緊張する2人。
色々あった一日だが相楽の隣で眠りに落ちる美樹が見たのは、自分より大きい とある男性とのキスの夢。
それは…。

短期連載の終わり方もきれいですね。
サッカーで勝利して終わるのではなく、
美樹と相楽の2人の話にするために連載を1話を残している構成が素晴らしい。


のような作者の非凡性が支持されて始まる長期連載は再び人物紹介から始まる。

読切短編時から3年生として登場していた先輩方は引退し、新チームの始動から2か月が経過した新年1月から始まる。
これは雑誌掲載時の季節と合わせたのだろう。
新レギュラーメンバーが加入し、ますます画面が賑やかになっている。

この頃、相楽がサッカー部の注目部員として校内新聞に登場したことで、女生徒からの人気が上がる。
アイドル並みに追っかけられ、美樹は面白くない。
そのモヤモヤを相楽自身にぶつけてしまい、2人は険悪になってしまう。
更には教室で女子生徒たちに襲われる相楽を見て、美樹は固まる…。

その後の美樹の行動が良いですね。
すれ違いや喧嘩のフォローを相楽に任せて、愛され女子を演じるのではなく、
美樹自身も守りたい関係を守るために動いているのが良い。

こうして校内の相楽派は大人しくなり、2人の関係は更に公認されていく。
これで今後、美樹の女性ライバルが登場したりすることはなさそうですね。
やっぱり美樹は本書のマドンナで、唯一の女性として大事にされるべきなのだろう。


樹はマネージャーとしてもマッサージを勉強したりと進化中。

次は美樹がサッカー部のマドンナであるという話。
美樹にコスプレをさせることで、部員たちの練習をハッスルさせようとするオヤジな先輩たち。
こういう時の美樹は相楽の名前を出せば唯々諾々と嘆願を聞いてしまうバカに成り果てている。

この事態は相楽が面白くない。
これは前の話(9話)と逆の構図になっていると言える。
相楽が異性に注目されること、
美樹が部員に性的な目で見られること、どちらも耐えられない事象だろう。

そこでコスプレ反対派の相楽と、コスプレ推進派の11人でサッカー勝負をすることに。
再び、美樹を守るために本来以上の力を出す相楽。

作者は動きのあるシーンも しっかり描く技術を持っていることが分かる。
漫画家として色々と研究したんだろうなぁ、と努力の痕跡が見られる。

が同時に、サッカーを通じて作者が描きたいのは、
こういう1人でミラクルを起こす場面なんだろうなと思わせられる展開で眉を顰めてしまう。
1年生部員に束になってかかっても負け(寸前)の結果は、
他の部員に力のなさを痛感させるような出来事だと思うが、そんな描写はない。


ストでも新キャラが登場。
カゼをひいて休むとメールをしたはずの相楽が学校に現れ驚く美樹。
だが相楽の言動はいつもと様子が違う。
熱のせいで頭がおかしくなったのか⁉

熱が出た相楽は、あざとくなって登場。自分の可愛さを理解している男なんてお断りです。

いつもと違う相楽は積極的に美樹に近づき、
遂には保健室のベッドで美樹を押し倒し、コトに及ぼうとする…。

この辺は2000年代の少女コミックの悪しき風習が見え隠れしますが、
ここでは「相楽」では出来ないことをしているという点は評価します。
相楽自身が理性がふっとんだという訳ではないので、真実を知っても物語に遺恨が残らない。
読者にちゃんと緊張と緩和を与える展開が用意されている。

以前から弟がいることや、祖父のことをよく話すこと、父親は背が大きいことなどの情報はあったが、
相楽は母を早くに亡くした男所帯で育ったということも発表される。
母がいないことは兄に女性への誠実さを育み、弟は女好きの軟派になったのか。

相楽は女性の扱いに長けている弟に負けていると思っている節があるが、
美樹にとっては、相楽が相楽らしいことが一番好きなところ。

これからも弟・ヒカリとのライバル関係の話が頻発しても良かった気がするが、
読者人気が高い割には、登場回数が少なかった弟となってしまった。