《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

失恋に沈みゆく私に、泳ぎ方と 進むべき方向を教えてくれた君は灯台なんだ。

パフェちっく! 5 (マーガレットコミックスDIGITAL)
ななじ 眺(ななじ ながむ)
パフェちっく!
第05巻評価:★★★☆(7点)
  総合評価:★★★(6点)
 

失恋のショックから徐々に立ち直ってきた風呼。ある日、泳げない風呼は、壱に水泳を教えてもらうことに。交換条件で、壱のバイトの手伝いに行ったけど、そこで大也に会ってしまい…!?

簡潔完結感想文

  • 部活・補習・水泳・バイト、忙殺で失恋を忘却。フッた男 そばにいるけど☆
  • 失恋の海に溺れないよう泳ぎ方を教えてくれる人。違う男の腕の中で夢を見る。
  • 夏は裸祭り。お風呂場でハプニング、プールで個人レッスン。全裸 VS 半裸。

い続ける苦しさから、想われる喜びに切り替わっていく 5巻。

告白した大也(だいや)に断られ、自分の滂沱の涙を海にして沈むばかりの風呼(ふうこ)。
その風呼が悲しみから回復して自然体に戻っていく様子が描かれるのが『5巻』です。

そして徐々に第三の人物・壱(いち)が風呼と距離を縮めていく。
といっても、まだ壱の好意は明確になっておりません。
かつての風呼のように、コップの水が溢れるまで彼は自分の気持ちを表明したりしないでしょう。

『5巻』で風呼は水泳の練習をしている。
夏休み前には2メートルも泳げなかった彼女だが、
壱が練習を見てくれるようになって『5巻』時点で10メートル泳げるようになった。

風呼の泳力が向上し、泳げる距離が伸びることは、彼女が大也から遠ざかること、
そして導いてくれる壱に近づくことを意味するのだろうか。
一方で忘れるよう努力し、一方で意識に上ってくる。
いよいよ三角関係モノが成立する日も近いだろうか。

私にとって少女漫画は この時期が一番面白いかもしれない。
ヒロインに対して特別扱いをしたり、嫉妬を隠せてなかったり、
自分の恋が上手くいかないことに苛立ったりと、男性のナイーブさが垣間見られる。

こういう人に既視感があるな、と思って考えたら
やまもり三香さん『ひるなかの流星』の馬村くんでした。
この馬村も三角関係に参戦するのが遅く、どちらかというと不器用。
当て馬なのか本命なのか読書中に分からないところも同じ。
壱にも馬村同様、ヒロインの失恋後の活躍を期待したい。

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時にスパルタでも自分に根気強く付き合ってくれる壱センセイ。それは責任感? 恋心?

こから本格的にヒーロー役のバトンタッチが始まるのだろうか。
イトコ同士で同居している壱と大也。
1話から同時に登場した彼らだが、これまでは大也のターン。
そして『5巻』からは壱のターンとなりそうな予感。

これまでは風呼が大也を想っていたが、
これからは壱が風呼を想うという、これまでにない愛されるパターンでもある。
(磯っち(いそっち)という例外はあるものの…)

このバトンタッチを じっくりゆっくり描いているから、風呼の心の動きをしっかり追える。
ここを急ぎ過ぎると、次の男への切り替えが早いと思われて風呼が読者に嫌われる恐れがあった。
風呼の気持ちが揺れ動く際に、連載とページを潤沢に使えたのは作品にとって幸運だっただろう。
作者は この作品まで代表作はないし、決して派手な作品ではないけれど
これまで しっかりとエピソードを重ねてきたのと、
大也への失恋という一つの盛り上がりを先に用意していたことが連載継続の要因か。

これからも面白くなる予感しかしない。


休みを前に風呼の髪型も少し変わって(しまって)、気分が切り替わった。

風呼の夏休みは忙しい。
大也を追って入部したテニス部に、
成績不振で補習があり、そして体育の補習として壱から水泳の個人レッスン、
そして壱の紹介によって お好み焼き屋でのバイトまで始めた。

まずはテニス部。
失恋してもテニス部をやめなかったのは、いつか壱に動機が不純だと馬鹿にされて、
それを見返そうという風呼の意地があったからだと私は推測する。
もし 失恋で部活をやめていたら、風呼は恋愛脳だと読者から反感を買ったでしょうね。
辛い立場でも逃げない、それが読者から愛されるヒロイン像なのです。

そのご褒美としてか、基礎練習だけだった部活で、
これからはテニスウェアの着用とコートでの練習が許可された。
これも風呼の部活継続のモチベーションになりますね。

2つ目の補習は、以前にも描かれていた場面だからか割愛される。


3つ目の水泳の個人レッスンは、
全く泳げない風呼は、水泳の成績も落第する危機を回避するためにある。

体育教師が級長であり水泳経験者の壱を指名し、夏休み中に、風呼は彼から泳ぎを教えてもらうことになった。
水泳の授業が男女混合だったり、男性用水着の形に時代を感じるなぁ。
連載時の2001年って、そんな旧時代的な風景なの、と多少疑問は感じるが、学校の差だと考えよう。

そして4つ目のバイトは壱は水泳のレッスンを引き受ける代わりに、
風呼に自分のバイト先であるお好み焼き屋のバイトを要請したことから始まる。
これは風呼に落ち込む暇を与えない壱の気遣いなのでしょう。
そして好きな子と一緒にバイト、という男子のささやかな夢の実現かもしれない…(笑)

こうして部活に水泳の練習、そしてバイトと充実した夏休みが到来するかと思われたが、
なんと同じバイト先に大也が応募してきてしまう。
3人で同じシフトに入ることは滅多にないが、それでも気まずさは生じる。
部活とバイト、そして補習と夏休みの過ごし方の3/4に大也の姿があるのだ。

しかし これが強制的なリハビリになったのかもしれない。
忙しい上に、逃げようにも逃げられないから、失恋後の大也との関係が再構築されていった。


とはバイトと水泳の練習の2/4が一緒で、
風呼の時間に水泳のレッスンを合わせるため、壱も2人と一緒に登校する。
夏休み中でも変わらない登校風景である(むしろ直近よりも仲良しである)。

壱は水泳の練習の後に、風呼を夏祭りに誘う。
風呼の寂しさを紛らわすという理由はあるものの、ほとんどデートの誘いである。

ただし壱との関係性を変化させることなく維持するための防波堤としてテニス部の先輩・秋桜(あきお)を呼ぶ。
風呼と秋桜とは悩みも悲しみも ぶっちゃけられる良い関係になりましたね。
少女漫画で、先輩後輩で こんなに仲が深まる関係性も珍しいかもしれない。
いじられキャラと いじりキャラで、会話が楽しいので 2人のシーンは楽しい。

だが、2人きりで行くことを念頭に置いていた壱は不機嫌になってしまう。
風呼の前だけでは感情や表情を作らないで、素直にいられる。
壱にとって彼女はそういう存在なのだろう。

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なぜ転んだのにフチを飛び越えて、浴槽の中にダイブするのか。少女漫画だからである。

イトと部活に忙しいのは大也も同じで、彼は入浴中に寝てしまう。
そしてタオルが排水溝に詰まり、浴室を水浸しにし、下の階の風呼の家の天井を水漏れさせる。

原因を確かめようと新保家に上がり込んだ風呼は、浴槽の中に大也が寝ていて驚く。
そして足を滑らせて、同じ浴槽にドボン。
いかにも少女漫画らしい展開です。

大也の服を借りて、着ていた服を乾かす風呼。
失恋後だけどラブハプニングが満載です。

この場面、『4巻』で風呂上がり直後の風呼に壱が出会っているが、
風呼の濡れた髪を大也も見るという同じ種類の事件なのでしょうか
まぁ、大也が濡れた風呼に色気を感じるのではなく、
今回は風呼が大也の服を借りて、その服の大きさに大也の存在を感じているんですが。

帰宅して事情を理解した壱に一通り説教され、
「あんたさぁ ここに来んの やめたら?」と忠告されてしまう。
男所帯にズカズカと上がり込むのは自覚がないと一喝。

壱が感情的になったのは、風呼が大也の服に包まれていたから。
そして誰よりも風呼のことを女性として意識しているからだと思われる。

壱が奮闘している健全な水泳の練習にエロい視点を持ち込むのも申し訳ないが、
露出度的には、壱も裸同然とも言える。
風呼が壱の水着姿に あまり反応しないのは、
彼をそれほど意識していないということになるのだろうか。


かし壱の存在は、風呼の中で少しずつ大きくなっていく。

例えば、大也は風呼の名前を漢字で書けないけど、壱は承知している。
風呼への関心の違いもあるが、
好きになり方も違うのだろうな、と思う。

好きな人のことなら生年月日はもちろん、住所などにも胸がときめく人もいると思うが、
壱は絶対 個人情報もその人の一部だと思う人だろう。

本好きだし活字にすら意味を持たせられる人。
大也は細かいことではなく人間性を見ていると思われる。
こういう違いに、好きの種類の違いを織り込むのも上手いエピソードの重ね方である。