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今回の恋も失恋確定⁉ 9歳年下の自称 婚約者がヒロインの恋の邪魔をする。

パフェちっく! 8 (マーガレットコミックスDIGITAL)
ななじ 眺(ななじ ながむ)
パフェちっく!
第08巻評価:★★★☆(7点)
  総合評価:★★★(6点)
 

ただいま南乃高校は文化祭中。壱がムリヤリ女装させられたり大也がさすらいのギターデュオで人気だったりと、楽しい時間をすごす風呼達。そんな中、風呼は壱を妙に意識してしまい…!?

簡潔完結感想文

  • 髪は女の命だから、女装であってもオレの髪に触っていいのは アイツだけ。
  • 音楽は人の感情を揺さぶる。恋に落ちたり、恋を知った自分に気づいたり。
  • 恋の邪魔者その1。自称・壱の婚約者が登場。新たな三角関係のスタート⁉

が彼を好きなことは火を見るよりも明らか、な 8巻。

『6巻』の感想文で、ヒロインの恋は、時間経過とともに色が変わる手持ち花火のようだと書いた。
そして この『8巻』で壱(いち)と一緒に火を見つめる現時点での風呼(ふうこ)の色が確定した。

夏以降、3回の花火を一緒に見てきて、4回目の今回、
花火は文字だけの登場だが、彼らの目の前には後夜祭のキャンプファイヤーがあった。
ずっと彼の火に照らされている顔を見続けてきた。

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夏以降に火を見つめること4回目。今は同じ気持ちで一つの火を見ている。あとは交際のみ⁉

もしかして壱が日に照らされるのは、彼が月と評されるのと関係しているのか。
確かに太陽の大也(だいや)との思い出が日中なのに対して、
壱との恋愛イベントは日没後が多い。
だから暗闇の中に花火などの火の光が見えるのだし、
壱も自分から光は発さないけれど、火に照らされることで素顔が見える。

そして大也は、日没後のイベントは物陰から見ることしか出来ない。
今は壱の、夜のターンで、太陽である彼は地平線から顔を出せないのだ。

ただし彼の中で、恋の炎は燃え始めている。
太陽と月が同時に出れば、月は顔を真っ白にして空に浮かぶだけ、かもしれない。
序盤は本当に次巻を待ちわびる、楽しい物語である。


といっても話の流れがスムーズ。
新キャラを出しても、その役割と話の目的が明確だから、気持ちがいい。

感想がいっぱい浮かぶ作品と、何も浮かばない作品がありますが、
やはり簡潔に言えば、底の深さ/浅さ の違いではないかと思う。

本書の場合は、大まかな設計図がちゃんとあって、それに沿っていることが分かる。
その上で、少しずつエピソードを重ねて、
風呼の心の動き、2人の男性の魅力を余すことなく描き込んでいる。

時間差で3人の男女の恋が始まるから、
それぞれの心の動きや懊悩に思いを馳せる楽しみがある。
特にカップルの気配がしない1人の気持ちを考察するのは楽しい(『8巻』なら大也)。
そして両想いを阻む宿敵の登場も また楽しい。


育祭に続き、文化祭が始まる。

大也は体育祭の前に負った怪我のことで風呼を責めない。
それどころか、風呼の応援が聞こえてたと、彼女の思いをしっかりと汲み取ってくれていた。
根っからの良い奴なんですよ、新保クンたちは…。

文化祭では壱がクラスメイトと仲良くやっていて嬉しい限り。
人当たりがよくて、友人・知人をあっという間に増やす大也と違って、
時間の経過とともに少しずつ、面白さが分かっていくのが壱なのだろう。
それは風呼も同じかもしれない。
そして初対面の印象が悪いほど、それ以上は悪化せず、
むしろずっと好感度が上がっていくようにすら見える。

冷たそうに見えて優しいし、人に気を遣っている。
そういうギャップと奥深さを知るから、友達も風呼も飽きないのだろう。


夜祭で、壱の隣に立って、風呼は壱を好きな自分を認める。
夏休み前後から変化を続けていた風呼の心の色ですが、ここで確定したようです。

夏以降、花火を見ると 良い感じに距離を縮めている2人。
今回も花火はあるらしいのですが、作中の絵としては出てこないのが残念。
代わりにキャンプファイヤーの日が2人を照らす。
オレンジに照らされる壱、そしてその色に顔を染める風呼。
同じ色で燃えるキャンプファイヤーじゃなければ、風呼の顔色の変化は気づかれてしまったかもしれない。


かし文化祭が終わって、現れたのは壱を巡る新たな女性。
年若きその女性は壱の婚約者だという!

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古都が新保一族の最初の来訪者。この後も2親等以内の親族が続々登場。

彼女の名前は新保 古都(しんぽ こと)。
小学1年生の壱の妹である。

彼女はイトコの大也にあんまり興味がない。
こんなに大也のことを邪険にする(存在を無視する)女性は彼女ぐらいなのではないだろうか。
さすが親戚筋の女性である。
高校の中ででは太陽と月と評される大也と壱だが、
古都にとっては兄が太陽で、その輝きの強さに大也の発する光など かき消されてしまうのだろう。

ちなみに ここで大也は1人っ子だということが判明する。

兄の壱と風呼の間に何かしらの雰囲気を察した古都は、風呼を敬遠する。
だが、子供を得意としてきたという風呼の自負が、古都との仲を深めようと燃える。

途中まで それなりに楽しくやっていたが、
やはり古都のセンサーが、壱の恋愛感情を察知すると彼女は不機嫌になる。

そんな妹の態度に、今度は壱が雷を落とす。
風呼と古都が作ったお弁当をひっくり返す古都の所業に対して、両親がいる中国送りを宣言する。
壱がちゃんと お兄ちゃんをしていて微笑ましい。
その割には、近所の子供たちとの初対面は冷たいものだったが。
これも彼の人見知りゆえか。
あの子供たちも時間の経過とともに壱と仲良くなる、はず。


都の寂しさについて、一番 共感しているのが大也だろう。
彼もまた かつて側にいた人が離れていく辛さを身をもって知っているところ。

文化祭の最中に即興で歌った、失恋ソングは、図らずも自分の心を代弁していた。
恋を自覚した瞬間、失恋は間近に迫っていた。
そして かつての自分は その人を振っていた。
これは後悔しても後悔しきれない過ちですね。

そして風呼は、兄のことが好きでたまらない古都の気持ちの一番の理解者。
古都が兄を好きなところは、風呼もまた好きなところである。

そういえば古都は かつての秋桜(あきお)先輩ポジションなのかな。
同じ人を好きなライバル同士でりながら、共感して仲良くなる。
今回は随分と年下の人となったが、人を思う気持ちは同じ。

風呼はまたライバルと仲良くなってしまう。
彼女の人たらしも極まってきましたね。
女性たちが お互いに負けないぐらいに好きだから、フェアプレーが生まれるのでしょう。

そうして分かり合う部分もあった古都との3日間は終わる。
最後に、壱に関する過去の女性情報を残して。

そう、古都は前置きにすぎない。
恋路を邪魔する女は他にいるのだった…。

『8巻』の最初と最後で不穏な空気を感じさせる、ここの辺りの展開と流れは本当に好き。