ななじ 眺（ななじ ながむ）
パフェちっく！
第07巻評価：★★★☆（7点）
総合評価：★★★（6点）
いつも自分を想ってくれる壱に対して、心動かされる風呼。一方大也は、風呼と壱の急接近に、なぜかイラだち気味…。ついに大也は壱に「気持ちをはっきりさせろ」と詰めよって…!?
簡潔完結感想文
- 学校中を駆け巡る風呼と壱の交際の噂に一番 動揺しているのは大也⁉
- 女生徒の人気を二分する新保クンと仲の良い風呼が嫉妬の対象となる。
- 球技大会に体育祭、文化祭。学校イベント大豊作の祭りの秋が続く…。
想われて嬉しいはずなのに、劣等感が消えない 7巻。
いよいよ壱（いち）が好意を隠さなくなって、ようやく三角関係の基本形が出来た。
3人が3人とも、自分たちの心の内をあけすけに話すようになって、
ここしばらく続いていた気まずさは解消される運びとなった。
これで正々堂々と嬉しいことも悲しいことも打ち明けられる関係となる。
ただ もしかしたら ここが風通しの良さのピークかな、という不安はある。
壱は早急な結論は望んでいない。
静かに風呼の風向きが変わることを待ち、今は彼女を想うだけで充分みたいだ。
なのに今の3人の関係に恋愛問題が介入すると、
きっと また三角形の どこかの辺に距離が出来てしまい、会話が遠ざかる可能性がある。
男女が3人で楽しいだけの高校生活を送るのは非常に難しいみたいだ。
この『7巻』では、風呼と、壱と大也の新保（しんぽ）クンたちの格差が語られる。
顔の出来はもちろん、指の形一つでも、彼らとは違う。
彼らと一緒にいることは、風呼のコンプレックスが引き出されることでもあった。
でも そんなことを気にするのは、相手のことが気になるから。
相手に自分の悪いところを隠し、良いところを見てもらいたいから。
その点では風呼の壱への想いは着実に動いている。
三角形の各辺が同じ長さになって、バランスが良い状態かと思いきや、
風呼は2人への気持ちが全く「同じ」ではないことに気づいている。
巻単位の長いスパンで風呼の気持ちが徐々に変化していることを描いています。
そして手の形など小さいことから全てにおいて気にしているから、
『7巻』の風呼は少女漫画のヒロインの、少々面倒臭い印象を残す。
自分の感情をコントロールできなくて すぐに怒ったり泣いたり、
恋愛の負の感情に引っ張られている状態に見える。
球技大会の日、風呼は壱が告白されているシーンを覗き見て、彼が
「一方通行だけど いるんだワ 頭から はなれねー奴」という言葉を聞く。
他の人の恋情にも揺るがない愛と、そう言われてトキめく心を感じた。
そして自分は こんなにも想われる価値があるのかという疑問が彼女のコンプレックスにもなる。
少女漫画において学校イベントは恋愛の契機でもある。
こういう特別なハレの日に、少女たちは自分の気持ちを前進させるらしい。
一方、大也は3人一緒だった関係が、自分と それ以外の、1-2で分かれていることを実感する。
壱の気持ちを大也に自分から話すことは出来ない風呼は、大也に何も言えなかった。
それがまた 2人の秘密のようで、大也はショックを受ける。
翻ってこれは、壱も感じていた孤独なのだろうか。
感情を表に出す大也だから、その寂しさも風呼にぶつけられたが、
壱は黙って その寂しさと闘っていたのかもしれない。
いつか また再読する時は、壱の強さ（我慢強さ）に着目して読んでみようか。
気持ちが落ち着かない風呼は、球技大会にも集中できず、
ボールを顔面にもらい、鼻血を出してしまう。
怪我とくれば、少女漫画では、男子からの介抱シーン。
といっても鼻血なので、お姫さま抱っこ などではなくて、一緒に保健室に行くだけ。
そして定番通り、養護教諭はいない。
怪我は、2人きりになって、腹を割って話すキッカケとして使われることが多い。
（大体、その前に男女2人の仲が少し険悪・気まずくなっていることが多い）
夕食をおすそ分けするために、新保家へ上がった際に、
再び大也の前で1-2の構図を作ってしまったことで、大也は壱への堪忍袋の緒が切れた。
壱がイトコの自分に隠したままで話を進めるから蚊帳の外になる。
だから大也は壱の気持ちを問う。
そこで壱は風呼への好意を初めて表明した。
「好きですよ？」
は照れ隠しなのだろうけど、少し煮え切らない感じもするなぁ。
が、壱は まだまだ風呼は大也に未練があると思っている様子。
もしかして 現状は負けていると思っているから自信のない告白になったのだろうか。
それをリセットするためにも、風呼はキチンと言葉にして、2人を大事に思っていることを伝える。
「同じくらい大事」
風呼は そう言葉を用いて説明したが、同じくらいという言葉に自分自身が引っ掛かる。
彼女の中では2人の間に温度差が出来始めている。
今度は恋愛が成就するかもしれない甘酸っぱい期待が読者を包み込む。
風呼は かなり遅れて大也が女性と遊ばなくなっていることを知る。
大也が女性と遊ばないことで、また壱に好きな人がいるという情報の、
筆頭容疑者に上がるのが、風呼。
それぞれのファンに囲まれて尋問される。
この風呼史上最大のピンチにナイトたちは駆け付けない。
作者は、ここで新保クンの投入をしなかったことを悔いているようだが、
ここで どちらかを登場させてしまうと、
今後の展開のミスリーディングや、結末を予感させることになるから、
新保クンを登場させなくて正解なのではないかと思う。
今の壱など登場させたら、また「こいつのこと 好きですよ？」と言い出して、火に油を注ぎかねない。
ピンチは、女性たちの勢いに たじろいだ風呼が後ろに倒れ、パンツが丸見えになったことで打開される。
その色気のない下着に、彼らの対抗意識や嫉妬は 消失してしまったようだ。
やがて風呼を置き去りにして、派閥同士の争いになっていく。
ここは学校内の噂のガス抜きをするのが目的なのかな。
新保家に一番近い風呼が妬まれないままで話を進めるのも不自然だから、
一度 疑わせて、そしてモブ女生徒たちの嫉妬や監視を解消させた。
これによって しばらくは風呼への嫌がらせはなく、3人だけで話が進められるのだろう。
球技大会に続き、体育祭と文化祭に盛り上がる学校内。
2学期の学校はイベント続きだからネタに困りませんね。
まぁ 球技大会と体育祭は どちらか一方でいいんじゃないかと思いますが。
文化祭で新聞部が「なんでもランキング」を作成するらしく、
女子用のアンケートには「校内で最もいい男は誰か」という項目がある。
風呼の答えは「新保クン。」
こちらも煮え切らないものを感じるが、
2人に最も近く、2人ともの良さを 知っている風呼らしい回答かもしれない。
この5か月ずっと一緒にいて、本当に素敵だと思っている率直な気持ちだろう。
彼らのファンの女性たちに囲まれたこと、そして新保クンたちのアンケート上位を予想して、
風呼は自分を壱と大也に比べ始めてしまう。
やがて劣等感が膨らみ、壱にさえ八つ当たりしてしまう始末。
そんな彼女の悩みを聞いてくれるのは大也。
これまでだったら壱が担当していたような役割を大也が担ってくれる。
こういう気楽な関係性を大也は風呼に、風呼は壱に願っているのだろう。
ただイトコ同士の関係とは違って、恋愛が絡むと何でも腹を割って話せなくなってしまう。
悩みに対する大也の答えは、
彼も彼なりに容姿以外のコンプレックスがあって、
特に正反対の同じ年のイトコ・壱と比べられることで足りないところを自覚させられた経験があるということ。
風呼は一度何かを気にすると視野が狭くなるのが欠点ですね。
いつか友人たちからも注意されていたが、相手の立場に立って物を考えられない節がある。
その人が完璧に見えるのは、自分がその人を完璧であると思い込んでいるからなのだ。
体育祭では、新保クンたちの競争が見られる。
200m走で一緒の組になった2人。
だが大也は、階段から落ちる風呼をかばって怪我をしていた。
大也に期待していた観衆は彼の脚の遅さに失望するが、
その理由を知っている風呼は精一杯の応援をする。
傍目には同じクラスで2位で走る壱を応援しているように見えたが、彼女の心は大也にあった。
この徒競走では、2人それぞれの、風呼に対する心の位置が見える気がする。
壱は、風呼の心のランキングでは まだ大也こそ1位で自分は2位を走っていると思っているだろう。
そして諦めずに食らいつくことによって、1位になれるかもしれないから走り続ける。
そして大也は風呼を振った自分は、彼女に一番遠い存在だと痛感しているだろう。
ただ この怪我は彼女を救ったナイトの証でもある。
怪我をしてることを黙って、それでも走り続ける彼の姿が美しい。
壱は大也の遅さに違和感を覚えて、彼の怪我を推察している。
そして大也が不調だからこそ、風呼が大也を応援していることも承知している。
壱は それを悔しいと思わない。
力いっぱい応援するのが風呼だと思っている
だが、壱には開けてはいけない扉があるようで…。
嫌な予感を残して この巻は終わる。
