ななじ 眺(ななじ ながむ)
パフェちっく!
第06巻評価:★★★☆(7点)
総合評価:★★★(6点)
壱から「大也のことをまだ好きでも受けとめたい」と言われ、風呼はとまどい気味…。そんな時、秋桜先輩の誘いで、別荘に行くことに。それに壱と大也も参加することになって…!?
簡潔完結感想文
- ずっと間接的に風呼をフォローしていた壱が一番そばにいるナイトになる。
- 持つべきものは金持ちの先輩。夏休みに高校生だけで秋桜の別荘に滞在。
- 大也の誕生日にはプレゼントと これまでの恋心。新しい季節、新しい関係。
花火が燃え尽きる時、私の心は何色に変わっているだろう、の 6巻。
思えば風呼の心は、時間経過とともに色が変わる手持ち花火のようである。
最初は大也一色、だけど今は何にも染まっていない白、そして最後には何色になっているのか?
夏休みに知人の別荘で風呼(ふうこ)と壱(いち)の2人が
花火に照らされているシーンを見て、そんなことを思った。
そういえば夏休みの前半は打ち上げ花火を この2人で見たのであった。
夜空に散る打ち上げ花火は大也(だいや)への失恋、
そして今回の手持ち花火は変化していく風呼の気持ちだろうか。
また学校のカレンダーと恋は連動しているのだろうか。
1学期は大也のターンだったが、
その途中で失恋してしまって、その心の整理が夏休みで行われていた。
ということは2学期は壱のターンで、その次で風呼の選択になるのか?
季節的に大也が春夏、壱が秋を担当するのはイメージにピッタリ。
秋が深まり、気温が下がって人恋しい時期に、風呼は誰を想うのか。
エピソードとかモチーフの使い方が非常に上手い作家さんである。
『6巻』では三角関係の3人の それぞれの「好き」の違いも分かって、想像以上に奥が深い。
もう既に好きな作家さん になりました。
私の読書法は1年1作品なのですが、
作者の5巻以上の長編作品は2021年時点で4作ある。
来年も再来年も読めるのが今から楽しみである。
夏休み中、水泳の練習のために学校のプールに通う風呼。
だが ある日、更衣室を除く男の姿を発見し、恐怖で身がすくむ。
そんな彼女を守るナイトとなったのは壱。
水泳を教えてくれる先生であり、
風呼を女性として扱い、彼女の恐怖を取り払ってくれる異性となる。
風呼のことを考え水泳の練習は当面 休みにしたが、
それでも壱は風呼と一緒に登下校を一緒にしてくれる。
しかし風呼は、大也に続いて壱とも恋愛問題を抱えることを望んでいない。
これまでのような何でも言いあえる気楽な関係が良いと思っている。
その趣旨の発言を 壱にした時、
それは自分を振った大也が風呼に言った言葉でもあることを思い出す。
大也のことを自分勝手だと思った風呼だが、風呼もまた壱に対して これまで通りの関係を望んでしまう。
風呼が「想われること」を初体験することで、大也の思考を追体験するという構成が素晴らしい。
こうすることで各人を多角的に見ることができ、
読者も少し身勝手だと思ったであろう大也の行動の理解の一助になる。
大也への未練の残る風呼に壱は
「でも それも あんただろ」
「あいつを すきな あんたを含めて受けとめるしかねーじゃん」
そして風呼に望むのは、大也を無理に忘れる事じゃない。
「ただ 否定だけは すんな ――ここにオレもいること」
本書は難しい言葉を使わないけど、印象深い台詞が多いですよね。
ここも作者のセンスが光るところだと思います。
これだけ多く少女漫画を読んでいると、
大事なのは絵ではなく、構成や台詞だということが分かってくる。
人気を獲得できなかった作品や作者は、やっぱり言葉が弱いと思うことがある。
好きだ嫌いだの世界で、どう それを伝えていくか、言葉の表現力が問われる部分が多々あるのだろう。
風呼は大也との関係の発展を目指したから告白した。
しかし壱は静かに深く風呼を想う。
急激な関係の発展を望まないが、自分の想いを否定せず認めて欲しいと壱は願う。
風呼が、壱と 壱の前での大也との距離を測りかねている最中、
お盆休みに、秋桜(あきお)先輩から所持する別荘に誘われる。
そういえば事業家である大也たち新保(しんぽ)家は別荘 持ってないのだろうか。
話が広まり、結果的に総勢10人での旅行となった。
参加を希望した大也だけじゃなく壱までも旅行に参加してることに風呼は驚く。
別荘そばの湖(?)でボートに乗って、秋桜と恋バナをしている際、
風呼はバランスを崩してボートから転落する。
そのピンチに壱は慌てず動かず、泳ぎの成果を見せろと叱咤激励する。
その声に負けん気を起こして目をつぶって必死に泳ぐ風呼。
いざなわれるように一直線に壱に向かう風呼の泳ぎであった。
この夏の総決算といったところでしょうか。
壱と一緒にいると成長できるのかもしれない。
夜は肝試し。
風呼は壱とペアになるが、転んで足を捻ってしまう。
山の中に入ったら怪我か遭難すると思え、が 少女漫画の鉄則です。
それにしても ここのところの風呼は、転んで大也の入っている風呂にダイブしたり、
ボートの上でバランスを崩し、今回も転び、足腰が弱っているのではないか…。
折角テニス部で練習をしているというのに。
まぁ、種族で言えばツンデレの壱に対しては、
少女漫画的なハプニングの方が、デレと胸キュンの場面になるのだろう。
イジワル男子、S系男子にハプニングが多いのも同じ理由か。
主人公が困っている時に優しくなるのがキュンなのだから。
壱は背中を貸して上げ、風呼はおんぶされる。
お化け役になっていた大也が現れ、一緒に風呼を運ぼうとするが、それを壱が拒否。
これは三角関係の最初のバトルですかね。
壱は風呼に対しては持久戦を覚悟していても、
大也と仲良く3人で友達ごっこを続けるつもりはないのだろう。
ここから壱は大也への対抗意識を隠さない。
風呼が大也と友人と喋っているだけでも、邪魔をしてくる始末。
別荘に帰り、秋桜に湿布で手当てをしてもらう風呼。
しかし ここ数年 秋桜の家族が使用していない別荘にある湿布は何年前の物なのでしょうか。
食べ過ぎで横になっている壱の看病を、
周囲の女性たちは気を回して風呼にさせようとするが、
風呼は そういう周囲からの圧力を はねのける。
これは自分のペースを見失って、勢いに任せて大也に当たって砕けた
自分の過去の失敗を繰り返さないためでもあった。
風呼も ゆっくりと自分の気持ちを確認しながら育てている最中なのだろう。
そうして夏休みが終わろうとしていた。
労働の対価として初めてのバイト代をもらい、
それを資金として8/31の大也の誕生日のプレゼントを壱と一緒に買いに行く。
壱との2人きりのお出掛けは初めてでしょうか。
そんな時、カップルに間違われてテレビの取材を受ける2人。
だが、壱は堂々とカップルではないこと、彼女には他に大事な男がいることを宣言する。
しかし別荘でもそうだったが、壱は風呼の心理状態をよく理解していない。
彼女は壱が考える以上に大也のことをフラットに考えられるようになっているし、
そして壱のことを男性として十分に意識している。
その考えの齟齬を正すために、風呼は大也の誕生日に
自分が持っていた大也の写真を彼に渡し、
以前、壱から貰ったヘアピンを初めて髪に飾るのだった。
これはかなりの壱に対する所信表明である。
積極的な姿勢ではなくとも、壱が思うほど大也への未練は残っていない。
季節が移ろうように、気持ちも移ろう。
夏休み前後の約2か月間は、若者にとって気持ちを新たにするのに十分な時間なのだ。
そして始まる2学期。
といっても毎日のように顔は合わせているので、
変わったことと言えば席替えぐらいか。
壱と前後の席になった。
壱のターンはまだまだ続く。というか2学期が本番か。
ちなみに2学期からは級長が変わるらしく、壱は その任を解かれたらしい。
彼の級長としての最後の務めは、風呼の水泳の個人レッスンだったみたいだ。
だが教師の指名によって、2人で球技大会実行委員を命じられてしまう。
いきなり距離が近くなって離れられない2人。
更にテレビの街頭インタビューの模様が放送されてしまい、学校中の注目を浴びることになった。
そんな2人の距離を見て、複雑な気持ちが生じるのは大也のようで…。
だが彼に恋愛参戦の権利はない。
大也は大也で苦しい立場に立たされている。
この頃から1/4スペースなどで病気自慢(?)をしている作者。
どうも元来 身体が丈夫ではないところに、連載を抱えて不規則な生活で大変な日々みたいだ。
更に『6巻』から約10年後、2011年には脳梗塞まで患ったようで驚いた。
ファンのためにも、家族のためにも お身体を大切にして頂きたい。