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少女漫画と小説の感想ブログです

なんで おれが いきなり男にキスされるんだよ⁉ あっ、おれが男の娘だからか。テヘッ

ミントな僕ら 1 (りぼんマスコットコミックスDIGITAL)
吉住 渉(よしずみ わたる)
ミントな僕ら(みんとなぼくら)
第01巻評価:★★★(6点)
  総合評価:★★☆(5点)
 

ふたごの姉弟・まりあとのえるは大の仲よし。初恋の人を追いかけ全寮制の森ノ宮学園へ転入したまりあをとりもどそうと、のえるはとんでもない方法で森ノ宮へ…!!

簡潔完結感想文

  • 女装して女子寮に入る弟の暴挙に隠れているが、出会って10分で転校の姉も酷い。
  • おれの一番気が合う男友達から いきなりキスされた⁉ でも嫌じゃなかったよ(嘘)
  • 本書は「好き」の価値が軽いが、それがドタバタコメディの楽しさに繋がっている。

住作品の話の作り方が変わらないことに驚く 1巻。

吉住作品の面白さは設定の奇抜さだなぁ、と改めて認識した。
代表作『ママレード・ボーイ』も、私が1年半前に読んだ『ちとせetc.』も、
1話で驚くべき展開が待ち受けていたが、本書もまた1話で読者の心を即座に掴む。

設定と展開の早さが売りだから、時代背景や、その時代の空気感があまり気にならない。

1997年連載開始の本書と、2009年連載開始の『ちとせ』の間には、
12年以上の歳月が流れているのだが、作中の小道具(使い捨てカメラやケータイの形)などを除けば、
どちらが新しい作品か分からないかもしれない。
画力も一定以上に保たれているし、良くも悪くもコマ割りや構図に大きな変化はない。

むしろ私には『ちとせ』での欠点を踏まえて、本書を描いたのかと思えたぐらい。

私が『ちとせ』で まず受け入れられなかったのは、
主人公が たった数時間の一緒に過ごした男性を追って地元・沖縄から東京へ転校していったこと。
設定の奇抜さは認めるが、あんまりにも恋愛脳の主人公に最初から興味が持てなかった。

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特技は秒で恋に落ちること、の南野まりあ(姉)。彼女がヒロインだったら人気は出なかっただろう。

実は本書も女性側の行動は全く一緒。
中学2年生の南野(みなみの)まりあ は、バスケ部の対抗戦会場の学校で足を挫いてしまい立てないところを、
その学校の女子バスケ部のコーチ大学2年生の広部(ひろべ)に、
お姫さま抱っこをしてもらい医務室に運んでもらったことで恋に落ちた。
その間に流れた時間は、きっと10分に満たない出来事だろう。

それでも その時の想いを絶やさずに、
母を「どうしても彼のそばに行きたいの 初恋なの お願い!」と説得し、
抜群の行動力で転校して、しっかりと彼とお近づきになっているのだから凄いものだ。

ただ、まりあを主人公にしたら、きっと『ちとせ』の二の舞になっていただろう(時系列的におかしいが)。


品と、頭の中が恋愛お花畑の まりあを救ったのが、本書の主人公、南野のえる である。
名前から察せられるように この人は まりあ の血縁者。

南野のえる は中学2年生の「男子」で、まりあ の双子の「弟」
生まれた時から一緒にいる まりあ と世界が分かつことが許せない彼は、驚くべき手段を用いて姉の恋を妨害する。

それが転校である。
さすが同じ穴のむじな、である。
が、彼の暴挙は姉よりも酷いものだった。
それが「女生徒」として学校と寮に潜入すること。

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初恋の魔の手から姉を守り、全てを自分と共有することを願う南野のえる(弟)

全寮制の学校だが男性部屋に空きがなく、女性部屋なら開いていると学校側から言われ、
女性として学校に入る決意を固めた次第なのである。

性別詐称の件は学校側は最初から認識しており、理事長の権力によって、のえる は女子寮に潜り込むことが出来た。
女子寮に男が1人潜入するなど、獣を野に放つようなものだと思うが、
掲載誌が「りぼん」ということもあり、性的な匂いは一切封じられている。

その一方で、金とコネで全てを解決している汚い漫画である。
彼ら双子の実家は相当な金持ちで、豪邸としか言いようのない家に住んでいる。
もしかしたら恋のため、または姉のためとはいえ、親元を離れることは、
彼らの教育や自立にとって良いことだったのではないか。

恋に狂ったまりあが自己弁護のために用いた、
「いつまでも子供じゃいられない
 2人で共同体作って閉じこもってちゃダメよ 自立しなくちゃ!」
という言葉は案外、的を射たものかもしれない。

母は恋に生きる娘を応援し、父は娘の恋を阻止するため息子と結託する構図も面白い。
ミイラ取りがミイラになる結末に父は徒労を覚えるかもしれないが…。


うして本書で一番 大胆な人物・のえるがいることで、相対的に まりあ の影は薄まった。
まりあ は相当な恋愛バカだと思うが、弟・のえるに振り回されたり、
女子として生きる彼をフォローしたりと、気苦労が絶えないから彼女に肩入れしてしまう。
作中では迷惑そうな まりあだが、好感度的には彼のお陰で得していることの方が多いと思う。

後発の『ちとせ』は、年齢設定を上げて、コメディ要素なく恋に生きる女性の姿を描きたかったのだろうか。
だが恋に生きる、という割に その価値が軽いのが気になった。

それは本書も同じ。
「好き」というのは記号に過ぎず、恋愛に共感したり応援しようという気持ちは一切ない。
吉住作品は そういうものだろう。
設定と展開を楽しめればそれでいい。

中学2年生という年齢設定も、作者が得意とする展開の早さに よく合っている。
前述の通り吉住作品は「好き」「別れる」が何度も繰り返されるのだが、
中学生ならば この気持ちの切り替えの早さも さもありなんと納得できる。
年齢設定と作者の作風が上手くかみ合った作品と言える。

そして中学2年生ということもあり「初恋」が物語の中心にある。
瞬間的に燃え上がり、そして時には鎮火する数々の初恋。
まりあ以外の人物にとって、南野のえる はキューピッドなのかもしれない、と
思ってしまうぐらい、彼の登場で初恋の嵐が巻き起こりまくっている。

また主人公・のえるが高校生ではなく、中学2年生というのは性差がハッキリするギリギリの上限だからだろう。

にしても、特に まりあの「本気」とか「ほんとに好き」は当てにならなすぎるが…。


人公は のえるだろう。
姉の まりあ に迷惑をかけまくって恋を妨害するつもりが、いつの間にか彼の方が色々と事件に巻き込まれていく。

自分の嫌がらせが原因で一番 大切なはずの姉を泣かしてしまうし、
寮で同室の女生徒・未有(みゆう)には援助交際(今ならパパ活か)が疑惑が出てくる。

更には、のえる本人的には友情を深めたつもりが、クラスメイトの男子・佐々(ささ)から好意を受けてしまい…。

親友を失いかねない事態に、のえるは真相を告白する。
最終的には のえる の女装のことを知る人物が結構多いのが本書の特徴。
誤解されて問題が起こったり、真実を共有した方が話が早い人には、結構な割合で秘密をバラす。

ただし、複数人にバラすことで、物語がややこしくなりすぎた感はある。
入れ替わりコメディみたいな雰囲気は出ましたが…。

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小悪魔 のえる の最初の被害者・佐々。のえるが まりあ よりも圧倒的にモテたら笑える。

える の女装で一番の被害者が、この佐々だろうか。

男装したヒロインを好きになってしまう男キャラが、性的指向を含めて悩むのは見てきましたが、
女装した男キャラを好きになってしまい、恋破れる人は珍しい。

ここで佐々が性別は問題ではなく自分は「のえる」が好きなんだ、となっても展開としては面白かったかもしれない。
本書の連載から20年以上経過した2021年の現在なら、そういうキャラもいて不思議ではない。

それに少女漫画の偽装交際は、いつしか本物になるのがお約束。
そこに性別なんて関係ない⁉


中学生ということもあって、彼らの恋心は、
ライバル的存在が現れた時に自覚するものが多い。
それぐらい淡く、そして気づきにくい。

他者に関心がなさそうな未有が、佐々のことを聞いてきた時、のえる の心は微かに痛む。
恋を知らない のえるが恋を知った時、
彼は姉と同じ視点を獲得するのだろうが、
同時に自分が大変難しい立場にいることに気づくだろう。

自業自得の恋に どう落とし前を付けるのか、のえる 男の勝負所である。


本書においては様々なご都合主義があるが、
ずっと気になっていたのは、男女の双子というのは絶対に二卵性双生児であって、ただの姉弟と変わらないということ。

双子=そっくり という先入観で読み進められるが、
男女でそっくり、というのは現実には なかなかいないだろう。