《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

主に少女漫画と小説の感想ブログです

1年前に男を追って上京しました。他の男とも交際したけど、今は本命の彼と幸せでーす☆

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吉住 渉(よしずみ わたる)
ちとせetc.(ちとせエトセトラ)
第7巻評価:★★(4点)
   総合評価:★★☆(5点)
 

とうとう結ばれたちとせと幸翔。幸せすぎた日々もつかの間…。それを複雑な気持ちで見ていたのは、駿。そして、本当の気持ちに気がついた駿は…!? ちとせの初恋、とうとうクライマックス! 完結です!

簡潔完結感想文

  • 改めて赤石に交際を申し込まれるちとせ。自分がユキに相応しいか悩みます。
  • ちとせの所業が親にばれてしまい沖縄に一時帰郷。そこに現れたのは祭部。
  • 沖縄の海を前にそれぞれの恋が始まったり終わったり、続いたりします。


もしかしたら作者は本書で「恋愛とタイミング」について描き続けていたのだろうか。そう思うほどタイミングが悪い最終7巻。

この段の文章はこれまでの要約になっており、長くなります。

恋愛とタイミングの問題は本書の最初からあった、
地元・沖縄でユキに助けられた事で彼に強く惹かれるがあまり、上京と高校編入を決意した主人公のちとせ。
だが彼には清綾という強い絆で結ばれた彼女がいた。
そもそもちとせはユキと沖縄で翌日も会う約束をしていたがタイミング悪く高熱を出してしまったので連絡手段が一切ないまま別れてしまった事が上京の要因の一つ。
けれど上京するも速攻で失恋する。

強い絆で結ばれているユキと清綾は数年前の小学生の頃、お互いが入院生活中に交際が始まている。
だがここでもタイミング悪く同じ入院仲間の親友に露見してしまう。
その事が発端となり自縄自縛に陥っていた2人は、お互い別の人に惹かれている事も気づく。

まずユキは沖縄で出会った段階でちとせに好意を感じていたらしい(後付けの設定のにおいがしますが…)。
彼女もいたし、その気持ちに無自覚なままだったユキはちとせの好意を受け取らなかった。
そしてその事が徐々にちとせの事を好きになっていく彼を苦しめる。これもタイミング。

清綾は高校入学の時点から赤石という同じ部の仲間に惹かれ、両想いだという事を確信しつつも、入院中の過去の出来事から赤石を拒みユキに依存する。ここもタイミング。

ちとせは赤石の提案によりユキを忘れるよう彼と交際を始める。
だがその交際期間中にユキに告白され、本命の人か、かりそめの彼氏か悩むちとせ。
9割方自業自得ではあるがこれもタイミング。
清綾の存在や彼らの過去を知り、赤石との関係を進めることで彼に溺れてしまおうと考えるちとせは彼と一泊旅行に向かった。
その頃、ユキと清綾は過去の意外な事実を知り、自縄自縛の縄が解けていく事を感じる。
そしてお互い本当に好きな人に会いに行くため彼らの旅行先に向かう。
そして間一髪のタイミングで未遂のまま彼らは恋人を交換してめでたしめでたしとなる。

少しのタイミングのずれがその後の人生や恋の行方を大きく変えるという事だろうか。

ちとせとユキの関係がますます深まる中、タイミング最悪の状況でちとせへの恋心を自覚し始める赤石。
単行本派としては最終巻になって何を今更と呆れる限りで、これまでのごたごたの歴史もひっくり返す超絶怒涛の急展開。
ユキと清綾が別れる前後にちとせに愛着が湧き、ちとせの行動を制限する彼氏役ならまだしも鈍感な赤石。

これは赤石でもエロ石でもなく「おそ石」ですね。そんな頃、嫉妬混じりに「口だけ紳士」のユキを責める赤石の描写には笑ってしまった。これだけは全うな意見だ赤石。

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赤石の「ささやき戦術」に心を乱される ちとせ
そして『2巻』と同じように、ちとせに考える隙を与えない赤石の俺様論理を展開してちとせの空っぽの頭を千々に乱す。
ここにきて悩むちとせには違和感と呆れの気持ちしかないが、もしかして作者は赤石に付け入る隙を与えるために、ちとせの恋心を空疎なものにしているのか?とも考えた。
これがわざとじゃないと赤石の論理は作品の根本であるちとせのユキへの好意が空っぽですって証明になってしまい、作者や作品へのツッコミ材料にもなりかねない。

今巻のラストでもちとせとユキの恋心を無理矢理に善なるもの、聖なるものへと昇華しているように見受けられた。
説明によるとユキの方も初対面でちとせを意識していたが「好きになっちゃいけないって」「防衛本能が働いた」ので忘れてしまった、という事らしい。
数時間の沖縄案内の間に本能で好きになり、それを忘れようと本能がまた働く。
ちとせの恋心も衝動とは違う確かなものだという説明が何度も展開されていたが、繰り返されるほど言い訳っぽくなる。

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自分たちの恋愛を正当化する言葉が続く…。
もう言ってしまえばいいのだ、その容姿に本能が働いて本能のまま上京し、本能が命じるまま身体を求めた、と。
それ以上相応しい言葉は本書にはないと思う。


クライマックスは「親バレ」という予測できる展開。
ただ入学から1年近く経ってから学園側から沖縄の親に連絡があるってのは作為を感じる。
父兄であれば成人し同居する兄でもよかろうに。

これは多分、ユキに助けられた日から1年経って、あの日と同じ場所・同じ時間に今は恋人同士の2人が並ぶ、という演出のための作為だろう。
ふわふわと恋に溺れるちとせはそこにいるが、ロマンティックな感じは私には届かない。

ちとせ兄といえば清綾の描写は何だったんだろう。清綾を孤独にさせないため?
清綾の軽薄さが目立つだけで、その後の赤石との含みを持たせた展開に説得力が(更に)なくなるだけだった。

また昴と亜未伽の片づけ方も雑だったなぁ。
昴は動きがあって嘘がないキャラで目立っていたのに、最終的には5,6番手のキャラに収まった。
赤石→昴→赤石、と物語を引っ掻き回す役割が変わっただけだった。