栄羽 弥(さこう わたり)
コスプレ★アニマル
第12巻評価:★☆(3点)
総合評価:★★(4点)
アラタ卒業問題もどうにか決着。本格的に受験勉強突入の前に、フェリーチェのリニューアルオープンパーティーが♪ 男子の衣装のアレコレにうっとりしていたリカも、控え室にウェディングドレスを発見! 思わず着てみてウットリ……そこへ入ってきた、かっこいいオジさま、え!? 元(ハジメ)のパパだったの? ――このウェディングドレスが元とリカの恋を大きく揺るがすなんて、思ってもみなかったのに……。
簡潔完結感想文
- 一着のドレスが事件の発端。他人様の土地に勝手にドレスを置く女 vs. ドレスを勝手に着る女。
- 彼の病気は全て仕組まれたもの。ヒーローを物語から遠ざけ、ヒロインに怪我をさせるために。
- エロで読者を釣ったのに、後半はシリアスで幻滅させる。エロ少女漫画の宿命は繰り返される。
主人公は新しいイケメンが登場したらホイホイと付いていく 12巻。
新顔のイケメンに不自然に介入して厄介ごとに巻き込まれるのが恒例の本書。
何かに似てると思ったら、ミステリの探偵や コナん君一行が
やたらと事件に巻き込まれる様子と一緒ですね。
もう そこまでの過程も何もあったもんじゃありません。
イケメンとハラハラドキドキした事件に出くわせば それでいいのです。
なので疑問が多く湧き上がる不自然な話の運びも仕方がありません。
今回の事件の鍵となる一着のドレスを なぜ子供のバイト先に保管するのかとか、
それを見つけた主人公の リカが無断で着てしまうモラルの無さとか、
着用したら即座に今回のメインイケメン・元(はじめ)の父親が現れるとか、
もうツッコミどころ満載の強引な展開も、一つの様式美だと思えば我慢も出来ます。
我慢が出来ないのは、やたらとシリアスな事件を用意するところ。
イケメン登場人物たちが現役高校生か大学生なので、
作者が用意できる彼らのトラウマは、親絡みのモノばかり。
親の離婚や死別、不遇な子供時代、皆 似たり寄ったりの お話ばかり。
更には『1巻』の感想文でも書きましたが、
作者が後半で披露した話の大部分は『1巻』収録のオムニバス漫画の流用。
今回の元(はじめ)親子の話は まさに同じ(それが判明するのは『13巻』ですが)。
序盤は やたらエロチックな物語を描いていたと思ったら、
後半はトラウマのオンパレード。
エロ重視の内容の漫画はシリアスな事件を描きたがる傾向がある。
こういう事柄を扱えば人間を描けていると思っているのだろうか。
エロで連載を勝ち取ったくせに、人気が安定したら我に返って、
エロを封印してシリアスモードに持ち込むのがダサい。
例え我に返っても、読者に分からないように、エロに徹してほしいものだ。
今回の元(はじめ)親子の話も最終回に向けて用意した お話だろう。
作品の中で明確なクライマックスを創出するために、大きな事件が起こる。
その結果は何回目かの リカの怪我。
リカの怪我が回を重ねる毎に重くなっているのが怖い。
このまま連載が続いていたら リカは完全に死ぬ道しか残されてなかったでしょうね…。
物語は盛り上がっているが、心が動かされるかというと微妙な内容。
上述の通り、リカが元の父親と行動するのは不自然さばかりが目立つし、
父親の介護をしている2人の人間はいつも不注意が過ぎるし、
いつも最後の最後で見せるリカの自己犠牲は不用意なものだし、
何もかもがチグハグな印象ばかり。
リカの行動は本書で最大のお節介なんだろうけど、
燃え盛る炎に身を投げ出すほどの切羽詰まった理由は伝わらない。
物語としても恋愛としても大きな山に差し掛かった。
ダラダラと長かった登山道もあと僅か。
頂上からの景色は期待せずに、登頂の達成感だけを求めて歩みを進めたい。
そういえば今回の事件のために大学の試験を放り出した リカ。
『11巻』では元の進級危機がありましたが、今後はリカの進級の危機があるのでしょうか。
リカが留年して、元がリカの大学に入学すれば 同じキャンパスで過ごせる可能性もあり⁉
にしても作者は元の父親の病気(脳の出血)を、
スーパーダーリン過ぎて邪魔だった元を物語から遠ざけるだけでなく、
このクライマックスのために周到に用意していたのでしょうか。
重い病気のためのリハビリで元を海外に留めておけるし、
脳の病気のため、父親の記憶や言動がおかしくなるのも不自然さ はない。
物語の後半を支える一石二鳥の病気である。
父親(とリカ)にとっては神様に貧乏くじを引かされたとしか思えないが…。
あと、『12巻』のラストで登場した、
リカ が公園で見た「建物の影が飛行機の形…?」が、全くイメージできないんですけど。
十字の建物があるのか?
太陽という光源は一つなのに、影が重なる珍現象か?
作者に問いただしたいものである。
また、再読すると『14巻』の番外編におけるアラタの話と並行していることが分かる。
というか、今回のオーナーの周辺の描写は初読では意味の分からない描写ばかりである。