《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

少女漫画のライバルは 特撮における怪人。愛のパワーで蹴散らされたら即 退場。

ココロ・ボタン(4) (フラワーコミックス)
宇佐美 真紀(うさみ まき)
ココロ・ボタン
第04巻評価:★★★(6点)
  総合評価:★★★☆(7点)
 

古閑(こが)くんとこじれてしまった花火デートのあと、待っていたのは古閑くんからの「つきあってください」の言葉!?ついにお試しを卒業して、ほんとの彼カノに・・・と夢をふくらませる新奈(ニーナ)ですが、現実はちっとも甘くなくって!?

簡潔完結感想文

  • 花火大会当日。泣いている彼女を慰撫するためのキスだったが、かえって2人に溝が出来てしまい…。
  • 正式交際。お互い家にこもって相手のことを考えて湧き上がる恋情に気づく。古閑くんの提案は…⁉
  • 元カノ問題。テンプレ展開。悪意ある本当の意地悪に晒される新奈。読んでて楽しくないよー。

目を終えた方から 速やかにご退場願います、の 4巻。

『4巻』だけで3人の登場人物たちが物語から退場していく。
それぞれに主人公・新奈(にいな)とヒーローの古閑(こが)くんの間に、
割って入ろうとして、入れなかった人たちだ。

1巻で3人の退場は多すぎる気もするが、それには理由がある。

2人の関係性が「お試し」の お付き合いから正式な お付き合いになったのだ。

これまでは不安定な関係に まだまだ入り込む余地があったが、
晴れて「お試し」開始から4か月余りを過ぎて『4巻』にて確固たる関係性になりました。

なので諦めた人々は実家に帰ったり、バイトを辞めたりして区切りをつけ退場します。

『3巻』の終わりから『4巻』にかけては、苦しい展開が続きましたが、
それは一層 高い幸せに到達するための沈み込みだったんですね。

正直に言うと、私としては本編はここで終わっても良かったかなぁ…、と思います。

特に『4巻』後半で、また1人 新しいキャラを投入し、
そして退場させていく様子を見て、本書の行く末に暗澹たる気持ちが湧いてきました。

古閑くんの新奈への「いじわる」も、
次々に出現するライバルキャラのアイデアも枯渇しているなら、
一思いに終幕を決断してくれ、と作者に訴えたい気分です。


…と、先に注文ばかり書き連ねてしまいましたが、『4巻』のメインは古閑くんの あの言動。

『3巻』のラストで、古閑の過去のキスを知って泣いている新奈にキスをした古閑の行動。

だが新奈には、古閑が いとこ とキスをした自分の過去を塗りつぶすようなキスに感じられ、
古閑のもとから逃げ去ってしまう。
浴衣を着て、夏休みの最大のイベントとして楽しみにしていた花火大会も見ずに…。

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古閑らしからぬ企みのない行動。それが新奈を苦しめ、古閑自身も また困惑する…。

その日以来、新奈は部屋に閉じこもり食事も細くなってしまった。


一方、その後の夏休み中、新奈と距離を置き続けた古閑も、
部屋に閉じこもり、新奈にキスをした自分の行動を冷静に分析する。

これは いつもの先回り や「いじわる」のため行動ではない。
あの時、古閑に起こったのは衝動だ。
知性を武器に人を翻弄する古閑が、理性をなくして取った行動。
他の誰でもなく、あの時 泣いていたのが新奈だからキスをしたのだ。

その答えに思い当たった古閑は、家を出て新奈のもとに走る…。


あんなに冷静で怜悧(れいり)な古閑が自己分析できないぐらい、
衝動(キス)が先に立つという展開が良いアクセントになっています。

これまで宙ぶらりんだった2人の関係に、
古閑くんが男としてのケジメを ちゃんとつけるという結末も良い。

こういう大事な場面で古閑くんの表情に余裕がなくなり、
ちょっと緊張しているところも良い。
全く、何をやっても良い人に見えてしまう、ズルい男ですよ、古閑くんは。


たせなかった夏休みの花火大会を2人で見るための、
正式なカップルとしての思い出を1話挿んで、繰り広げられるのは古閑の元カノ問題。

これは『1巻』でも新奈が聞くに聞けなかった中学時代の恋愛問題でもありますが、
幸せの絶頂である正式交際の直後に、この お決まりの展開になることは残念でならなかった。

しかも、元カノが今カノの新奈を陥れようとする展開である。

新奈に「いじわる」をしていいのは、古閑くんだけ!と、
すっかり古閑くんに調教されている読者の私がいた。

例え恋のライバルでも嫌がらせをされても、
問題を抱えていそうな人を見ると見捨てておけない、
新奈の優しさが分かる お話ではありますが、
やっぱり本当に悪意のある意地悪は本書には似つかわしくない。

古閑くんが「いじわる」を封印すると、途端に凡庸な物語になってしまうのが露呈した。

まぁ、女同士のキャットファイトを見ての古閑くんの対応には笑ってしまったが。


そして上述した通り、この元カノ・まゆり も含め、
本書はライバルキャラが出現しては退場する展開の連続で、単調さが目立つ。

やっぱり登場人物たちの使い捨てが目立つなぁ。
しかも ほぼ全員が課せられている役割が一緒。
2人に焦りを感じさせるように配置されているだけ。

同居している新奈の妹・葵(あおい)以外は、その後、話に関わってこないのも気になる。

特に『3巻』後半から『4巻』前半までの登場だった古閑くんのイトコ・美礼(みれい)は酷い。
完全にキスを誘発するためだけの存在。

そして古閑くんに恋する女性たちは新奈に悪意を剥き出しにするだけなのが気になる。

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ライバルキャラの退場と入場。新奈のバイト先はライバルキャラの本拠地なのか⁉

男性キャラの新奈の お兄さん的存在・朋宏(ともひろ)も、
2人の関係に決着が付いたら、逃げるように物語から退場するのも気になる。
もっと作品世界に とどまらせてあげればいいのに。

みんな、ライバルキャラとしての意義しか与えられてないのだろうか。

少女漫画として常時 何か事件を起こさなければいけないのは分かるけど、
もっと登場人物を大事にした描写が欲しい。

ココロ・ボタン 4 (Betsucomiフラワーコミックス)

ココロ・ボタン 4 (Betsucomiフラワーコミックス)