《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

先回りして新奈に いじわるする彼氏 vs 新奈の不幸の芽を摘もうとする人々。

ココロ・ボタン(3) (フラワーコミックス)
宇佐美 真紀(うさみ まき)
ココロ・ボタン
第03巻評価:★★★(6点)
  総合評価:★★★☆(7点)
 

お試しで古閑くんとおつきあい中の新奈。はやく正式な「彼女」になれるように頑張り中ですが・・・そんな時、古閑くんから「期末テストで70点以上取れたら、花火大会の日にデートしよう」っていわれちゃった!?舞い上がる新奈ですが・・・?

簡潔完結感想文

  • テストで70点の目標が いつの間にかにノルマのように思えて過労死寸前まで働くブラック企業
  • 自分の言葉が新奈を苦しめたことを知った古閑くん。でも本人の公認が出たので いじわる再開。
  • 新奈の周囲の人々からDV男のように扱われる古閑くん。皆、新奈が大好きゆえの言動なのだが…。

「3のつく時期ターニングポイントだよ(赤瓦もどむ さん『兄友 3巻』)」の3か月目を無事通過できるのか 注目の 3巻。

『3巻』は珍しく古閑(こが)くんが失敗をする回となっております。

ことの発端は、目前に迫る夏休みのデート計画と その前にある期末テスト。

夏休みに会いたいと願う新奈(にいな)の意図を汲んで、
お得意の「先回り のS」を発動して、彼女と夏休みデートを提案する古閑くん。

しかし夏休みにばかり浮かれてしまう彼女の性格も先回りして、
古閑くん は新奈が「期末(テスト)で各教科70点以上取れたら」デートをすると条件を出す。
これは古閑くんの「いじわる」の一環で あって、気を引き締めてね、という戒めだったのだが…。

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忠犬・新奈の飼い方が まだ分かっていなかった古閑くん。具体的な数字はノルマに変換された。

ただし古閑くん は新奈のことを少し侮っていた。

猪突猛進というか、忠犬の中の忠犬というか。
文言をその通りにしか受け取れない ちょっとアレな性格の新奈には、
もはや70点という目標しか見えなくなってしまった。

ちょうど同じ頃、以前、隣に住んでいた お兄ちゃん的存在、
大学生の朋宏(ともひろ)が新奈の家庭教師に就く。

新奈の6つ上の朋宏は、新奈の初恋の相手でもある。
朋宏は、現在 新奈に彼氏(になったらいいと思う人)がいると知り、
しばらく会わない間に新奈がすっかり成長したことを知る。

そして その人とのデートのために70点を目指す新奈の一途さを微笑ましく思っていた。
だが、あんまりに根を詰め過ぎてテスト当日に新奈は体調を崩してしまい…。


キャラの朋宏は、古閑くんにとって 歳の差や経験に差があることもあり、
頭脳も互角の、同性で初めてのライバル的存在になる。

大学生の朋宏には、新奈を縛るものが何なのか見えている。

今回も新奈は気づかないが、彼女に近づく男全員に嫉妬している古閑くん。
しかも今回、自分の言葉が新奈に無理をさせたと分かり、
古閑くんは かつてないほど落ち込む。

新奈の初恋の相手、小さい頃から新奈の性格を知っている朋宏であり、
更には、新奈を助けた朋宏の持つ中型以上のバイク免許とか、
古閑くんがまだ年齢制限によって取得できないものがあることも古閑くんを打ちのめしたのだろう。


しかし見舞いに来た古閑くんは、変わらない新奈の一途さに触れノックアウト。
ペースを乱され、珍しく反省の言葉を口にして、素直に帰っていく。
古閑くんは自分が思っている以上に新奈のことを想っていることを自覚したのでしょう。

テスト期間が終了しても「いじわる」をしてこない古閑に対して、
新奈が不安を口にすると、友人は それは古閑に新奈への好意が生まれたのでは と答える。
その言葉に対して、舞い上がりつつ自制する新奈が可愛いですね。

新奈は自分を過小評価しています。
無意識でやっている言動が古閑にハマっていることを知らない。
その自然体が彼女の可愛さであって、あざとさ が少しでも見えたら終わりなんですが。

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2人の間には「いじわる」が不可欠であると認識した古閑くんは完全に元に戻る。

テスト期間後に初めて2人で話し、「いじわる」が新奈を傷つけたのではないことが判明。
ということで古閑君の いじわる は今後も絶賛継続されることになった。

しかも本人公認となったことで、街中で会った朋宏にも公言するぐらいに堂々と。

ただ ちゃんと新奈を喜ばせるために、彼女が購入した浴衣に合う髪飾りを
プレゼントするところが、一流の飴と鞭 使い だと思う。
古閑くんの特技は、人の心を揺さぶること、だろう。

この場面で、新奈が「いじわるは金輪際やめてほしいの」と言ったらどういう展開になったのだろうか。

「今日も可愛いよ」とか「春日(かすが=新奈の苗字)さんが テストでどんな点数とっても好きだよ」とか
「夏休み中、出来るだけ毎日会おうよ」とか言い出すのだろうか。

でも こんな甘いだけの内容じゃ漫画として面白くなさそうですね。


火大会の他にも一緒に過ごしたかった夏休みは古閑の都合で、花火大会以外は全キャンセル。

そこで朋宏のバイト先で働くことを提案される。
ということでテスト期間前だけだった朋宏との関係が続きます。

ある意味で開き直った古閑君は、朋宏に新奈に構ってやれと言われても、どこ吹く風。
すっかり自分のペースでいじわるを続ける。

もしかしたら植物に過剰な養分を与えると腐ってしまうように、
新奈のことを見極めて、彼女が楽しい毎日を送れるだけの栄養(ご褒美)をあげているのかも。

なかなか会えない中で会える日があるから、その日が一層 輝くのかもしれない。
だが、そんな輝ける一日になるはずだった花火大会の日、新奈は…。

展開としては、2人に次々に同性のライバルが現れる、という やや単調な展開かな。
今巻のラストの「13話」は、なんかだ展開が早足で ついていけなかった。

とても気になる展開で終わっているので、この大きな山を越えた後、
同じような展開が続かないことを祈るばかり。


しかし新奈の妹・葵(あおい)に続いて、朋宏まで お付き合いに反対するとは意外だ。
古閑くんは、なかなか反発を生む人物だ。

古閑くんの「いじわる」を精神的DVと捉えると、確かに距離を置いて欲しい気持ちも分かる。
新奈に身近な人ほど、新奈を翻弄する男なんて嫌いになるだろう。
特に『3巻』後半の古閑くんは まるで悪役のような言動だし(苦笑)

しかも当の本人の新奈が今回「嫌じゃない」と言っちゃったからねぇ…。