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少女漫画と小説の感想ブログです

ハワイ帰りのオレと、オレの彼女を下の名前で呼ぶ親友。一体 何が…⁉

ココロ・ボタン(6) (フラワーコミックス)
宇佐美 真紀(うさみ まき)
ココロ・ボタン
第06巻評価:★★★☆(7点)
  総合評価:★★★☆(7点)
 

みんなでクリスマスパーティーをした後、古閑くんの家で二人っきりになって、緊張のあまり心臓がバクハツしそうになっちゃった新奈。「嫌なら何もしないよ」って、古閑くんは言ってくれたけど、チューとかギューとかなら全然大丈夫なのにって、思ってたら…。「キスくらいならいいのにな~って、顔してた」。バレてた。そして…。

簡潔完結感想文

  • 絵馬に猫。猫探しの中で見えてきたのは、この女が悪いやつじゃないってこと。ありがとな。
  • 呼び方。下の名前で呼ばれる その意味は⁉ 下の名前で呼ぶことを躊躇してたのは2人ともで…。
  • 名前が変わる⁉ 高熱の古閑くんを看病しながらイチャイチャしてたら彼の母 帰宅。り、離婚⁉

「君の名は?」「マイ ネーム イズ…」の 6巻。

『6巻』は名前の巻でしょうか。

『5巻』中にずっと描かれていた肉体的距離の問題は、
クリスマス回をもって、2人の間で答えを出した。

そんな安定した関係の中で、次に議題として出てきたのが、下の名前で私を呼んで問題。
その人をどう呼ぶかで特別な間柄が滲む。
肉体だけでなく様々な要素が恋人たちの距離を縮める。


作中の季節は移り変わり、新しい年を迎えた。
入学直後から新奈(にいな)と古閑(こが)くんの
「お試し」のお付き合いは始まったし、正式なお付き合い でも夏休み中だった。

多くの時間を過ごしているのに、まだ古閑くんのことを下の名前で呼べない。
その壁を乗り越えようと古閑くんの名前・衛人(えいと)の内、口に出るのは「えい」だけ。

一方で、新奈の名前を最初に呼んだ異性は古閑くんではなく彼の友人・速水(はやみ)。

速水の飼い猫の一匹の行方が分からなくなったと知った新奈は、
冬休み中、家族でハワイに言っている古閑くん抜きで、速水と2人、猫探しをする。

1日中、速水と共に猫探しをした末に無事に猫と再会した速水は、
帰国した古閑の前で「ありがとな ニーナ」と特別な感謝を示すのだった…。

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あのドSから感謝の言葉が出たことに驚く新奈と、ニーナと呼んだことに驚く古閑くん。

しかし新奈は長期の休みに ことごとく彼に会えない運命ですね。

あと速水と新奈の妹・葵(あおい)は なかなかお似合いだと思うが、
S同士だと上手くいかないのかなぁ…。


奈が無自覚にヒロインしているところが良いですね。

初詣に古閑くんと行きたかったのに叶わず落ち込んでいたら、
神社で速水と出会い、彼に急接近していくキッカケが無理なく創作されている。

新奈には下心や計算がない、本気の言動だけだから、
例え2人きりの速水の家に上がり込んでも、仕方がないと思える。

こうやって人の心に いつの間にかに上がり込んでいるのが新奈という人なんだろうな、と思う。

そんな新奈が2人の種類の違うSと関わっている様子はニヤニヤしてしまう。

ドS速水には冷たい仕打ちをされながらも体当たりで彼に協力していく様子、
(結果的には協力してもらっていたが…)、
そして古閑くんには「先回りのS」を発動させて「いじわる」な仕打ちをされながらも、
実は、新奈も古閑くんを翻弄している、という二重構造が面白い。

しかも3者が一堂に集う場面では、名前の呼び方で大きな波紋が浮かぶ。

これによって「下の名前で呼びたい」という問題が、
古閑の頭の中でも大きなウエイトを占めていく。

新奈は察せない人だから古閑が速水の「ニーナ」呼びにどのくらい衝撃を受けたかなど、
考えてもいないが、読者としては古閑くんが見せる微妙な表情、
そして彼こそ、新奈の声で自分の下の名前を読んで欲しいのではないか、と察する。

この話はオチも含めて、高水準なお話です。
誰も悪者にならず、悪意も無くて、でも心は落ち着かないという恋する心が存分に出ています。

しかも新奈だけじゃなくて古閑くんも、というところが素晴らしい。
これまで以上に応援したくなるカップルだなぁ、と思います。

『5巻』あたりから、本書の雰囲気と お話の内容が合致して、本当に良い内容になっているなぁ。


が、ラストは何と古閑くんが古閑くんじゃなくなる事態に⁉

古閑くんが風邪を引いて、新奈が古閑くんの家に行き看病する話から、
古閑くんの家族事情が語られ、そして古閑母が初登場するのが この巻ラストのお話。

ただし、古閑母が登場する際に発した言葉は、
「衛人っ 母さん もう 離婚する」

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最悪の初対面の新奈、プライバシーの侵害の古閑、衝撃告白がブレる母。三人模様の絶体絶命。

どうやら古閑くんの両親は、ラブラブ期と倦怠期が激しい夫婦らしく、
古閑くんにとっては日常茶飯事の光景みたい。

ただ、新奈にしてみれば親の離婚など考えたこともない事件で、
しかも古閑母の車の中から離婚届まで出てきたから心配は募るばかり。


そんなオロオロする新奈を見た古閑くんは、先回りの「いじわる」が発動して、
親の離婚が、自分の引っ越しや転校に繋がるという未来を示す。

ずっと古閑くんだと思って、古閑くんと呼んでいた人が別の苗字になるかもしれない事態。

まぁ彼の苗字が古閑じゃなくなったら、
衛人と呼ぶしかないかもね(笑)、なんて言ってられない。


しっかり者の古閑くんでも やはり扶養家族で未成年だと思わせられる話ですね。
親の意向が恋人たちの未来にも影響を与えかねない事実が辛い。


また、両親が揃っている場面で自分の母親に
「離婚…って 考えたことある?」という新奈に、
彼女がどうやって育ってきたかが分かるような気がします。

母によると夫婦関係が「実は綱渡り状態の時も あった」らいしが、
それを両親は感じさせずに子供に接したから、今の新奈があるのでしょう。

親に愛された人、親からまっすぐに育てられた人は、
その逆の人からすれば、醸し出す雰囲気で分かってしまうのだろう。

ココロ・ボタン 6 (Betsucomiフラワーコミックス)

ココロ・ボタン 6 (Betsucomiフラワーコミックス)