宇佐美 真紀(うさみ まき)
ココロ・ボタン
第11巻評価:★★★☆(7点)
総合評価:★★★☆(7点)
古閑くんと付き合って1年半―、指輪をもらって超幸せな毎日を過ごす新奈。
しかも、なんと古閑くんのご両親と一緒に食事をすることに!! これってもしかして、ついにプロポーズされちゃうの…?
舞い上がっていた新奈だけど、食事会の帰り道、古閑くんのお父さんに衝撃的な話を聞いて―!?
幸せ絶頂なふたりに突然訪れた最大のピンチ。超人気作、いよいよクライマックス目前の第11巻!!
簡潔完結感想文
- 不安と不調のその先へ。進路相談をしてくれた古閑母が体調不良。連れて行った病院での診断は…。
- 古閑父による先回り。知ってしまったけど彼氏に言えないことパート2。今回も遠距離移動で解決だ。
- 一緒に探そう、俺たちの未来を。少女漫画において失くしたアクセサリを発見したら、大団円の証拠。
「先回り」が得意の古閑(こが)くんが、唯一 先延ばしにしていたこと、の11巻。
本書における恋愛面でのゴタゴタは『10巻』の内で終了。
(表面上は あんまりゴタゴタしませんでしたが)
…と思いきや、『11巻』では古閑くんが新奈(にいな)に ひた隠しにしてきた衝撃の事実が判明。
更にそれが古閑くんではなく、第三者から知らされたから新奈の動揺は一層 激しいものに。
いよいよ高校生最後の1年の、自分と、2人の将来について考える時期。
自分だけじゃなく、一番好きな人と同じ時間をこれからも過ごすためには、どうすればいいのか。
最後にして最大の危機に、2人は どう対処していくのか…?
『11巻』は古閑家の秘密が色々と明らかになる巻です。
1つは古閑母の体調不良。
街中で偶然会った新奈と古閑母。
一緒にケーキをたくさん食べながら進路相談に乗ってもらい、
新奈が自分の心に光明が射す思いが湧き出たが、
その直後に古閑母がトイレで苦しそうに吐いていおり…。
母を病院に連れて行った古閑くんのことを心配する新奈に対し、
連絡をくれた古閑くんの声は思いのほか明るい。
この古閑家の おめでたい話題が一つの転機になります。
1つは古閑家の家族の在り方が大きく変わること。
もう1つが お祝いを選んでいた新奈に、古閑くんが予想外の贈り物をしてくれたこと。
店内で漠然とした将来を夢想していた新奈の頭の中を
古閑くんが「先回りのS」を発動したのか、彼は指輪を新奈に選び、
そして左手の薬指に はめてくれた。
相変わらず大事な言葉を言ってくれない古閑くんだが、
言葉ではなく行動によって自分の意思を示してくれる人でもある。
これは古閑くんの決意表明であり、
だからこそ、この後 議題に上る自分の将来のことを新奈に気軽に言えない理由にもなる。
新奈もその意味を汲んで「一生 大事にする」と応える。
後半の展開を考えると、渡してから紛失までが とても短くて、
物語としては、もう少し早い段階で渡した方が効果的かな、と思った。
が、早くに渡したら新奈は早くに紛失するだろうし、
古閑くんが敢えて新奈の左手の薬指につける意味も薄くなってしまうから、
やっぱり最適なタイミングで あったような気もする。
今回の古閑家の新たな生命の発生は、
本編では清く正しい交際を続けている新奈たちの代わりの未来の象徴でしょうか。
2人の将来の姿を予感させるような一場面なのかな。
にしても、同級生や少し年上のカップルではなく、
古閑くんの親で懐妊がなされるとは、古閑くんでも先読みできなかっただろう。
10代で約2年 交際中の自分ではなく、親の性が描かれるとは…。彼の胸中やいかに。
そして この騒動が、ニューヨーク勤務の古閑父を帰国させる理由になった。
古閑父の初登場です。
古閑一家は家族での食事会に息子の彼女である新奈も招いてくれた。
顔も性格も古閑くん そっくり な古閑父。
終始穏やかに進んだ会だったが、食事会の終了後、
新奈と2人きりになった古閑父は「先回り」して、
息子が話していない、彼の将来の夢を新奈に話してくれるのだが…。
この初登場にして、やや空気の読めない古閑父の言動。
これは実は、息子のための「先回り」だったりするのかな。
彼女を想うがあまり、問題を先延ばしにする息子を察知して、
お節介を焼くことで、息子に行動を促すという親心。
これが大人の先回り、なのかもしれない。
だが『10巻』の古閑の友人・速水(はやみ)からの突然の抱擁と同じく、
新奈は自分のキャパシティーを超えることは古閑くんに打ち明けられない様子。
ましてや今回は本人以外に聞いた本人の話だから尚更。
新奈の態度を不審に思っていた古閑くんが、
父が新奈に彼の夢を話したことを知ったのは新奈の一週間にも及ぶ勉強合宿の前日だった。
距離も、そして夢も気持ちも離れてしまった2人。
そんな時、新奈は古閑くんから贈られた指輪を紛失してしまい…。
そういえば古閑くんは将来の夢を秘密と答えていた場面がありましたね(『9巻』の お泊り回など)。
あと別離の危機にあるカップルが、
彼から贈られたアクセサリを失くすという展開に既視感があると思ったら『この作品』でした。
アクセサリの紛失 → 発見が、恋の危機と復縁になるのは少女漫画あるある ですね。
重要なことを新奈に話していなかった古閑に対して激昂する速水に
「大事だから言えないんだよ!」という古閑くんの気持ちも痛いほど分かる。
「先回り」できる古閑くんが、この事実を「先延ばし」していたのは、
いくら古閑くんでも、未来の確約が出来なかったのだろう。
自分の気持ちはいざ知らず、相手の気持ちや人生までも巻き込む、本当に一生モノの選択。
でも今回、「いじわる」な古閑くんが、一世一代の「ワガママ」を口にした。
新奈の、ではなくて、自分の要望を、これまで口にすることのなかった古閑くん。
そんな彼が、我を通してでも伝えたかった2人の将来の形。
父が新奈に「先回り」して伝えてしまう前に、先んじて古閑くんが渡していた指輪。
それが古閑くんが大事なことを口にした後に見つかるのは、物語の必然である。
それは2人が歩む これからの将来の象徴なのだから…。
ココロ・ボタン (11) (Betsucomiフラワーコミックス)
- 作者:宇佐美 真紀
- 発売日: 2013/12/26
- メディア: コミック