《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

禍福は糾える縄の如し。不幸を次々に演出しないと 幸せが際立ちません。

キミのとなりで青春中。(6) (フラワーコミックス)
藤沢 志月(ふじさわ しづき)
キミのとなりで青春中。(きみのとなりでせいしゅんちゅう。)
第6巻評価:★★☆(5点)
  総合評価:★★☆(5点)
 

血のつながらない両親のアメリカ転勤が決まり、平静を装いつつも不安を抱えていた慶太。
そのことに気付いた美羽は寂しい気持ちを隠し、「おじさんたちと一緒にアメリカに行って」と慶太に告げる。
そして、離ればなれになる前にデートに出かけた美羽と慶太は初めて二人きりの夜を過ごすことに…? ドキドキMAXの第6巻。

簡潔完結感想文

  • 自分の心よりも慶太の気持ちを優先した美羽。それでも切なさは込み上げて…。
  • いよいよ出発の日。結末は想定内。再手続きが大変そうだな、と冷静に思うだけ。
  • 全リセット。彼女としての自信を失ったり、二人の行く手を阻む者が現れたり。


するする詐欺の6巻。キミがとなりに いないとタイトル詐欺になっちゃうからね。

恋人の慶太(けいた)に、家族とアメリカに行ってほしい気持ちと、行ってほしくない思い、どちらも本当だから美羽(みう)はジレンマに悩む。
慶太もまた、感情に流され恋人を優先することで家族という土台を失う可能性を考え、美羽の後押しに甘えるようにアメリカ行きを決意するのだが…。

ここでは慶太の両親は日本に残ることを勧めていることが問題になります。
美羽としては渡りに船の提案ではあるが、そこに慶太と両親が血がつながらない家族だという背景があるからややこしい。
自分を日本に残すことは、自分が両親にとって不必要で、見捨てられたのではないかと考えてしまう慶太。
そこにあるのは両親を心から信じきれない自分と、そこから生まれる罪悪感。

この問題では慶太が先に涙を見せたからでしょうか、慶太の前では泣かないよう努める美羽がいじらしいです。
そして、今度こそ慶太を支える側になるのだ、という決意が見えます。
家族のように育った幼なじみで、今は大事な恋人よりも、本当の家族との時間を大事にしてほしいとは、なかなか高校生が言える言葉ではありません。

強がってはいても、やはり「となり」にいる残り時間を考えてしまう二人。
二人でデートに出かけられる最後の日、どうしても離れがたい二人は夜を迎えてしまう…。

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最後の夜 二人だけの夜
いよいよ、この時がやってました。
これ以上の絆はありませんもんね。
が、好事魔多しが本書の特徴。
徹夜で夜遊び、ならぬ夜釣りをして帰ってくる色気のない二人。
美羽に懸想するイエティからしてみれば、夜釣りよ今夜も有難う、って感じですかね。
そして、迎える出発の日…。
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慶太を笑顔で見送る美羽
正直な感想を書きますと、もっと感動できると思ってました。
連載をまたいで、巻をまたいで お送りしてきた お話の結末は、やっぱりね、という想定内の場所に着地します。
雑誌連載で読んでいれば別なのでしょうけれど、私のように完結した後に全8巻中の6巻目だと思って読んでいると感動が半減しちゃいますね。


また2回目の別離というのが、どうにも構造上の欠陥のように思えてしまう。
17年間ずっと一緒にいて初めての別離なら良かったが、思春期の3年間離れていて、1年足らずで再度渡米。
もちろんこの間に恋人という特別な関係になったから離れがたいのは分かるのだが、離れていた3年間という事実が横たわっていて上手く物語に没入できない。
ずっと一緒だったみたいに言うけど離れてたじゃん、とか、3年間離れても青春じゃんとか思ってしまうのだ。


また劇的効果を狙ってるのは分かるけど、慶太も土壇場に両親に思いを告白するのではなく、前日の夜にでも あの家での最後の夜に親子三人で語らって欲しかったな。
最適な答えはないけれど、今度は慶太の同行を喜んでいたご両親が可哀想に思えてしまう。


こんな物語最大のイベントでも最後に本当は相手を想い合っていたことを吐露するという構成が、通常のケンカ回と変わらないのが残念。
ノローグの美羽の教訓めいた言葉も、以前の内容とさして変わらないので、2,3巻辺りのケンカの後のモノローグと入れ替えてもさして問題がなさそう。
どうにも慶太や恋愛を全肯定する言葉が薄っぺらいんですよね。
それでいて同じ間違いをするから良い言葉も帳消しになってしまう。

そして何より「最終回チャンス」を逃したんじゃないかと思いますね。

次のお話では全てがリセットされているのも気になる。
リセットを象徴するように美羽は女子トイレで交わされる、慶太の引っ越しを安堵する声と、それならば慶太を美羽から奪略しちゃおうという声に不安に駆られて、再び空回り始める。
…って、絆は?と浅はかな関係に疑問を感じる。


続く美羽の父方の田舎に慶太やクラスメイト計4人で帰省する話はコミカルさが前面に出ているのだが、お話のラストが、どこかでみたような山の事故で辟易。
これって『4巻』『5巻』の修学旅行の時の美羽とイエティの立場が、慶太と親戚の子に変わっただけですよね。
しかも、恋人の座をかけて争って無茶をするという展開まで同じ。
これは鏡写しの構造で対になってる、と感心するのではなくて、発想が貧困なんですね、と思わざるを得ない。

強引に連載を継続するのならば、二人で乗り越えた関係性を醸し出すなどの変化が欲しかった。
慶太に重い設定を加えたのに、それを消化するだけという感じが惜しい。

しかも今巻のラストは、再びモノローグで
「私は思いもしなかった この先 嵐がまちうけているなんて…」
という不吉な煽りで終わっている。本当にこの煽り大嫌いです。
しかも、この後のお話を読んでも驚くほど大した嵐じゃありません。