《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

鬼監督に しごかれた成果が出て 下剋上寸前。この俺様が追い詰められてる だとッ⁉

悩殺ジャンキー 6 (花とゆめコミックス)
福山 リョウコ(ふくやま りょうこ)
悩殺ジャンキー(ノーサツジャンキー)
第06巻評価:★★★(6点)
  総合評価:★★★(6点)
 

空港のホテルで一緒の部屋に泊まることになったナカとウミ。でも、お互いに聞きたい事が聞けないまま、ドキドキの一夜を過ごした二人は…!? 一方、改めて実羽に別れを告げた堤だったが、千洋が実羽を好きだと知って心が揺らぎ…!?

簡潔完結感想文

  • ほぼ1か月ぶりの再会の夜はホテルの一室で2人っきり…。「海」としては成長せず?
  • ナカが世間に認められそうな気配。それを感じたウミの中に思わぬ反応があって…。
  • 前へ進むために断ち切ったはずの堤の美羽への想い。だが千洋が行動に出ると知り…。

一気に人気モデルになったウミに初めての下剋上の危機、の6巻。

『5巻』でもそうだったが、この『6巻』でも一番気になるところで、ページが尽きる。
単行本化を想定した連載。いよいよ人気作品だなぁと思う仕掛けです。

『5巻』のラストは1か月ぶりに再開した2人がホテルの一室に泊まるという展開。
今巻は年が明けるまでの1週間余りの出来事です。

にしても海(うみ)は直情的に行動する人ですよね。

再会の喜びに頭に血が上って、ナカに「オレも泊めろ 朝まで一緒にいる」と命令して、
ホテルの一室に入るまでは実質的なライバルの堤(つつみ)余裕の顔まで見せている。
(堤がナカを本当に好きだったとすると彼の衝撃やいかに)
そして、ベッドに倒れるように座ったナカの姿を見て、やっと血の気が引いて冷静になるという、
まぁ、いつものパターンと申しますか、俺様ヘタレという新ジャンルと言いますか…。

それが海の可愛い一面であり、
作者としては胸キュン場面を作りやすい性格で重宝したいだろう。
常識的に考えたら出来ないことを乗り越えてくれる便利な俺様な性格です。


というように、一番余裕がない生き急いだ生き方をする海に、息苦しさを生む新たな事態が起こる。

それが、ナカの躍進。

好きな人の活躍は本来ならば嬉しいこと。

しかし「ウミ」としての目標は過去に降ろされたブランド「碧(へき)」のモデルにもう一度選ばれること。
そして、その達成後には「海」としてナカに告白することを心の中で決めていた。

だが、予想以上に早くナカは急成長し、業界内でも評判になる。

ナカと堤の1か月に及ぶ沖縄での撮影は、そんな描写はなかったけれど、
実は密着取材されており、その模様がテレビ放送されるらしい。

撮影の集大成である写真集は事前評判がよく、
ウミの耳にもナカの将来性を楽しみにする声が届いてくる。

ナカに可能性が生まれるたび、ウミの心は揺らぐ。

それは同業者としての嫉妬。
いつまでも男として彼女に好きと言えないかもしれないという焦燥。
2つの顔の2倍の感情に翻弄される海。

下っ端だと思っていた人からの下克上。
ウミとして、俺様としてのプライドが今、試練の時を迎えます。

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海としてもウミとしても ナカの隣にいることを望む 欲張り・頑張り屋さん。
もちろん努力もしたのだろうが、ひょんなことからモデルとして活動し始めて以降、
右肩上がりに仕事を増やしていった 海=ウミ。

初めて自分の立場に危機感を覚える存在が、まさかナカになろうとは海も思わなかっただろう。

離れていた1か月の間、ウミも成長できるように奮闘してきた。
しかしナカのポテンシャルが堤によって引き出され、自分よりも早く成長していたとしたら⁉
ウミの焦りは相当なものに違いない。

そしてウミとしては成長したいけれど、
海として肉体が成長することは望まない複雑な心境もある。

以前も書きましたが、海の心身への負担はいつか心身を蝕みそうだ。

「お前の場所はオレの隣だけだ。」

ナカの隣にいられる自分であること、
海とウミ、願いは一つだが、そのハードルは高くなっていくばかりだ…。

今回の、海がナカに感じる嫉妬や焦りは、
かつてカメラマンの堤が、モデルで恋人の美羽(みはね)の活躍で感じた焦燥感に似ているかもしれない。

そしてもしかしたら、これまでの堤の海を叱咤する言葉は、
やがてウミがナカに追いつかれることを見越してだったのかもしれません。
堤 鬼監督説を採ると、挑発するような言葉も彼らの成長の種になるよう仕込んだ言葉という可能性もある。
(まるで見当はずれの推論かもしれないが)


さて、作中で刻まれるカウントダウンによって躍動感を生んでいる本書ですが、
帰京までのカウントダウンが終わったと思ったら、
本当に、またカウントダウンが始まった。
ワンパターンも極まったなと唖然としてしまいました。

今回は年明けとイベントが怒るまでのカウントダウンと二つの意味がありますが。
さすがに、もうちょっと違うお話の作り方は出来ないものかと辟易する。


そして1巻につき1回は誰かが体調不良になっている気がする。
スケジュールが忙しかったり、プライベートな悩みなどで心身を消耗してるんだろうけど、
弱らせて本音を語らせるパターン、熱で予想外の行動をするパターンも飽きてきたところ。

今回もラスト付近で高熱で弱っているナカ代わりに開けたカバンの中に、
なぜか持ち歩いている(不自然)「碧」の封筒を海が発見して、海が動揺するという場面がある。
なんだかとっても作為を感じます。

そしてモデルという職業を扱いながら、スタイルの維持とか食事の管理、
体調の管理といった描写は一切ないんですよね。
ただ食事の管理などは読者に悪い影響を与えることもあるので、省略してるのかもしれません。


今巻から、もう一つの恋愛問題も本格始動。
前へ進むために、忘れるために、元恋人・美羽と距離を置いた堤。
だが、そのことで長年 美羽に密かな想いを寄せていた千洋(ちひろ)が自制を解く。
自分から手放したはずが、誰かに奪われると思うと心が揺れ始める堤。

こういう展開になると堤のナカへの想いは結局、
その向こうに、かつての美羽を見つけたからでしょうか。

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堤の好みのタイプ。モデル体型で天然、どんな時も食らいついてくる人。
マイペースな自分を優しく包み込むような人が好きそうですよね、堤は。
ナカと美羽が天然タイプでどこか似ている偶然ではないようです。


「のぞいてみたくて しかたない」…
中学生の凪(なぎ)は穴のあいた傘からアパートの上の階に引っ越してきたトヨタの部屋を覗くのが趣味で…。

覗きから始まって、ほのかな恋心、もしかしたら恋人がいるかもしれない、
盗難事件に逃避行、など色々と詰め込んである作品。
それら複数の要素をまとめる力は初期の頃から備わっていたようですね。
そして作者の絵の上達具合が如実に分かる作品でもあります。

このお話は7月1日(月)から始まり10日後の7月11日(木)で幕を閉じる。
今日は2020年7月10日。惜しくも1日ずれている。