《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

ケンカして友情を深める少年漫画。ケンカして愛情を深める少女漫画。

キミのとなりで青春中。(4) (フラワーコミックス)
藤沢 志月(ふじさわ しづき)
キミのとなりで青春中。(きみのとなりでせいしゅんちゅう。)
第4巻評価:★★☆(5点)
  総合評価:★★☆(5点)
 

幼なじみの慶太(けいた)とカレカノになってから次々と恋のライバルが現れ、そのたびに自信をなくしていた美羽(みう)。
けれど、いつも変わらず自分のことを想(おも)ってくれる慶太に心の絆(きずな)を感じていた。
そんなある日、慶太と七瀬(ななせ)が体育館裏で抱きあっているのを目撃してしまった美羽は…!?

簡潔完結感想文

  • 100回ケンカして100回仲直りするつもりの二人の、6回目ぐらいのケンカ。
  • サプライズがまたもや失敗する美羽。それでも喜んでくれる慶太。2回目。
  • 修学旅行の雪山に「イエティ」登場。売られたケンカは買う主義なので。


新規のネタが収録できないのなら、総集編や再放送で乗り切れ、の4巻。

少女漫画に既視感は付き物。
好きだ嫌いだ にバリエーションは それほどないだろう。
ただ、他作品ではなく同じ作品内での既視感はいただけない。
そのお話の展開 丸まる前の巻でやりましたよね?とは思わせないで欲しい。


それが強く出ているのが、中盤の慶太(けいた)の誕生日回。
主人公の美羽(みう)は幼なじみである慶太と恋人同士になったにもかかわらず、些細なケンカは絶えず恋人の雰囲気が醸し出せないことに悩んでいた。
誕生日には特別感を演出するため特技の手料理でお祝いすることに決めた。
料理の下準備をし、ケーキも手作りしたが、当日、慶太の家ではご近所中の人を集めての飲み会が開かれてしまい、慶太だけを祝う雰囲気ではなくなった。
さらに隣家の自宅の冷蔵庫をご近所さんに荒らされてしまい、慶太のための料理も食べられてしまった…。
落ち込む美羽と食べ散らかされた料理を見た慶太は何かを察して…。

良い話、良い話なんですが、美羽のサプライズ失敗話は『3巻』のクリスマス回でもやったばかりですよね。
あの時は高価で買えなかったマフラーに似た物を手編みしたのに、アメリカ時代の慶太の友人女性・アレックスがそのマフラーをプレゼントしてましたね。
でも慶太は「いつだって オレが となりにいてほしいと思うのは 美羽だけだから」と美羽の手編みのマフラーの方を巻いてくれました。
そして今回は「美羽がオレのためにガンバってくれたの めちゃめちゃ感動したよ」と言ってくれます。
僅か1巻前のお話です。
お話の骨格が全く同じです。

しかも前回はアレックスが慶太に恋心を抱いているので、マフラー選びに二人の恋人としての絆をはかることが出来たのですが、今回はそれもなし。
これは劣化コピーとしか言いようがありません。
どうやら些細な行き違いを繰り返しても仲直りできる関係性、らしいが…。

f:id:best_lilium222:20200806154053p:plainf:id:best_lilium222:20200806154030p:plain
この2人なら本当に100回ケンカしそうだ…。そんな信頼感だけはある。

この辺りで全巻を通じての共通のテーマとして、幼なじみ・一番近い存在・家族愛が設定されていることが徐々に判明してきたが、恋愛における描写は堂々巡りの印象が否めない。
主人公の美羽(みう)が猪突猛進して、二人の仲が一時危うくなるが、恋人・慶太(けいた)の広い心に包まれて絆を感じる、という定型のパターンで話は進む。
しかも絆というよりは美羽を甘やかしている慶太の大きな受容力といった方が的確だろう。
後半のお話では、慶太が甘やかしを自覚している描写もありますが、美羽はあくまで能天気。


そんな美羽に成長を促すのが、後半の修学旅行編だろうか。

スキー合宿でもある修学旅行に突如 現れた金髪碧眼の男性。
何と彼は上述のアレックスの兄・マイケル こと 通称・イエティ(由来は尊敬する徳川家康)。
アレックスが帰国後、傷心でふさぎ込んでしまったことに怒り、慶太へリベンジにやってきたという。

慶太の客室に美羽が一人でいる時にイエティから内線電話が掛かってきて、電話先にいるのが慶太だと思い込んだイエティは慶太を呼び出す内容を告げる。
自信を持って慶太のとなりにいるために、物事から逃げないと決めていた美羽は、イエティの慶太への挑戦を受けることにする。

f:id:best_lilium222:20200806154706p:plainf:id:best_lilium222:20200806154700p:plain
人違いと知りながらアレックスの兄の宣戦布告。なぜか それを受ける美羽。

…えっと、なんで?
人違いだと知りながら勝負を申し込むイエティもイエティだが、受けて立つ美羽も美羽だ。
逃げないってそういうことじゃないよね。
やっぱり頭悪いよね、この子。
この時点で嫌な予感しかしないよね。
そしてベタな漫画だから、その予感は当たるよね…。


『3巻』でも思ってましたが、アレックスと慶太のアメリカンな会話(ウィットに富んだ、切り返しの上手い、とにかくアメリカン!)が好きです。
やっぱり著者には外国人ノリがマッチしている。
そのせいか、この兄妹、この後も何かと物語に絡んできます。