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少女漫画と小説の感想ブログです

口さがない 噂 好きな人たちを黙らせるためには 口ふさがないとね。チュッ☆

悩殺ジャンキー 4 (花とゆめコミックス)
福山 リョウコ(ふくやま りょうこ)
悩殺ジャンキー(ノーサツジャンキー)
第04巻評価:★★★(6点)
  総合評価:★★★(6点)
 

学園祭でのショーの後、学園内では生徒会長・梶原海の人気が急上昇。しかし、学園の外ではウミ=海疑惑が持ち上がっていた! そんな中、「ジャンク」のモデルからナカを下ろす話が持ち上がり、カメラマンの堤は自分の写真集にナカを使いたいと言い出して…!?

簡潔完結感想文

  • 海が好きだと自覚してから感情が制御不能のナカ。一方、余裕に見える海も実は…。
  • 秘密を守るためとはいえナカへの堤の行動で動転したのは海。余裕をなくした末の行動は…。
  • ナカの仕事と心の隙を突き、堤が長期の仕事を提案する。恋を抱えたまま離れられるか⁉

『2巻』の再放送?と思わずにはいられない 4巻。

今巻は再び二人が個人として仕事に邁進することを中心に描いています。
二人の仲を引っ掻き回す役割も以前と同じくカメラマン・堤(つつみ)。

ナカに興味と可能性を抱き続ける堤が、ナカに自力で前へ飛ぶようにと発破をかける。
でも撮影中の堤のナカへの注文も私には以前と同じ内容に思えてしまう。

大きく違うのは海(うみ)とナカ 2人が2人とも互いに好意を抱いていることを自覚していること。
心情的には離れがたく思っている中で、仕事に没入できるかという問題が描かれる。

この要素をどう捉えるかで評価が『4巻』変わってくると思います。
私個人としては、『2巻』のアレンジ曲のように思えた。
アレンジ曲を1曲と数えるアルバムに出会った時の、あの落胆に近い感覚です。
読みたかったのは、オール新曲のアルバムなのだから。


『3巻』のラストで海への気持ちに気づいてしまったナカ。

そんな海は学園祭の謎の男性モデルの正体として、学校中の注目の的になる。
学校と仕事、公私ともに増す海の存在感にナカは平常心を喪失中。
そして今度はナカが、ウミと上手く一緒に仕事が出来なくなってしまう…。

2人の不器用な恋心は面白いのだけれど、上述の通り堂々巡りという感じもする。
そしてナカの不器用さを象徴するモデルとして上手く笑えないという設定も、
1年以上モデルを経験してきたナカには段々と不自然に思えてきます。
まだ、そこで立ち止まってるの?と堤のように檄を飛ばしたくなりますね。

海(ウミ)のことを意識するあまり、雑誌のインタビューは中止になり、
その連鎖反応として、ウミとナカ2人の大きな仕事であったブランド「ジャンク」からナカだけが外れることを打診される。
一つの仕事での態度が次に繋がる、繋がらないことはあるだろうが、流れがちょっと雑。

まぁ、もともと読切短編のラストでウミのコネで採用されたという設定だから、
長期連載においては邪魔な設定になりつつあったのだろう。
流れはともかくナカの排除も納得できます。
そのお陰で新キャラの投入もスムーズに進みました。

そんな余裕のない毎日の中、出会ったのが学園祭でお世話になったデザイナーとカメラマンの堤。
学園祭以降、海 = ウミという噂が立っていて、ほろ酔い気分の大人たちが海を詰問する。
絶句して肯定にとらえられかねない状況を救ったのは、意外にも堤。

ただし、その方法がとんでもない。
ナカにキスをして、海のなかの「男」を呼び出すというもの。
海とウミのイメージが遠ければ遠いほど人は勝手に納得するだろうと踏んだ、らしい。

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ウミの秘密を守るために、海に一番 酷な仕打ちをする あくどい堤。
このシーンは目が点になりましたね。
そして堤にナカのキス経験を勘案するような優しさがあるとは思えないので、
ナカのファーストキスが堤という可能性も十分あったわけですね。
事故とはいえ『1巻』でキスしといてよかったね、と強く思う。
もしファーストキスだったらナカは一生 笑えない身体になってしまっていたかもしれません。

そして男装 or 女装がバレそうになるというのは、性別を入れ替える漫画のお約束の流れですね。
秘密流出の危機それだけで、テコ入れ、読者への強い「引き」となりますからね。


本書では(ほとんどの男の)主要キャラは、まず悪役っぽい動きをするのがお約束。
関西弁で大らかな千洋(ちひろ)も。ウミナカと知り合う時は、少し悪役っぽい言動をしながら本格参戦です。

海の秘密を握っていることをほのめかし、自分の映像作品に2人を出演させる千洋。

そんな千洋が撮った映像と、堤のナカへの提言はリンクしていますね。

2人が仔猫のようにじゃれあっている映像と、
「…このまま じゃれ合って終わるか 抜け出て一歩踏み出すか」という厳しいご意見。

そしてこれが、ウミナカと千洋・堤の距離感の差でもあるように思えます。
千洋はじゃれ合いながら2人を見ている。
堤は一歩距離を置いて二人を見ている。
「お兄さん」たちの接し方の違いです。

ちなみに千洋が握っていた弱みは別にあって、
海=ウミを知らなかったのに海は自爆して、秘密を洩らすというとんでもない失態を繰り広げる。
こんな大失敗、ナカに見られなくてよかったね。恥ずかしさ倍増だもんね。

海=ウミを知っていることが『悩殺・八犬伝』の仲間の証かもしれません。
(だから杏珠(あず)は仲間になれないのかも)

そして実は余裕のない海は熱で朦朧とする中、堤への対抗意識からナカにキスをしようとするが…。

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他の男の痕跡を上書きしたがるのが(少女漫画の)男たち。
そんな二人はレベルアップするために別離を決意(2回目)。
エレベーターのドアが開いて、別々の方向に歩き出す様子は象徴的なページです。


以前も書いた通り、本書では期限を決めたカウントダウンの描写が多い。
今回はナカは堤と沖縄写真撮影1か月。

かなりの長期間で、堤はじっくりとナカを自分色に染めようとする。
そして海は果たして長期の別離に耐えられるのか。

堤のナカへの苛立ちは、ナカを独占したいというよりは、
その向こうにある過去の自分と恋人との過ち、
そして今度こそ同じ過ちを犯さないようにというトラウマの払拭ですかね。

初読時にはパワハラと長期拘束でナカのことを狙っているのかと思いましたが
再読して分からなくなったのが堤の心情。
再読だからこそ、ナカへの好意という可能性を消しているんですが、
どうにも好きという意外に説明がつかないような気もしてきます。


そして堤の元恋人で、実は初登場は『2巻』で1ページ出ていた 美羽(みはね)も本格参戦。
『悩殺・八犬伝』の5人目の仲間ですね。

美羽は最初っから悪役っぽさはありません。
とてもコネと権力を利用する杏珠(あず)のお姉さんとは思えない天然っぷり。

ただ美羽と千洋のビジュアルが似通いすぎて混同してしまう。
話の流れで どちらか分かる場合は良いが、扉絵とかだと分からないことが多い。
髪の色や長さに変化がつけられなかったのだろうか。
男女双子は別に出てくるのに、こちらの2人も双子に見えてしまう。