ふじもとゆうき
キラメキ☆銀河町商店街(キラメキ☆ぎんがちょうしょうてんがい)
第02巻評価:★★★(6点)
総合評価:★★★(6点)
都会のはしっこ、銀河町商店街。ここには恋とトキメキがいっぱい! そこで育った幼なじみ6人が繰り広げる楽しさとせつなさ120%の下町★青春ストーリー。ハートフル読み切り『STAND BY YOU』も収録。
簡潔完結感想文
- 本誌への引越しにより高校生になる幼なじみたち。収録3話は『1巻』の焼き直し??
- 『2巻』は まだ商店街が主役。登場した人たちが後に再登場すれば尚 良かったんだけど。
- 商店街の日常の中に、恋愛要素も少しずつ含ませる。他4人の恋は この時点では未確定?
2年が経過し、約束の20、30年後が また少し近づいた 2巻。
掲載誌が「花とゆめ」本誌に移籍して、登場人物たちの年齢も高校生に引き上げられた。内容的には中学生のままでも問題がないように思えるが、こうして彼らを大人に近づけることで描ける展開もあると考えたのだろう。現実と同じ速度とまではいかないが、作中で彼らが成長していくことが、6人の幼なじみの絆が継続する奇跡へとリンクしていく。
ただ移籍したこともあって、ご挨拶代わりに最初の数ページに作品の自己紹介がある。その上 本書の場合 最後の数ページを大きいコマ割りとポエム風の文章が続くから、本編部分が少なく感じられた。
『2巻』の時点では まだ物語の主役は商店街である。だが商店街を中心とした話には幅がなく、意図的にあるにしても『1巻』の内容の重複を感じる部分が多かった。また物語の前半でクローズアップした店が その後の物語に出てこないのも残念なところ。食事時になったら あのお弁当屋に行こう、誰かの祝いがあれば あの花屋に花束を頼もうなど、商店街の広がりが感じられれば良かったのだが、基本的に1回きりの登場である。作中に時間経過があるなら、少しずつ 商店街の人々の成長や変化を滲ませられたら一層 良かったが、目の前の物語に集中してしまうのが残念なところ。特に作品の後半は恋愛がメインになり、幼なじみたちの心の問題と関係性ばかりに焦点が当てられ、舞台が商店街である必要性が希薄になってしまう。
商店街を主役とするのなら、幼なじみ男女6人の親が経営する それぞれの店舗の話も読みたかった。唯一、イバちゃんの店の事情だけは描かれているが、その他にも5店舗も描くネタがあるのだから、それぞれの内情や後継者問題など描ける部分はあっただろう。前半は個人回と共に店の紹介をして、読者が商店街に愛着を持つ方針にして欲しかったなぁ。
この頃は1話完結で毎回 前向きな結末で終わる。これで読書中に絶対に嫌な気持ちにならない安心感はあるが、似たようなテイストで終わる話が多いので飽きてくるのも確か。中盤から作者が物語を しっかりと動かしたのは賢明だと言えよう。
また1話完結でも『1巻』のラストの富士(ふじ)ばぁ の話を超える作品が無いのが惜しい。雑誌の移籍により1話辺りのページ数も少なくなるし、総力戦の様相を呈していた富士ばぁの話は二度も出来ないという事情もあろう。
『2巻』から高校生になった幼なじみたち。中学までは同じ学校だったが、高校はミケとクロが一緒なだけで他4人とは違う高校(他4人も全員がバラバラの学校なのだろうか)。中学進学以上に生活がバラバラになってしまったが、中学生の時に絆を復活させているため、2年後の今も変わらない関係性でいられているようだ。そしてヒロインであるミケは、白泉社らしい天然鈍感最強ヒロインなので そんなに変わらない。
冒頭は結婚を控えた銀河町商店街の花屋のトラブル。これは『1巻』1話の幼なじみたちが入り浸るバーのマスターのトラブルと犯行も動機も ほぼ一緒。1話を踏襲している部分も少なからず あるんだろうけど、商店街事件簿&探偵団の活躍のような構成にすると話が似てしまうのだろう。
続いてはミケとクロの高校進学と進学後の話。これも『1巻』の2話目がミケとクロの恋愛も含めた関係性の話だったように、『2巻』2話目も同じ内容になっている。
中学時代、進学する高校を決める際、同じ高校でもミケは教師に志望校の変更を求められ、クロは余裕で合格圏内という違いがあった。一度は泣いて諦めようとしていたミケをクロが引き上げた。ミケはクロと同じ高校に進学することだけを考えて勉強を続け、その結果、同じ学校に進学できたという回想が挿まれる。
そして常識外れの身体能力を持つミケとクロは進学した高校で、様々な運動部系の部活から勧誘される。店の手伝いがあるから部活には所属しないと伝えても、部活の勧誘は商店街の中まで続いていた。
今、ミケはクロと同じ立場でいられないことが怖い。クロに彼女が出来ることでの別離が怖い、そして どちらかが部活加入を命じられる勝負に負けるのが怖い。双子のように育った自分たちなのに、実は違う人間で違う未来を選ぶということをミケは痛感し始めていた。成長したからこそ見えてくる真実だろう。特に自分たちは男女で、クロに大切な人が出来ることは関係性の消失を意味するかもしれないのだ。
この話の結末も『1巻』2話目と同じ感じ。これから違う部分が出てきても、それでも隣にいるのは自分だという決意と希望がミケの中に生まれる。
3話目は新しく商店街に加わる弁当屋の一家を助けるミケたちの話。当初は幼なじみ6人で手伝いをしようとしたが、他の4人は それぞれに用事があり、集まらなかった。だが開店当日、昼時になり手が回らなくなった厨房を、幼なじみたちが集合して乗り切るという彼らの絆が見える。
だが、この弁当屋には もう一つ問題があった。それがお弁当屋の一人娘のこと。両親の手伝いをするミケたちにも悪態をつき、そして この町に馴染もうとしない。
そんな彼女をミケが商店街中を案内する。これも『1巻』3話の話ではないが、商店街を端から端まで歩くと、色んなことに出会い、そして心が上向きになるという話である。こうしてミケに心を許した お弁当屋の娘は引っ越した悲しさをミケに話し、涙を流す。これまで胸に抱えていた自分の感情と向き合った彼女は、前を向いて歩き出す。
「STAND BY YOU」…
転校して離れ離れになってしまう五木 佳代子(いつき かよこ)と桃代 小鞠(ももしろ こまり)。だが佳代子の転校先は「未来」だった。
作者のデビュー短編も お隣同士の幼なじみモノだった。ベタな友情を描いているが、引越しの原因となる発想が面白い。ただ、そのSF的発想を追求すると色々と瑕疵も見えてくる。まずは両親が2日後に未来に戻らなくてはいけない理由を知りたいところ。そして未来に戻る技術を獲得したのなら、過去にも戻れるのではないか。根幹たるタイムマシンを巡る話を一切 無視して、ただの引越しの話になっているのが消化不良だ。
ただ必要以上に泣かない小鞠の様子を入念に観察してみると涙腺が刺激される。