《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

主人公の行動に疑問を持つこと 作者を非難することは許されておりません。

レンアイ至上主義(2) (フラワーコミックス)
水波 風南(みなみ かなん)
レンアイ至上主義(れんあいしじょうしゅぎ)
第2巻評価:★★(4点)
  総合評価:★☆(3点)
 

碧樹と結ばれた世莉。いよいよラブラブ生活スタートです。が、生物教師の九条先生が世莉にライバル宣言!世莉は、自分が碧樹とつりあっているのが不安になってしまいます。一方、九条先生は、2人の仲を裂くためいとこの宙を使って…!?

簡潔完結感想文

  • いよいよトンデモ漫画の本領発揮。登場する ほとんどの男はみんなケダモノです。
  • 別れさせる為には犯罪も厭わない。延々と続く主人公の受難。読んでて楽しい?
  • 媚薬を飲んでいないのにどこでも発情する主人公カップル。だから同情されない。

主人公カップルが貞操を破ったら、なぜか学校周辺の登場人物たちまで暴走する2巻。

作者が描きたいことは『1巻』で描き切った心境なのか、これ以降は世界観や倫理観など脳内のストッパーは取り外して、ただ過激さだけを追及したような気分の悪くなる展開が続く。

これ以降は主要登場人物のほとんどは犯罪を犯します。
そして本書の中の男という生物は女性を乱暴に扱う動物として描かれる。
そしてほとんどの場合、被害者は主人公の世莉(せり)。
本当に作者が描きたいテーマなんてないのだと痛感させられる展開の連続。
1話が「初恋」から始まった甘酸っぱさはどこへやら、2巻で早くも毒々しい物語に変貌した。


学校の生物教師・九条によってカップルの仲を引き裂かれそうになる世莉と碧樹(たまき)。
徐々に二人の時間を奪おうとする九条先生だったが、生ぬるい方法では二人の交際が終わることはないと知った九条は手下である協力者と共に強硬な手段に出る。

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敵キャラが現れては主人公に乱暴するパターンの始まり
今巻の中盤までは遠回しな工作で世莉たちのすれ違いの演出だったが、それ以降はただの犯罪です。それもトンデモ犯罪。
相手に針を打ち込めば気絶し(コナン君か!)、薬を飲ませれば性欲は抑制できなくなり身近な女性(世莉)に襲い掛かる。
さらにはその暴行シーンはカメラで撮影され翌朝に学校中にばらまかれていた!
そしてそのことにショックを受けた世莉が保健室で横になっていると、男子生徒に襲われそうになる…。


もう、本当にとんでもない展開です。
世紀末のすさんだ学校じゃないんです、2000年代の普通の高校での出来事です。

この時点で常識のある読者ならば、こんな学校から逃げ出すべきだと思うでしょう。
2日で2回も襲われそうになっても逃げ出さない世莉に疑問を感じるでしょう(そしてこの後も異常な学園生活は続く…)。

でも作者はそんな疑問を許しません。
『5巻』の作者コメントにあるのですが、性的暴行を受け続ける世莉の行動を非難するお手紙を作者に送ると、そういう発言が「セカンドレイプなのです!」とお叱りを受けるみたいです…。
以前、セカンドレイプを題材とした著作があるので作者には一家言あるらしいのだが、そもそも主人公のレイプ未遂を何度も描くことは問題じゃないのだろうか。
最終巻付近で少し緩和されますが、作者の若さと自意識の高さが苦手です。


そして、この登場人物たちという名の犯罪者集団、ほとんど罰を受けないんですよね。
物語からは退場するけれど、本人たちは罰せられず別の道に進んだり、変わらず学校生活を送ったりするだけ。
更にはとんでもない性犯罪を犯してから、純愛を告白するという間違ったパターンがまかり通っています。
その裏には恋情があった、これで主人公たちの絆が更に深まったと全てを帳消しにして、次のお話に進むのがまたやり切れない、やり逃げの手法だ。


残念なのは九条先生の使い方。
作者に長期連載の展望がないから仕方がないが、九条先生はラスボスに持ってきても良かったのではないか。
男性に振り回される中で、初の女性、それも大人で年上のライバルという方が新鮮だったかも。
まぁ、本当に行き当たりばったりで描いてるんでしょうから真面目に論じてもしょうがないですけどね…。
爽やか空手ボーイだった宙(そら)くんも2巻に入ったらとんでもない設定背負わされてしまいましたね。


本来は性被害に遭い続ける可哀想な主人公なんだけれど、主人公を一向に好きになれないのも問題だ。

上述のように、性犯罪はびこる学校から逃げ出さない世莉も強いんだか愚かなんだか分からない。
空手の設定も世莉に関しては中途半端に扱われていて、たくましいはずの世莉が男性に組み敷かれるというのは女性は被害に遭い続けるという構図が確定しているようで悲しい。

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この学校は平成ハレンチ学園だということが判明する
だけど被害者であるにもかかわらず学校側から謹慎を言い渡されたのはお気の毒だが、その謹慎中に碧樹と遊び惚けるのには呆れた。
この辺が脳内お花畑なんですよね。
世莉が傷ついているように見えない時点で作者の描き方は間違っているのではないか。

そして謹慎中にボーリング場のレーンで勝負をすることになり、またもや罰ゲーム制を提案する碧樹。そういう性癖なんですかね?
罰は二人のスコア差の秒数だけキスをするというもの。
キスしていて時計が見られないからって2分弱のはずが10分以上続けるという珍プレー。
世莉の体内時計は鈍いという描写なのか?
それとも公衆の面前だと感覚が違うと言い出す世莉が描きたかったのか?
そういう好き者と勘違いされるような描写があるから同情されないのに…。

そして主人公たちもまた、どこでも発情してしまう部類の人々だ。
神聖な道場だろうが、カラオケボックスだろうが、学校ならどこでも事を致す。
自室やホテルの場合が格段に少ない。
まるで お金のないヤンキー行動そのもので主人公たちを決して好きになれない。
学校やその生徒の頭の悪さからして理数科のエリートという碧樹の設定も怪しいものだ。


世莉は現在進行形の問題には嫉妬するけれど、さかのぼり嫉妬はしていない。
碧樹が女性の扱いに慣れていることへの言及もない。
初めからオジョーズだったんですかね。