《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

主に少女漫画と小説の感想ブログです

ハツオット。交際0日のお見合い結婚のお話として読める説。

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桃森 ミヨシ(とうもり みよし)
ハツカレ
第2巻評価:★★★☆(7点)
  総合評価:★★★☆(7点)
 

夏休みも終わり、2学期が始まったチロ達。通学デートにイブシが乱入して以来、朝はいつも3人一緒。2人で会う時間を作ろうと、チロは放課後、ハシモトくんを駅で待ちぶせしますが!?

簡潔完結感想文

  • ハシモトくん発熱。家にお見舞いに行くチロたち。今後は男女4人組の団体行動。
  • 男子校の文化祭に来たチロたち。学校でのハシモトくんは頼りがいありそう。
  • イブシはカメラが特技。文化祭でイブシが撮ったチロの写真が波紋を起こす…。


声にならない声が写真を通して浮かび上がってくる2巻。

そういえば本書って(一昔前の)お見合いと、その後の幸せな結婚生活みたいな内容ですよね。
本来なら『1巻』の感想に書くべき内容ですが今更ながら思いついたので書き連ねます。
会って間もなく結婚を申し込まれたけれども、嫌悪感もないのでお話を進めていく過程で徐々に相手のことを知っていく。
これまで少しも同じ環境に居たことないので、彼の利き腕さえ知らない。
でも相手をよく観察していき、その人の人となりに惹かれていく自分に気づく。

ここで重要なのは結婚生活で相手の嫌なところを探さない点ですね。
知らないところ、自分とは違うところは数多くあるけれど、好きなところ、優しいところを出来るだけ多く見つけて生きていく。
そういう女性側の視点から語られているから物語に清涼感があると思われる。

この結婚を交際に置き換えれば本書にもよく当てはまる内容ではないか。
まぁお見合い結婚説では、なんで結婚しているのに毎朝の数分だけしか会えないのかとか矛盾というか整合性に欠ける部分もあるんですけどね…。
100年前の女性ではないのでチロが常にハシモトの3歩後ろを歩いている訳ではないが、言いたいことを伝えながら、時には行動として表しながら、彼との距離を縮めていく様子が奥ゆかしさを感じる。


さて、作中の「赤面率」の高さが売りの本書だが、『2巻』の冒頭7話のハシモトくんは違う意味で顔が赤い。
ハシモトくん発熱で倒れる。
熱を出していることを気が付けなかったこと、そんな熱の中でも自分と会う時間を捻出してくれてたハシモトに自分の至らなさを痛感するチロ。

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熱で少し幼稚化しているハシモトくん
そして毎朝、駅のホームで会っていたハシモトが居ないということは、イブシと二人っきりになる。
彼氏の居ぬ間に「ほかのオトコノコと2人きり」なんて「うわきしてるみたい」と罪悪感を覚えるチロだったが、イブシからハシモトの代わりに荷物持ちの役目を仰せられ少し安堵するチロ。
これは空気を察したイブシの優しさですかね。
乱暴な振りをして繊細なのがイブシ。
彼の人気が出るのは必然かもしれません。
片想いというのは少女漫画における正義であり美学みたいなもんですから、それを貫くイブシに肩入れするのは当然ですかね。
ましてや主人公たちは声を掛けてすぐ交際に発展したカップルなんで。
そして今巻から片想いが始まるのは…。

女子校に侵入したイブシと、親友・ちゃこちゃん を連れ立ってハシモトのお見舞いに行くチロ。
この辺りから、ちゃこちゃん も加わって4人での行動が多くなりますね。
チロはイブシに惹かれていく ちゃこちゃん の世話を焼くつもりで4人での行動を始めますが、チロの知らないところでの四角関係が勃発している。
ちゃこちゃん もまた異性に慣れてはいないとはいえ、姉御肌的なところがあり、イブシの「口撃」にも怯まない豪胆なところがあります。
それでいて恋する乙女の要素も持っているので、彼女の姿に肩入れする読者も多いかと思われる。

ハシモトはチロがお見舞いに来てくれたことを喜ぶが、イブシの存在にどうしても嫉妬を隠せない。
チロがイブシと好きなものが一緒なだけで、幼稚園が一緒なので昔を知ってるというだけで、共通の話題だから彼の話をされるだけで、どうしても心は波立つのであった。

そんな彼の微妙な心理を理解し、自分からハシモトに抱きつくチロ。
嫉妬を醜いと思う潔癖なハシモトもだが、そういう彼の複雑な心模様を察せられるチロが良いですね。
なんで怒ってるの?とかなんで私は上手くできないんだろうと独りで抱えるのではなく、二人で解決しようという姿勢が良い。
男性には慣れていないけれど、チロには頭の良さと相手を思い遣れる心を確かに感じられる。

そんなチロにハシモトにしては勇気を出して、今度は部屋に入って欲しいという。
これはもちろん性的な目的とかではなく、一層チロに自分をさらけ出そうとするハシモトの覚悟だろう。


イブシ潜入で校長先生に怒られるチロたち。
このオールドミスの典型みたいな校長先生はちょくちょく顔を出す。
そしてハシモトの通う高校の文化祭へ行くのを禁止される。

でも、行くよね。
学校でのハシモトは文化祭の役員の仕事を任されていることもあるが、頼られている様子。

嫉妬しながらもイブシの話ばかりするハシモトに、自分の話をしてと要望するチロ。
文化祭では彼女にしては言動が積極的。
これはハシモトの失った自信を取り戻させ、自分の彼女としての立場を明確にしたいからでしょうね。
本当に出会ってからお互いを知ったとは思えない配慮があります。

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ハシモトと一緒に彼の高校を回るチロ
これはチロが文化祭前後でやけに饒舌なハシモトを訝しく想っていたのが伏線になっています。
狭量な自分を恥じて、イブシの話題を封じることもしないが、彼に残るシコリ。
チロは彼の癖をよく見てます。こういう細かい描写がとても良い。
作品として大きな事件に逃げずに、気持ちを詳細に語れる技量があるんですよね。


そして今巻からイブシの特技である写真がフィーチャーされます。
一枚の写真がイブシのチロへの想いを、そしてその想いがハシモトに露見する。
チロが駅に来る前の朝、それをイブシに伝えるハシモト。
いよいよ三角関係が本格的にスタートします。四角関係か⁉


決して乙女チックではない画風とか話の構成とか様々な特徴のある本書ですが、私がその中でも目を引くのが話の区切りですかね。
次号への引きがほとんどない、あれ終わりなの、というところで幕が下がっている独特な終わり方ですよね。
あくまでも話の展開ではなく、チロの心の区切りが話の区切りなのかもしれない。