《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

主に少女漫画と小説の感想ブログです

瀬をはやみ … 避けても末に 会っちゃうだなんて 運命だと思う。

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桃森 ミヨシ(とうもり みよし)
ハツカレ
第3巻評価:★★★☆(7点)
  総合評価:★★★☆(7点)
 

自分のチロへの想いを隠すため、朝の電車を一本遅らせるイブシ。一方、何も知らないチロは、親友ちゃーちゃんのイブシへの想いを応援。そんな時、ひょんな事からチロとイブシが2人きりに…。

簡潔完結感想文

  • 親友の恋を応援するチロ、友達の恋を邪魔しようと思ってはいないイブシ。
  • それぞれの休日に鉢合わせる二組の男女。今回もイブシが撮った写真が契機に。
  • 写真家イブシの快進撃。でもそれはハシモトが有名になることでもあって…。


叶えたい想いよりも優先されるのは 遠慮と配慮の3巻。

4人の男女という最少人数の中に、両想いの人がいて、片想いの人がいて、それぞれの間に友情と気配りがあって、物語に大きなうねりはなくても、読み物として出色の漫画です。


一枚の写真から読み取ったイブシのチロ(本名・ちひろ)への想いを知ってからというもの憂いを帯びるハシモトの表情。
いつもよりトーンが低く、いつもより積極的なハシモトの大人びた態度に顔を赤く染めるチロ。
そしてイブシはチロを避けるように、いつもの電車より一本遅い電車に乗ると決めた。

この辺はハシモトには言うに言えない嫉妬があるから、チロを今まで以上に強くデートに誘い二人の仲が進展していると言える。
どうしても牧歌的な雰囲気になってしまうチロたちには、危機感を持ったぐらいの方がいいのかもしれない。

イブシが避けるようになった当日、チロは駅で携帯電話を落としてしまう。
友人・ちゃこちゃん(本名・ちやこ)がチロの携帯電話を鳴らした時、電話に出たのは 何とイブシ。
放課後、電話を学校まで届けてもらうようイブシにお願いしたチロは、イブシに好意を寄せるちゃこちゃんにその受け取りを頼む…。

イブシが一本後の電車にした、という前振りが効いてますね。
一本後でいつもの車両の辺りに立ったイブシが、チロが落とした携帯電話を拾っていてもおかしくない。
そしてその受け渡しを巡って男女4人の工作が交錯してしまうというのも面白い展開。
4人の人間を動かしているのに展開が自然で、その上で各人の想いが浮かび上がってるから凄い。

本来、会うはずのチロとイブシは各々、自分より会いたい人に携帯電話の受け渡しを託したため、ハシモトとちゃこちゃんが校門前で出会う羽目になってしまった。
チロは言葉にこそ出さないが直接的にちゃこちゃんに依頼したが、イブシはチロを避ける意味もあるが気を回してハシモトを派遣するのが奥ゆかしい。
この場面、ちゃこちゃんがイブシに想いを寄せている描写が先になければ、ハシモトと怪しい雰囲気に読めますね。
女子校育ちの彼女たちでも自然と会話が出来るぐらいにハシモトは優しいし格好もいいので、ハツカレとして最適だ。
やがて刺激不足でハシモトが振られそうですが…。

そうやって出会ってしまうのがチロとイブシ。
チロたちがお気に入りの甘味処はイブシの祖父の店でイブシはその二階に居住していることが判明し、更にはその店でのバイトまで始める。
イブシが避け始めても、チロの方から近づいてくるという嬉しんだか悲しんだか分からない状況。

ただイブシ側は節度を持ってというか、自制しすぎなぐらい自制して生きている。
表に現れる態度があんなんだから、大抵の人(チロだけか?)には見抜かれないが、チロやイブシを意識して見ている人には気づかれる。
そして、そんなイブシの節度はハシモトも了解済み。
チロには怒って見えるイブシの態度も、ハシモトには照れてるとしか見えない。
男の友情というほど大袈裟なものではないけれど、人のテリトリーに立ち入らないデリカシーが二人の間に存在しています。
いつか、一度でもいいからイブシが素直な態度と言葉でチロに向き合うのかな、と考えただけでドキドキが止まりせんね。

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イブシは怒ってる訳ではありません
そしてチロとちゃこちゃんの友情もまた味わい深い。
ちゃこちゃんの方は自分が好きなイブシがチロのことが好きでも変わらずに接してくれる。
イブシといい利他的で、そして器が大きいです。
恋によって友情にヒビが入ったりしない安心感があります。

少女漫画の主人公らしくモテモテ(といっても2人だけだが)のチロが、イブシの気持ちに無自覚でちゃこちゃんの応援をし続ける的外れな行動があっても彼女が嫌味に映らないのは、やっぱり根底にその素直さや一途さがあるからですかね。
イブシに愛想を振りまいて好かれたのなら嫌味になるが、あくまでチロは自然体のままでいるから ちゃこちゃんも躍起にならない。
ましてやイブシ側は幼稚園時代から引きずったような好意だから、対抗しようにもできない感じだろうか。


そんなチロは映画館では寝てしまう自分の習性に気づかず再度失敗。
だけど、チロの何気ない言葉に単純なハシモトは喜び、会話が弾む。
デート中立ち寄った公園でちゃこ・イブシの写真撮影に遭遇し、イブシはハシモトの写真を撮りまくる。
ここで不自然なほどイブシがチロにカメラを向けないのは自制と配慮だろうか。

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好きな男の子を 心のカメラで撮影
公園でハシモトを撮影したイブシの写真が、コンビニチェーンのキャンペーン写真の候補に残る。
そのことでハシモトがちょっとした有名人に。
顔を注目されて、同年代の女性たちに声を掛けられて、気持ちの整理が追い付かないチロ。

バイトを始めたことでイブシとは物理的距離が近づいたのに、ハシモトとは精神的距離が遠ざかる…⁉