《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

濡れ場がないなら 本当に濡れればいいじゃない。じゃ、車ごと海にダイブね!

レンアイ至上主義(6) (フラワーコミックス)
水波 風南(みなみ かなん)
レンアイ至上主義(れんあいしじょうしゅぎ)
第6巻評価:★★☆(5点)
  総合評価:★☆(3点)
 

梓衣(しい)を追いかけ、夜の海にのまれた世莉。うちあげられた浜で指輪は取り返したものの、なぜか失神。起き上がった世莉の体には、梓衣の魂が…!?碧樹のところに戻った世莉は、心配する碧樹を振りきって衣奈(えな)を呼び出します。梓衣には、世莉の体を借りてでも衣奈に伝えたい想いが…。梓衣と衣奈、2人の秘密とは!?

簡潔完結感想文

  • 学園祭の企画で人身売買されることになった碧樹。世莉は別人格で対応。
  • 沖縄へ修学旅行。怪しい飲料を口にした彼はいつもより乱れて激しくて…。
  • 新任教師登場。科目は生物。生物教師にはご注意を。今度は碧樹に危険が⁉


段々と登場人物たちと作者に好感を持ち始めてきている6巻。
作品自体はどうしても好きにはなれませんけど。

特にこの6巻では、世莉(せり)に性的暴行が加えられないため『1巻』以来、安心して読める内容になっている。
逆に言えば、この間の4巻ずっと性的な暴力に苦しんでいたわけで、その時点で本書全体は評価できませんが。

内容もエロを挿むノルマが見受けられるものの、学園や性的な嫌がらせから解放された作者の想像が自由に羽ばたいているように感じられて、作品内の空気も澄んでいる。
ちょっと不思議な夏休みを満喫し、学園祭があって修学旅行に行ってと、世莉にやっと高校生らしい描写が続いているのも良いですね。

気になるのは作者の鷹来(たからい)びいきが加速していることと、高校生としての分別を身につけていない碧樹(たまき)の身勝手さに眉をしかめてしまう点ですね。
最終8巻で確信しましたが、作者は碧樹をヒーローになんてさせない気配がある。
最近は碧樹が格好いいことを言ってる裏での非常識さを潜ませているように思う。


世莉が旅行先の夜の海にのまれてしまい、警察を呼んだ碧樹。
だが、夜明けまで動けないという警察の説明に碧樹は「そんな悠長なこと言ってる場合じゃねぇだろ!!」と服を脱ぎ海に入ろうとする…。

まず警察を呼ぶ常識が碧樹に備わっていたことに驚く。
そして本来なら世莉の無事を一早く確認したいという体を張った場面なんですが、どうしても私には碧樹が逆切れしているとしか思えません。
自分たちの至らなさで警察を呼んでおいて、そういうことを言う頭の悪さが露呈しています。

そして無事に海から戻った世莉を連れて一目散に自宅に帰って、ずっと世莉と契りを交わす碧樹。
夜になり、部屋の外から「(世莉ちゃんを)もう帰しなさい 親御さんが心配するだろ」という碧樹の父の言葉を碧樹は「関係ねぇよ」と一蹴。
…で、翌朝、道場で父に二人して説教されましたとさ。

1回1エロのノルマがあるがために、あまり意味のない濡れ場シーンが挿入され碧樹(と世莉)の不真面目さが際立つ結果になった。
命の危険や、貞操の危機から逃れては濡れ場というのは、本書においては水戸黄門における印籠シーンみたいなものだとは思いますが、エロ描写は、物語の雰囲気を失わせる力がある。
特に今巻は切ない話やコミカルなどこれまでにない内容なのに、エロという刺激が強い調味料のせいで作者の創意工夫の料理が、結果的に同じ味に味付けされた感じになってしまっている。

あと夏の海のお話で、最後に近親相姦を匂わせる意味はどこにあったのでしょうか…。


学園祭編は「恋人つきのあの人でも貴方が1日独占できる!!」という強引な設定がキツいが、世莉の奮闘が見られる。
ちなみにこの企画が通ったのは「男女交際を推奨するのも悪くない」という鷹来理事長の方針らしい。朝令暮改とはこのことですか。

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あくまで山崎ですから。下の名前は聞かないでください。
後輩の朝飛(あさひ)と「山崎さん」の一悶着は後の伏線だったのですが、その場面で山崎さんの顔を少しも出さないのは失敗だったのでは…?
その構造が分かりにくいために山崎さんの頭脳プレイが目立たなかったような気がする。
そして碧樹が「独占券」を隠す場所はインパクトがない。
単純だけど世莉の机の中とかが良かったなー。


修学旅行編はとにかくコミカル。濡れ場が本当に邪魔でした。
甘酒や、間違って飲んでしまったお酒で登場人物のキャラクタが激変するのは少女漫画あるあるですね。
今月、感想を書いた漫画だけで3冊目です。
そういえば碧樹がお酒にあれだけ弱いと先に判明していれば碧樹を求めていた九条(くじょう)先生も、毒など使わずに碧樹をものに出来たかもしれませんね(苦笑)


なんて思っていたら九条先生とも縁がある新キャラクタ、生物教師の伊緒(いお)が登場。
九条先生と大学の先輩後輩の間柄で、『2巻』で九条先生が駆使した毒針と媚薬は伊緒が用意したものだったという。
その大学を卒業してこの学園にくる生物教師はクレイジーな人ばかりみたいです…。

自己紹介でざわついた教室を静めるために教壇を割って見せる伊緒は(後に世莉たちと交換してる(笑))、世莉と碧樹と同じ道場に通っていた空手仲間だということが判明。
登場シーンからして、とてもまともな人だとは思えないが…。

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車ごと海に捨てられる任侠漫画
驚くことに今巻の最後の回は何と、濡れ場シーンがない!
その代わりにあるのが、碧樹を乗せたままの外車スポーツカーの海へのダイブ。
なんだか、お色気かカースタントか、インパクト重視の昭和のドラマみたいになってきてますね…。