《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

ツンデレ三拍子 ツン・ツン・デレ。デレツン三拍子 デレ・ツン・デレ。3拍目が幸せの合図。

近キョリ恋愛(1) (別冊フレンドコミックス)
みきもと 凜(みきもと りん)
近キョリ恋愛(きんきょりれんあい)
第1巻評価:★★★(6点)
  総合評価:★★★(6点)
 

大ブレイク! 笑えて泣けてキュン! 史上最強のツンデレラブ!! ひょんなことから、つきあいはじめた学年トップの超天才にてクールな少女・枢木(くるるぎ)ゆにと臨時担任の櫻井(さくらい)ハルカ。担任じゃなくなったら正式にラブラブになるはずが、元担任2回目のご懐妊でハルカは引き続き担任に。絶対ナイショなこの関係には、キケンがいっぱいなのです――。いつだって波瀾万丈、禁断(?)恋愛(ラブ)コメディー第1巻!!

簡潔完結感想文

  • フルスペックな登場人物たちのフルスロットルな物語。考えるな感じろ。
  • イケメン俳優主演の映画だと思って読めば問題はない。考えるな感じろ。
  • あくまでコメディーですので、ツッコんだら負けです。考えるな感じろ。


全10巻の長期連載漫画というより、各回を楽しんで読むのが正しい漫画の1巻目。

本書は確かに生徒と教師の秘密の恋物語ではあるのですが、コメディであることも忘れてはいけない。
比率としては恋愛50:コメディ50ぐらいですかね。
純度100%の恋愛を期待して読み始めると、勝手に失望してしまうかもしれないのでそこはご注意を。
あと、1巻を読んで感覚が合わないと感じられたら、きっと最後まで合いませんのでそこもご留意を。


本書はずっと一定のリズムが刻まれています。
1話(または一区切り)の中での主人公・ゆにが刻むリズムは「ツン・ツン・デレ」。
そして恋人の櫻井先生が刻むリズムは「デレ・ツン・デレ」の3拍子です。

まず1拍目では櫻井先生しかデレていないので、ゆにの方はけんもほろろな対応をします。
そしてお分かりの通り、2拍目で2人ともツンになりますので、一度仲が険悪になります。
けれど3拍目にはデレが一致していますので、誤解がとけて仲直りします。
単純明快な話ですね。

ただ問題なのは、全10巻でこのリズムが延々とリピートされる点です。
全40話を読了した私からの残念なお知らせじゃ、本書はこのリズムが20回ほど繰り返すということ。
単調なリズムは飽きてしまいます。これを回避するには、1話完結のコメディとして連載に対する人物の成長や変化などは望まないのが正しい姿勢ではないでしょうか。
その代わり、学校側に交際がばれたり、櫻井先生が淫行教師として逮捕されるとかシビアな問題は起きませんので、その辺は安心して楽しめます。

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ツンデレに恋は難しい。
最初から厳しい感想を述べると、本書は全体的に胸キュン場面を集めてみましたという感じを受ける。
テレビ番組で衝撃映像100連発とか、寄せ集めの映像で1本番組を作るみたいな感じだ。
教師と生徒という制約の元、保健室のベッドで並んで寝転ぶ、先生の車で送ってもらう、教壇に隠れてホームルーム中に先生とキス(これは秀逸)、同僚教師にバレそうになるなど1巻だけでも胸キュンシーンを取り揃えている。あとは定番の観覧車でキスなどもありますよ。


ただどうしても主人公たちの設定が、胸キュンシーンの道具のように思えてしまう。
主人公の枢木(くるるぎ)ゆには、超天才少女という設定。
頭脳明晰だけど恋愛に関しては恋のお相手・櫻井先生に主導権を握られてしまう。
また能面のような一定の表情が変わらないけれど、その内心は嬉しさや悲しさ色々な感情が爆発するほど生まれている。
そのギャップが面白いところ。
作中で例えられるように猫のように表情や態度がコロコロ変わるので物語をけん引してくれる。

一方、そのゆにが恋い慕う櫻井先生は、ゆにの担任の先生が産休に入ったことから、ユニのクラスに現れた臨時担任。
昔モデルをしていたと間違った噂が流れるほどスタイル抜群。
そして担当教科は英語で、当然のように英語がベラベラ。
この櫻井先生の担当教科が英語ってのも女性が憧れるポイントだろう。
国語や社会にはない鋭さや身近なエリート感が出るのではないか(という偏見)。


教師と生徒の禁断の恋という設定や、登場人物に盛り込まれたスペック、ゆにの可愛さ、櫻井先生のイケメンっぷりに萌えるととっても楽しい作品だと思われます。
たとえそれが櫻井先生が一番嫌がることであっても。


櫻井先生は嫌がるだろうが、読んでいて常に付きまとうのは、先生の魅力、顔以外にあるんですか?という疑問。
主人公ゆにですら最初は先生の並外れた美貌に惹かれて好意を持っていた。
が、ゆにはツンデレですので先生の性格に反発しながらも、その誠実さや意外な一面を知っていくと割と簡単にデレてしまった。
何度も言うようですけど、本書は恋の過程を描くドラマではなく恋に対するリアクションのコメディなので、その辺は割り切らないといけないのかもしれません。

もっと言えば私は顔も好きじゃないですけどね…。
甘い顔なんでしょうけど、糖分が多すぎて、顔、溶けかけてませんか。
凡庸な比喩で申し訳ないが、海藻のっけているのかという波打つヌメっとした髪型と髪質も嫌いです。
私服なども若作りといった感じで、性格を含め、大人の男の魅力というよりは、からかい上手の同級生といった感じだ。


作品としてはどう考えても短距離走向きの作品で、どうやらwikipediaによると、この1巻が第一部で、2巻からが第二部らしい。
ご好評につき延長という形なのだろう。
良くも悪くも定型があるので長期連載には向かないのは作者も編集者も気づいていただろうに…。
それでも10巻まで続きます。

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胸キュンのためなら多少の不自然さは何のその。
基本的に、櫻井先生がいけずな言動をとったその裏には、ゆにに対する優しさがあったというのが3拍子目のデレの典型的なパターン。
その中でも一番不自然だったのが、4話目のとある場面。
それは、櫻井先生が男子生徒の前で、ゆにが近くにいることを知らずに、ゆにがあげた手袋を「大事な子」から貰ったとほのめかす場面。
ゆにはその会話を最初は聞き逃すのですが、男子生徒が「今 ハルカっち さらっと すごいこと言わなかった」「もっぺん再現してみようっ」と再現ドラマを繰り広げてくれることで胸キュンのセリフをその耳で聞けたのだ!
不自然過ぎて本書で一番笑っちゃいました。
失笑というのかもしれませんが…。