《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

ずっとツンのターン。愛情 温情 熟慮 未来 デレのカードを伏せたままセット これでターンエンドだ!

近キョリ恋愛(9) (別冊フレンドコミックス)
みきもと 凜(みきもと りん)
近キョリ恋愛(きんきょりれんあい)
第9巻評価:★★★(6点)
  総合評価:★★★(6点)
 

やってきました、(海の近くで♪)勉強合宿! リフレッシュもできたし、“念願叶って櫻井(さくらい)先生と密会!”と思っていたゆにだけど、驚愕の現場を目撃してしまうのです――。いつだって波瀾万丈、禁断(?)恋愛コメディー第9巻!!

簡潔完結感想文

  • 夏合宿。先生が生徒を壁に打ち付ける場面は2回目ですね。ガキが!
  • 花音の陰謀。的場の欲望。女生徒と多く接してきた先生は気づいてる?
  • 先生とお別れ(3回目)。今回は先生の真意のネタばらしと同時進行。


本書史上最長の「ツン×ツン」状態。「デレ×デレ」は次巻に持ち越しの9巻。

3年生に進級して以降、なかなかデレ拍子の揃わないゆにと櫻井先生。
ゆには将来を見据えた会話をしなければならないのに、それすらもままならない状態。
というのも、3年生になってからというもの櫻井先生は花音(かのん)という女生徒に付きっきり。
時にはゆにに嘘をついてまで花音と会う時間を割く櫻井先生にゆには不信感を募らせていきます。
櫻井先生はゆにが気づかない陰ながらのデレは続けているものの、どうしてもすれ違ってしまう2人。
そして、ゆにの将来を案じた櫻井先生は史上最大のツン作戦を決行する。
すべてはゆにのために…。


うぅ、先生、先生はやっぱり教師だったんですね(感涙)
…とはなりませんでしたね。
先生はゆにを完全に子ども扱いしてます。
もしくは彼女の感情や尊厳を無視している。
将来について彼女から一言でも聞いたことありました?
彼女が悩んでいることを知りながら、彼女と対面で冷静に話す時間を作りましたか?
そこを親に了解つけたつもりで、一足飛びに彼女に結論だけ投げつけるのは正しいですか?
ホント独善的な男です。やっぱ嫌いかも☆


そして相変わらずガキでしたね。
学校行事である夏の勉強合宿で、櫻井先生に不信感を持ったゆには夜中にクラスメイトの的場くんと共に先生から脱走してしまう。
1時間ほどで帰ってきたものの、その間に不良に絡まれたせいで、ゆにはその額に傷を負ってしまった。
その傷を見た瞬間、櫻井先生は思わず激高し、的場の顔すれすれに壁を殴りつける…。

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決して彼女が他の男と夜遊びしたからDV、ではないはず…。
先生、アンガーマネジメントってご存じですか?
2回目ですよね、生徒に手を出しそうになって騒ぎになったの。
もう制御できてませんよね、ご自分の感情を。
ちょっとね講習受けに行きませんか?
いや、これは後々の先生のキャリアのためにもなると思うんですよ。


先生がゆにのためだけに感情を露わにする、という展開が本書の胸キュンポイントなんでしょうけど、私の胸はことごとく高鳴りません。

本当に言葉での対話が苦手な人ですよね。
キレてすぐ手が出るって、その前に登場した町の不良と変わらないメンタルだ。
それは過去のトラウマが払拭されてからも変わらないということは、先生の本質ってことなんですよね。
父親そっくりですよ。顔だけ良いところが(最上級の嫌味)。

そんな夏合宿は水着回
櫻井先生の水着姿はギリギリショット!
下げ過ぎです。もはや、お尻でてません?


そして今巻すべての出来事の裏で糸を引いているのが花音。
どうやら櫻井先生は教師として彼女が気にかかり、教師としての守秘義務で彼女の問題は話せないみたいだ。
そこに異性としての好意はないと思われる。

花音の性格的な問題も櫻井先生なら見抜いていると信じたい。
豊富な女性経験と未熟な教師生活の中で培った人を見る目もあるはず。
花音が味方につけようとした的場くんでさえ、彼女の本質にすぐに気づいたのだから、先生もまた然り、なはず。

そして、ゆにの弟・るーちゃんの特殊能力で花音の善悪が判断できました。
まぁ大分前から読者には「黒」って分かってますけど…。

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櫻井先生に好意を、ゆに には悪意を持って近づく花音。
そういえば以前登場したコナン君といい、ゆにに言い寄ってくる男はイイ男ばかりですね(先生はあれですから…)。
そういえばコナン君も的場くんも、最初はクラスメイトから恐れられる存在から始まってますよね。
ギャップ萌え、もしくはクラス全員へのツンデレ効果でしょうか。

コナン君はゆにの気持ちが自分に向かうように画策したことがあったが、的場くんは今のところ直球勝負のみ。
ゆにの気持ちはともかく、正直、私は的場くんの純情に参っております。
だってライバルはあの先生でしょう?


でも考えてみると、最終巻へ向けてのこの流れ、
これまで、どちらか一方への交互のアタックだったものが、単に同時攻撃になっただけですよね。
ギャグ繰り出す前に、作品のワンパターンを見直して欲しかったですね。

そして今巻ラストはこれまでと構成が違います。
先生流の「デレ」の種明かしが先行してからの「ツン」である。
読者には先生の意図が分かっているが、ゆにには青天の霹靂。
またお別れですね。この展開を用意しているのなら、以前のお別れ回は全く不要でしたね。
お別れも2度目なら劇的な効果が薄れてしまいます。
さて、本書も次巻が最終巻。
大人の事情に巻き込まれるゆには何を選ぶのでしょうか…。


本書は初読はかなり面白いんですよ。
毎回ドキドキする展開がちゃんと用意されている。
けれど再読してみると粗が目立ちますね。
特に先生側の行動には疑問符が付くものが多い。

批判的な目で見てるからと理由も大きいとは思いますが、先生の格好つける場面って同時に鼻で笑っちゃう場面だったりするんですよね。
キャパシティが狭いと自覚してる男子の背伸びは微笑ましいが、キャパシティが広いと勘違いしてる男の甘い言葉は滑稽です。
要は本当にホストなんですよね。
ちゃんと貢いでホスト道を満喫されている方と、それ以外の者との温度差が凄い。
ただ逆に一度、先生に溺れたらもう命はないかもしれません。