《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

ヤマケンくんのクラスチェンジ遍歴。モブキャラ → 当て馬 → 友達。ゆくゆくは医者ですけど、何か問題でも。

となりの怪物くん(11) (デザートコミックス)
ろびこ
となりの怪物くん(となりのかいぶつくん)
第11巻評価:★★★★(8点)
  総合評価:★★★★(8点)
 

「私はハルとは違う。ハルに私の気持ちはわからない…」順調に付き合いを続けて来た水谷雫と吉田春。しかし、ふとしたことからハルへの嫉妬を感じ始めた雫は、次第に自分とハルとの違いが許せなくなっていく。そして、ハルの兄・優山の誕生日パーティーで言い争いをしてしまった翌日から……ハルは再び学校に来なくなってしまって⁉

簡潔完結感想文

  • ハル、高校2度目の長期欠席。相手を傷つけたかもと思ったらどうすればいい?
  • ハルを再発見。けど雫がヤマケンくん状態に。誰も彼も素直じゃない世界です。
  • 不死鳥ヤマケン再登板。最終回まで登場しそうで良かった。ついでにハルと雫もね。


最終回前の一大事件かと思いきや、いい意味で肩透かしだった11巻。

『前巻』の感想文でやたらと感傷的な文章を書いたのが恥ずかしいぐらいだ。
しかも私、一度完読してるんですよ本書…。バカみたいだろ、アホなんだぜ、こいつ。
でも良かったです、重くなり過ぎず本書ならではの特有なバランスで。
これでハルのトラウマを解消する心の旅とかやられた日には読んでいられない。
ただ今巻で出るヤマケンくんの至言「ずっとそうやって よくわかんねーこと繰り返すのか」という言葉にも深く頷いてしまいますけどね。
雫とハルに関しては問題がループしています。


結局ハルがどこに行っていたのかというと、パーティーで会った昔馴染みの教授のところ。
拉致されるような形で、戦力として投入されたみたい。
まさかパーティーの場面での再会が伏線だったなんて。
てっきりハルの意思で雫から遠ざかっていったのだと思った。
ちなみに雫が今巻ラスト付近で気づいたハルからの雫へのメッセージ。今巻の序盤で雫が自分のケータイを開いた場面でちゃんと描かれてるんですね。これもまた伏線ですね。


今回の間違いを通じて雫の自己分析が完了した模様です。
雫がちゃんと自分に非があったこと、過ちを認めてくれてよかった。
にしても子供の頃の雫に「もしかして私は 必要とされてないんじゃないか?」と思わせる母、許すまじ。

f:id:best_lilium222:20200704010019p:plainf:id:best_lilium222:20200704010015p:plain
距離を置いて自己分析が完了した雫。自分の中の執着心だって見つけた。
ラストでハルに「ひでー言い様」の言葉を吐く雫。
内容的には『前巻』の失敗と変わらない言葉。
でも違うのはそれも受け止めてくれるハルの存在。
自分の言いたい事を言ってハルの方に向き直ったら、ハルはいなくなっていた。そのことで雫は「怒ってるみたいな 泣いてるみたいな 梅干し食べてるみたいな顔」になったが、でも実はハルは目前にいて雫を抱きしめてくれた。
それが嬉しくて涙を流す雫。
どうやらこれは雫の方がトラウマ解消してますね。
てっきりハルの方が心に闇を抱えているのかと思ったが、ハルは成長したとはいえその純粋性が保たれている。
やはり怪物を飼っていたのは雫だったのかもしれません。

人は身近で一番好きな人をまず目標に生きる。
だからハルは兄・優山に、雫は母に似てくるのも当然か。
今巻の雫は実に女性らしい美しさに溢れている。
冷徹でありながら温情を持つ、欲張りな人間って完璧な人間じゃないですか。


ハル失踪後のいじける雫もコミカルだし、ハルと再会する場面はコメディだし、ハルに謝らなければいけない時にそこから逃げる雫の姿は、好みだ。
いよいよ謝罪する前日の夏目ちゃんと雫のメールのやり取り大好きです。
10の言葉のうち1つの真実を混ぜるヤマケン化した雫は可愛いですね。
もしかして私がこういう裏腹な人を好ましく思うってだけなのかな…。


そんなヤマケンくんも奇跡の復活。
雫とハルの仲が上手くいかない時に現れる、友人としては最高の人。
ヤマケンくんを振ったのではなく、「友達になる気はない」と彼に言われたので振られたと思う雫。
本当に彼女には国語の読解力がありませんね。
そんなヤマケンくんの敗戦後の再挑戦。
その高慢ちきなプライドを捨てたような、違う学校の校門という目立つ場所で女性を待つなんてことまでしてしまう。
告白といい、たとえ傷ついたとしても彼なりに自分を変化させようとする意志を感じる出来事ですね。

f:id:best_lilium222:20200704010147p:plainf:id:best_lilium222:20200704010144p:plain
ハルが不在の間でも崩せなかった二人の絆。でも ちゃんと一人の男として見てくれた。
今巻で好きな場面はやっぱり雫と夏目ちゃんの場面かな。
夏目ちゃんもまた中学校生活のトラウマが払拭されている。
ここでも本音をポロリという雫はかわいらしい。
夏目ちゃんとササヤンはもう一息という感じですね。
そんな2人の1年生の頃を描いた巻末「おまけ漫画」を見ると、今の2人の距離がどれだけ近づいたかがよく比較できます。


そんなササヤンも地味に中学時代に抱えていた問題と向き合っている。
本当にサイドもサイドストーリーなので、ちょっとどうでもいいですけど(笑)
表紙下などで繰り広げられる江戸っぽいサイドストーリーでのササヤンは隠密。とても似合ってます。
野球も身体能力と技で勝負って感じでしょうか。