《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

不登校から始まって不登校で終わる。でも彼も私も、もう一人ぼっちじゃないよ。

となりの怪物くん(12) (デザートコミックス)
ろびこ
となりの怪物くん(となりのかいぶつくん)
第12巻評価:★★★★(8点)
  総合評価:★★★★(8点)
 

「会ったらまずは謝って『仲直りしたい』って伝えて…」2週間の音信不通の後に帰ってきた吉田春。その春となんとか仲直りしかけた水谷雫だけど、「気持ちが知りたい」と言われてどう答えたらいいのか分からなくなる。むしろ逆にひどい言葉をぶつけてしまうが、その時ハルは…⁉ 大ヒット青春ラブストーリー、クライマックス。

簡潔完結感想文

  • 本編最終巻。人と触れ合う喜びや幸せを私も感じる事が出来ました。ありがとう。
  • ハルが2年から落ちてきた。まさかの主人公不在。ここからは早送りでお送りします。
  • 卒業式。別れと出会いの最終回。先輩として抱きつかれた雫は恋人として抱きつく。


となりの怪物くん』は全13巻だけど本編は今巻までで、13巻は番外編集だよ、の12巻。

そうなんです最終巻です。
未読の方は『13巻』があるからと思って、気を抜かずに1ページ1ページ慈しんで読んでください。


今巻途中でまさかのハル二度目の長期離脱。
でも今回はちゃんと挨拶と余裕をもって出発できた。
ただし、その分今回は長期で1年間。ハルくん高校3年生はお休みです。

そういえばハルだから、ハルと雫だからこんなに気持ちよく出発しているけれど、よくよく考えたら少女漫画における海外留学といえば泣きじゃくって、別れる別れないで揉める、典型的な最終回展開である。
なのにそんな感傷的な気持ちは一切排除されている。
本書みたいな規格外のお話には似合わないし、もう湿っぽい話はいらないしね。

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時に人を傷つける言葉。だけど人を包み込むことが出来るのも言葉だ。
それに今回の別離は前回とは全然意味が違う。
お互いの進路のための別れ、と言ってもいいだろう。
むしろ雫は心のどこかで、ハルが居なくなった分、心と時間に余裕ができたわ、ぐらい思ってほしいものだ。
彼女は寂しさで潰れることもないだろう。
雫には明確な目標があるし、繋いだ手の温かさも知っている。


ハルが海外へ行ってからの「その47 3年生」は終盤までセリフがないページが続く。
けれどもう私たち読者は登場人物の口調や性格を十全に理解しているので、おおよそ彼らが何を言っているかアテレコできる。
この学校は3年で3回クラス替えがあるんですね。
夏目ちゃんは災難でしたけど、3年生なんて40ページ弱で終わるんで我慢してください。
学校最大イベントの修学旅行がぞんざいに1ページで扱われている。
夏休みでは再びみんなで川へ。川好きですよね、このメンバー。3年連続3回目。
同じ場所なんでしょうか。崖の形は似ているけれど。
川で泳ぐ少女漫画ってここ最近だとあまり見かけませんね。
大体、海行っちゃいますから。
ほんとあっという間の1年間でした…。


兄・優山も吉田の家を出て独り暮らしを開始。
後継者にはなるけど家は出たみたいです。
しかし父も含めて吉田の家はハルをどうしたかったのでしょうか。
彼の能力と政治家とは結び付かないと思いますが。
お金に汚きゃできるんでしょ、政治家って(偏見)。

優山を好きなハルも、ハルを守りたかった優山も救われる場面がありますね。
石のエピソードの使い方も好きだ。
こういう時、雫の客観的事実だけを伝える冷静な低温口調は効果的です。


卒業式の答辞は雫。やっぱりハルがいないと主席なんですね。
夏目ちゃんの言葉じゃないけど、私もこの連載「…毎日が楽しくて楽しくて 夢みたいだった」です。
特に後半の登場人物と友達になれてからの楽しさったらなかったです。

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人生の半分以上を貴方と共に歩くことを誓いましょう。ここからまたスタート!
最終話ラスト数ページは高校卒業から3年半後。
雫は法学関係なんですね。おそらく司法試験合格して司法修習生に。
母子ともども、もっと大きな経済を動かす職業なのかと思っていました。

「おまけ漫画」はそのちょっと後の話。
左手の薬指に光るのは婚約指輪ですかね?
雫のモテ期です。磨けば光る原石だったのかな。
本編では読者のために最後までダサくいてくれてありがとう。
本当は日本で有数に賢いし、美人母に似てる「あっち側」の人間だもんね…。
私が「持ってる側」の雫にこじらせそうだよ。
髪の伸びたハルは優山っぽいですね。
にわとりの名古屋は長生きですね。万が一の時のハルのペットロスが心配だ。


エンドロールはさらにその後。
最年少の伊代ちゃんまで就職した頃の様子。
そういえば夏目ちゃんはパソコン世界に逃げただけじゃなくてその方面にも強い設定でしたね。写真立ての中の2人は…?
ヤマケンくんの学校の3バカトリオの内、2人の職業がよく分かんないんですけど…。パリピ華道家
兄・優山は選挙戦の街頭演説中。こちらは髪を切って爽やかに。恋人はできましたか?
みっちゃんは独身でしょうかね。
そういえば雫は隆也が社交的だから女子高生たちに懐いてると思っていますが、隆也は計算してるんですよ、雫姉さん。それが明らかになるのは『次巻』です。


そういえば恥ずかしい誤読なのですが、雫母は別居してるっぽいですね。
多分、夫婦仲の問題じゃなく仕事上の利便性からでしょう。
大学進学を機に雫が母のところで暮らすみたいな夏目ちゃんの発言がありました(これも誤読かもですが)。
なので雫母が家に帰ってこないのは当然で、なかなか会えないのも当然なのだ。
私は同じ家に住みながら仕事を理由に子供たちと関わらないのかと思っていた。
すまん、雫母。まぁたとえそうであっても、やっぱり一種のネグレクトだと思うけれど。
少なくとも雫は母に必要と認められなきゃ、と思って生きてきたのだ。
それも結果的に丸く収まったから良しとする。大団円!