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となりの怪物くん(6) (デザートコミックス)
ろびこ
となりの怪物くん(となりのかいぶつくん)
第6巻評価:★★★☆(7点)
  総合評価:★★★★(8点)
 

夏目さん、ササヤン、ヤマケン。それぞれのおかげでちゃんとお互いの気持ちを考えようと変わり始めた水谷雫と吉田春。まだ変わり始めたことに、2人とも気づいてはいないけど。そんな2人が迎えたバレンタイン…。今まで気持ちを抑えていた大島さんがハルに…!?

簡潔完結感想文

  • 仲直り。例え傷つけあっても若い分、治りも早い。最適の治療法は謝ること。
  • バレンタイン回。大島さんは雫と一緒に作ったチョコをハルに渡すという。
  • 2月14日は雫の誕生日。母はいないけど優しい男たちに囲まれて過ごす一夜。


他の人がいる嬉しさ、他の人を気遣えるの優しさ、それが生まれる6巻。

奇抜な登場人物たちは変わっていないようで性格や関係性が少しずつ変わっていってますね。
例えばハルはササヤン以外の同性の同級生たちと放課後を過ごすという友達っぽい事をやってのけている。
小学校の同級生だったヤマケンたちと違い殴り合いも喧嘩もせず穏やかな1日を過ごせている。
更にはササヤンに『前巻』での一騒動を謝罪なんかしていて、いとこのみっちゃんじゃないけど、その成長に涙を流したい気分だ。
もっとも、本当にキレたらその成長をすぐにリセットしちゃうのがハルなんですけどね。
下柳くんたちに害が及ばなければいいが…。

同じく『前巻』一騒動あったのはササヤンと夏目ちゃん。
夏目ちゃんの逆ギレに近いが不器用なので謝り方も分からない。
意外にも手を差し伸べるのはハルで、夏目に「困ったら俺が助けてやる」と約束をする。
夏目がみっちゃんに惚れていなければ、またハルに惚れる女性が一人増えたかもしれない。
危なかった。
ササヤンは本当にグループの潤滑油ですね。
ただ、まだまだ彼も若いので自分の油で足元をすくわれる事もあるだろう。


バレンタイングッズ売り場で会った雫・夏目・大島・ユウちゃんの4人は一緒にチョコを作ることになって…、というのが次の話。
この回ではこのまま最終回まで謎の存在として扱われるのかと思われた雫の弟・隆也、顔を初出ししている。
まんま小っちゃい雫ですね。
そして雫はブラコン気味なのが発覚。
逆もまた然り、みたいですが。
弟はゲームをしたり、エロかったりなかなか普通の少年みたいだけど、彼には友達いるのかな。
雫ほどじゃない事を祈る。
雫もいい子だけど。

大島さんの中学校時代の友人・ユウちゃんは遠距離恋愛中の彼氏持ちだという事が判明。
これは内々の恋愛戦線には参戦しませんぞ、という宣言なんでしょうかね。
もしかしたらヤマケンやササヤンの彼女になってる未来もあったのでしょうか。


夏目もお節介になってきている。
夏目ちゃんが同性の恋を応援するなんていつ以来でしょうね。
大島が好きなのは自分に絶対に恋はしないだろうハルが相手なのと、自分が片想いの喜びも苦しみも知っているから声を掛けずにいられなかったのでしょう。
夏目の魔性に引っ掛からないのは吉田家の血筋は特殊なんですかね。
ハル、優山、そしてみっちゃん…? 頑張れ夏目ちゃん。

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友達の実感、恋をした経験が人を変え、その人がまた誰かを変えていく。
雫は大島にハルにチョコを渡すと宣言され懊悩する。
ここでも雫やハルが恋愛面で他者を意識するなんて重大事件が起きる。
雫のドライアイスが溶け始めて、初めての感情が溢れ出してゆく。
勉学以外に不器用な雫が自分の心情に振り回される姿はかわいいですね。


雫の誕生会。
自作自演で飾り付け、16歳の自宅の誕生日パーティーにしては大々的だと思ったけれど、大きい会場を貸し切ってのパーティーで育ったハルからしてみれば「小規模」らしい。

後述する母の欠席と入れ違るように現れたのはハル。
家族以外に誕生日を祝われる気持ちを素直に嬉しいと言い切る雫。
また変わっていきますね。
ハルと弟・隆也の初対面。
隆也の胸に浮かぶのは姉を取られた嫉妬か、それとも自分には初めての顔を見せるハルへの羨望か。
彼もまた姉の心情をいちいち察知できるいい子なんです。

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「弟」同士の会話。例え世界から見放されてもお姉(兄)ちゃんがいたから大丈夫。
ヤマケンは街中で歩くといつも遭遇しますね。
学校も別だし、雫は塾通い止めてるし、もう接点が偶然出会うか、自分から連絡するかの2択しかないですからね。
雫たちがヤマケンを召喚する事はほぼないでしょうから。
いわゆる当て馬・お邪魔虫役ですから雫とハルが順調だとやることないんですよね、この人。
次に本格参戦するのは2人の間にまた亀裂が出来た時でしょう。
それまで街を彷徨して偶然に頼りましょうね、ヤマケンくん。


雫の誕生日もまた母は不在だ。
繰り返しになりますが私はこの母、大っ嫌いです。
キャラクタ的にも中身のない上っ面のキャリアウーマンって感じで。
忙しいって言う人ほど自己マネジメントの出来ない人なんじゃないか疑惑ありますよね、雫母さん。
と嫌味を言ってみる。
雫の回想を彼女はずっと我慢してる。
父親の方が気にかけていて、仕事の能力はアレでも、父の方が人間的で好きだ。

弟の隆也もまた諦念と共に生きてそうだが、雫と違って彼が思春期になってからグレたりしたら一騒動だ。
荒れる我が家を見て母は初めて自分の愛情が欠落している事に気づく…、という手痛い展開希望です。
そうですよね、誰もが何か欠落を抱えている本書ですが、この母には母性が欠落してますよね。
何なら愛を知り、違う価値観を持った雫が母から離れていくという展開でもいい。

雫によって人の心を持った天才・ハルとバチバチに戦ってほしい気もする。
「どんだけ雫が落胆してきたか、お前に分かんのかよ!」と怒鳴って欲しいし、仕事の面でもギャフンと言わせてほしい。
あぁ嫌いだ…。