《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

妻の行動全てに理解ある夫を演じてみた件について(風早首相)。

君に届け リマスター版 24 (マーガレットコミックスDIGITAL)
椎名 軽穂(しいな かるほ)
君に届け(きみにとどけ)
第24巻評価:★★★☆(7点)
 総合評価:★★★★(8点)
 

あの告白から1年。爽子達にとって最後の学校祭がやってきました。いつも通り全力でクラスの仕事をする爽子ですが、今までとは違う嬉しい発見がいっぱい。そして、学校祭終了後に…。

簡潔完結感想文

  • 高校生活最後の学校祭が近づく。学校祭は交際スタートの思い出のイベント。
  • ずっと二人でいたい、という願いが肉体的にも精神的にも限界を迎えます。
  • 祭りのあと、爽子は風早を思ってずっと考えていた事を伝えますが、風早は…。


物語を包むのは甘い幸福感だけど、2人の関係にヒビの入る音も聞こえる24巻。

1年前の学校祭から交際がスタートした爽子と風早の二人。
学園祭のテーマが「過去・現在・未来」だからか、1年間の思い出に浸りながら、何だかいつも以上にイチャイチャしてます。
交際を始める前にどれだけ好きだったか、いまどれだけかわいいと思っているか、ずっと一緒にいたいとか語り合ってます。
爽子と風早だからこちらも共感してますが、一歩引いてみるとどの会話もとんだバカップルですよ。
これまでのどんな時よりも「ときめきメモリ」あってる気がする。
二人の脳内と背景にお花畑が見えます。

始業前に二人で会うことにした二人だが爽子が教室に入った時、風早は机で寝入っていた。
そこで繰り出されるのは風早のご褒美寝ぼけ(爽子的に)。
でもあんなにはっきり言うかね。狸寝入りなんじゃなかろうか。計算高いですからね風早という「女」は(笑)

そんな「メモリあってる」二人をいつぞや爽子を囲んだ過激派女子たちが目撃。
堂々とメモリあう二人を見て何かを諦めたり、投げやりになったりしている。成仏してください。

交際1周年記念。いつも以上に素直な言葉で彼女を褒める風早くん。未だに初々しい2人。

ただ、いつも以上に「すき」「だいすき」と繰り返すのは、不安を糊塗しているようにも思える。
この先の未来に待ち受ける二人の現実から逃避する呪文のようにも聞こえるのだ。

以前、風早は爽子のセールスマンと書きましたが、
学校内での爽子の人気は嬉しいが、どん欲により大きな市場を求めなければならないのもセールスマンに課せられた使命かもしれません。
商品(と書いては爽子に失礼だが)のスペックを完全に発揮できないままの状態は、その商品に惚れ込んだ人には悔しさも感じるはず。


さて学園祭でのクラスの出し物は、おばけ屋敷
このクラスは教室を暗くしたがりますね。

爽子は「貞子がどこまでも追いかけてくるおばけやしき」の一翼を担う。
小姑みたいなイビリなのは承知ですが、
廊下を走らない、という爽子の守ってきたルールを思いっきり無視してるよね。
ただでさえ人の多い学園祭中では事故の可能性も高いだろう。
すみません、こういう所、気になっちゃう人なんで…。

しかし全力疾走で倒れるのは繰り返し走った爽子ではなく、長い時間教室を離れていた爽子を捜しに来た風早。
学園祭の準備も含め、日頃の無理がたたったようです。
ある意味で貞子に祟られた風早なのであった。ほん怖。
(おばけ役から)帰ってこない爽子、というワードが風早を突き動かしている。
彼は爽子と自分との距離が空くことが不安なのだ。それが偽りのない風早の本心。
だけどその事は爽子には言わない。自分からは言わない。
セールスマンは私心を挟まないもの。ただその価値を社会に分かってもらうために存在するのだから。

でもそれまでの爽子のオーバーワークの描写からすると、あの時点で風早が捜しにきて倒れなかったら、過労で倒れていたのは爽子だったかもしれない。
そういう意味では、ちょっと格好悪かったけど風早は変わらずに爽子の救世主ともいえる。
もっと言えば二人の関係はどちらかが倒れるまで無理をし続けてしまう、という暗示だろう。
お互いに相手の事を思っているには違いないんですが。

爽子のためにも120%動き続けた結果、風早は倒れる。共に病める時まで頑張り過ぎたか。

おばけ屋敷の中でいちゃつくおばけたちも登場。
千鶴と龍は暗幕の裏で身体を密着していちゃついてます。キスしてます。
元来、距離感の近い二人なので不思議とエロスは感じませんが、千鶴と龍以外で想像するとかなり不健全ですよね。
カップルにはなりますが、矢野ちんと健人だったらかなり淫靡である。

そういえば今巻でも健人の出番がそこそこあって一安心。
お役御免で、クラスにいるはずなのにいない、1年生の貞子状態になるのではと心配しておりました。

どう思い返しても1年前の文化祭の記憶しか浮かばないので、記憶力の低下を嘆いていたのですが、そういえば1年生1学期は作中に描かれていないんでしたね。違う意味で頭が悪いです。
1年生の時は何を出店して何に仮装したんですかね。作中のページは割かなくていいので、作者の頭にあるアイデアだけ知りたいなぁ。


仮装パレードのクラスのテーマ「子供の頃なりたかったものとか目指してる職業とか」においての風早のジャージ姿は何を表しているんでしょうね。
やっぱり最初っから店を継ぎたいと思っていたということなのかな? 読解力が無くてすみません。

しかしピンは何でも店長・風早父に報告しますね。子分なのでしょうか。


ラストは風早の爽子を先回りしての、背中を押す言葉。
なんだか理解のある彼氏を演じてるなぁ。
自分は綺麗でありたい、という本質はぶりっ子ですからね、風早は(笑)
ただ、これ健人は矢野ちんと一緒の大学に行くために理想の未来を展開していたのと逆バージョンなだけで、風早も爽子の未来を一方的に限定している気がする…。

より良い未来のための選択。愛は長さじゃない深さ。
まぁここが風早っぽいんですけどね。
爽やかさ100%じゃなくて、欲望だって偽善だってあるんだから。人間だもの。