《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

究極のツンデレキャラ爆誕。いいか忘れるな、お前のこと大好きなんだからねッ(野太い声)

君に届け リマスター版 27 (マーガレットコミックスDIGITAL)
椎名 軽穂(しいな かるほ)
君に届け(きみにとどけ)
第27巻評価:★★★★(8点)
 総合評価:★★★★(8点)
 

進路に悩む爽子を支え続ける風早ですが、自分の進路に関してはアノ人と分かりあえないまま…。そんな中ある事件発生!? そして爽子にも決断のときが訪れて…。

簡潔完結感想文

  • 爽子の嫁体験。舅の胃袋を掴み、義弟の遊び相手になり、嫁すごろく10ススム。
  • 風早父子の誤解と和解。えーっと、くるみ以上のツンデレキャラ爆誕ですか…?
  • ゆうえんちデート。2人きりの空間で、1人ずつの人間として向かい合って話そう。


未来を見定める27巻。あとは万全の状態で受験に臨むだけ。矢野ちん以外は…。

冒頭からちょっとした事件。
風早母の入院。ちょっと体が弱い設定はあったけれど、まさか入院されるとは…。

最初からメタ視点のお話になりますが、より長期の連載を制作側が望んだのなら、ここで風早母は旅立っていたかもしれませんね。
人の死をこういう言い方したくありませんが、多くのドラマがありますから。
風早は家に残る決意をするだろうし、爽子だってもしかしたら進路を再変更したかもしれない(風早が許さないだろうけれど)。

その後の展開も何だか母の遺していくものに思える。
長年の父と子の相剋もなくなりましたからね。
安心して旅立てるフラグが立ちまくっていた。
ただ、それ以前に龍母が亡くなっている事もあって、そういう展開はないものだというメタ視点を信じて安心して読んでました。
今後の展開を知らないので、もしそうなってしまったら相当落ち込むと思います…。


ただ風早母が入院していることを除けば、久々の日常編という感じですね。
風早家の男たちに囲まれる爽子の姿は微笑ましくて、隅から隅まで楽しめます。

自分と同じ年頃の女の子に父親が心を許しているというのは、こちらの想像以上に、風早にとって衝撃的な光景なんでしょうね。
自分の恋人の爽子だから喜べているけど、もしただのクラスメイトにも父が同じように接していたら、風早は息子であることを更にこじらせていたかもしれません。

風早弟にも上から目線で懐かれる爽子。
爽子とテレビゲームって水と油のような存在ですね。
爽子って家庭用ゲーム機に触ったことなさそう。

しかし夕食が刺身に唐揚げって黒沼家は何かのパーティーでもしてたんですかね。


爽子が風早家の家事と弟と過ごしている一方で、お店の方では風早と父での小競り合いが予感される。
しかもこの夜は仲裁役の母親がいないというのに。

またも厳しい言葉を投げかけてくる父に対して反射で言葉を繰り出そうとする風早。
しかしそれを思いとどまり、相手の意見を最後まで聞く姿勢をとろうとする風早。
彼は爽子とのケンカを通じて自分の欠点を学んでいるので応戦しない。
この辺りが上手ですよね。ちゃんと風早の新たな性格形成がなされている。

過去の失敗からアンガーマネジメントを習得した息子・風早。では父親は…⁉

ここで店を継ぐ希望がありながら大学へ進学しようとする風早の明確な進路が語られる。
これは初めて明かされる内容ですね。
以前のケンカで爽子が風早くんの進路のこと知らない、聞こうとしてなかった、と言ってますが、ケンカ状態が解消された時も爽子が問うシーンがなかったのは、ここに温存するためだったのかもしれません。

従属でも反発でもなく、育ててくれた環境が自分を作ってくれたと語る風早。
そして息子としてまだまだ親に甘えている事も受け入れる。
ケンカの時、爽子が実感したように甘えられることも一つの絆なんですよね。
そして甘えられることは親にとって嬉しいのだ。
だって大切に(厳しく?)育ててきた息子に対してできる親としての最後の甘やかしだもの。


続いては風早父の改心の話。っていうか、隠された正体といったところか。
父が大事にしていたのは息子・翔太と、息子との思い出の品。
いやー、愛が過剰で気持ち悪いっす。
これは何コンプレックスに当たるんですかね。息子のsonでサンコンでしょうか(笑)
別名・風早く大きくなる息子の成長に勝一郎うれしくも悲しいんだからねッ!さんの爆誕である。
四角で形成された顔と身体でありながら、まさかツンデレキャラだったとは…。
おっと、人を見た目で判断しちゃいけないってのがこの漫画の教えでしたね。


冬の一歩手前のある日、風早に一日時間をもらった爽子が2人で訪れたのはゆうえんち。
デートの定番のゆうえんちが描かれるのは初めてですね。
そもそも交際が始まっても学校や自宅がメインなので、あの町の外に二人がいるのが珍しい。
少女漫画としては観覧車でキスの定番は外せません。

しばしの息抜き。明日からは自分の夢に向かって進むだけ。
ただその前になされる会話は真剣で、2人の未来を決める重いお話。
風早が親と話し合って進路を決めた次は、爽子の番です。

恋愛も進路も、迷い込んでしまった道までしっかり描写があるのが本書の特徴。
簡単には決められないこと、躊躇までも丁寧に描いてるからこそ共感がある。
一番離れたくないけど、一番に報告しなければならない人、そして一番に応援してくれた人。だいすきです。

推薦入試組の龍と健人は大学に無事合格。
龍はSっ気ありますよね。
千鶴が単純すぎるということもありますが、弱点を突くこと、そして困り顔の千鶴に悦びを感じているように思えます。


そして矢野ちんは自分の厄介な性格で難儀しますね。
この時期に受験と恋愛、2つのことで頭を悩ますなんて効率が悪すぎる。
ほんと器用なようで不器用な生き方だ。
まさかの爽子にピン先生への恋心を指摘に泣き崩れる矢野ちん。
他の二人の恋心発覚の時よりも乙女な反応をする矢野ちんです。純愛がまた動き出します…。