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少女漫画と小説の感想ブログです

やっぱり観覧車の位置が午前0時になって、キスしに来たら、吐いちゃうかも☆

日々蝶々 10 (マーガレットコミックスDIGITAL)
森下 suu(もりした すう)
日々蝶々(ひびちょうちょう)
第10巻評価:★★★☆(7点)
  総合評価:★★★☆(7点)

川澄の彼女。そして絶対に振り向かない。わかっているはずなのに、後平のすいれんへの思いはどんどんつのっていき、ついに──。人を好きになること、好きでいつづけることの切なさがつのる第10巻。

簡潔完結感想文

  • 苛立ち。少し年上だからいつも一歩先にいたいのに、あいつが先で…。
  • 告白。またもスローラブな人間がいた。そしてすいれんの思わぬ反応。
  • デート。3人で。一緒に行く兄、まかれる兄、一緒に帰る兄。会話ゼロ。


歳をとるほどに時間が早く過ぎるみたいに、巻を重ねるほど時間が早く過ぎる10巻。

年齢と時間の関係は年を取るごとに新たな経験が少なくなるので記憶に残りにくく、それ故に時間の進みが早く感じられるという考えらしい。
それは本書も同じみたいで、1巻の頃はあんなに歩幅が狭くて時間の進みも緩やかだったのに、この10巻では冒頭は2学期が始まり頃なのに終盤では年が変わるぐらいの進行速度である。
これは同じ事を省略しているからなのか、次巻で本編終了という構成を見越しての一足飛びのタイムスリップなのか判別がつかない。
もう高校生活も折り返しを過ぎ、ラスト1年とちょっとである。

なので物語の方もクライマックスに向けて準備が整えられている感じだ。
空手の先輩・後平くんがラスボスだったんですね。
物語の前半の『4巻』から登場しているにもかかわらず、嫌味や現実的アドバイス以外はこれと言って活躍のなかった後平だったが、今巻は後平回ともいうべく活躍だ。


これまで主に相談マスターとして物語に関わってきた後平だが、そんなマスターっぷりとは不似合いなほど遅く自分の感情に気づく後平。
それはもしかしたら相手が川澄だったからかもしれない。
川澄が後平を特別視し、かなわないと引け目を感じるように、後平もまた似たような感情があるみたいだ。

だからすいれんを見ても無意識のレベルで抑制がきかせていた。
しかしすいれんと2人っきりで手を合わせたことによって感情が動き出した。
「すいれんちゃん」から「すいれん」呼びになった事がその証拠か。

後平とすいれん、そして何故か川澄兄・壱との3人での遊園地デートは将来の義兄妹(かもしれない)2人の関係を後平が悪用したらしい。
謎の威圧感を持つ川澄兄も不機嫌な顔をしていないという事は楽しんでいるのだろう。
弟の方が100倍感情豊かで付き合いやすそうだ。
にしても川澄兄弟は勤勉ですね。
部活に勉強、ちょっと無口だけどいい息子たちです。


後平が望む川澄との空手最終決戦。
勝敗自体は恋愛に影響しないのだろうけど二人の因縁に決着をつけるみたいだ。
恋としては、もう試合に向かう川澄・すいれんの態度で結果が見えているけど。
以前あった空手道場の試合の時とは違い川澄はちゃんとすいれんに電話で試合の日時を伝えてるし、すいれんもそれに堂々とした言葉を返している。
これは後平に必要な通過儀礼なのだろう。

でも私には後平の存在が川澄にとって親友にしてライバルという感じがいまいち実感できない。
すいれんと川澄が上手くいきかけてる時に遅れての登場だったし、見た目軽そうで役どころが見えちゃったのも要因か。
ラスボス要員なので仕方ないが、ここにきてすいれんへの想いを膨らませるというのも遅きに失している感がある。
恋のライバルというよりも川澄の成長を描くための人なのかな。

後平の暗躍があるからか川澄とすいれんも少しずつ関係性が変わっていく。
その一つが頬へのキスだろう。
結構、唐突でびっくりしたが、後平の件を心配する川澄がいいこと言ったら、自分でムードが高まったのか顔を寄せていった。
着実にスキンシップが大胆になってきていますね。
抱きしめる事も特別ではなくなってきているようですし。

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『1巻』の頃からは考えられないスキンシップ。彼らが重ねた日々の長さを感じる。
後平に好意を示された後のすいれんの反応は意外なものだった。

確かにこれまでそいういう真剣な告白シーンは川澄以外なかった。
全校生徒の憧れではあったが「高嶺の花」というだけあって周囲がすいれんを見上げるように崇め奉るだけだった。
一対一で告白されるとこうなってしまう体質なんですね。

そう思うと川澄は抱きしめたり、頬に口づけたり、スキンシップを繰り返しているけどすいれんに拒絶反応が出ないという点だけで特別な存在なのか。
これは「運命の人」論というよりも、すいれんのこれまでの辛い経験が生んだ副産物なんだろうけど。

という事は川澄に不信感を持っている時に、川澄に近づかれたら気持ち悪くなるのか。
恋愛の終りが可視化できて便利じゃないでしょうか。
すいれんも次の相手も探しやすいしね。
…なんて二人に怒られそうなことを言ってみる。

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川澄とは叶わなかった観覧車キス。後平が川澄のと同じ側の頬にキスしたのは偶然か⁉
小春が後平を想うシーンは必要なんでしょうか。
多分、次巻で振られるであろう後平の相手としての事前準備なのかしら。
序盤の物語を動かしてくれた功労者を作者なりに活躍させようという目的なのかなぁ。
川澄に恋した小春と、すいれんに恋する後平で合わせ鏡の構造ってのは分かるのですが。
脇役の恋愛って基本、興味ないんですよねー。