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少女漫画と小説の感想ブログです

高嶺の花? 自由に羽ばたく蝶? いや、すいれん君はカメだ! 歩みを止めないカメだ!

日々蝶々 11 (マーガレットコミックスDIGITAL)
森下 suu(もりした すう)
日々蝶々(ひびちょうちょう)
第11巻評価:★★★☆(7点)
  総合評価:★★★☆(7点)

あやの初恋の相手は、りょーすけでした。あきらめなければいけない恋をするあやにすいれんはよりそいます。川澄は自分の進むべき道を決め、町を離れる決意をすいれんに伝えます。すいれんと川澄、2人の未来は─? ひらり、ふわりの恋物語、本編完結です。

簡潔完結感想文

  • 本編完結。かつては会話が続かなかった2人が語る、これからのこと。
  • 初キス回。この場所で好きを自覚して2年。後平くんに自慢しよう。
  • 最終回。人生の門出を皆で祝おう。初読時より2回目の今の方が好き。


物語の歩みが1巻ずつ徐々にその歩幅を広がり、歩くペースが速くなった本書ですが、本編最終巻の今巻ではそのスピードは駆け足というよりも全速力。
修学旅行や3年のクラス替えの重要なイベントもわずか3ページで収まっているし、進路決定のシーンも2ページで終わっている。
そして卒業式の日、校門を仲間たちと一斉に出た2人は手に手を取って未来へ走っていく…。

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修学旅行は全面カット、1学年上の小春は いつの間にかに卒業させられている…。
そんな急ぎ足の最終巻でいきなり議題に上がるのは幼なじみ・あやちゃんの恋模様。
しかもお相手は1巻から登場し続けている意外なあの人物。
私にはそんな素振りは全く見受けられなかったので、蛇足だなと思って読み進めていきましたが、それは私の思い違いだった。

このエピソードは川澄における後平の存在と同じように、あやという存在を通してすいれんの成長を描いているのだろう。
あやのもとに駆けよるすいれんは序盤とは全く違い、人を守ることも出来るまでの変貌を遂げている。

仲間内全員に恋人が出来れば万事がハッピーエンドだ言わんばかりの長期連載の少女漫画は多いですが、本書はそのアンチテーゼのような言葉をあやに喋らせている。
「世の中には 叶えたくない恋もあるんだよ」。
分かりみが深い。
安易な展開を用意せず、すいれんとあやの物語に終始したのは本当に良かった。

ちなみに本編外の4コマ漫画であやの兄の存在が語られている。
男性なのにすいれんも緊張しないその兄の顔はあやそっくり。
あやと良祐がまた似てるのですが、もしかしてあやが良祐に惹かれたのは兄に似ているから⁉
川澄も兄・壱に似ているすいれんに惹かれてるし、登場人物全員ブラコン漫画なのか…。


3年生は卒業後の進路の最終決定時期。
川澄は地元から少し離れた場所の大学を志望し、すいれんもまた自分の方向性を決めるのだった。
その進路決定の描写は2ページがまとめられていて推測するしかないが、川澄は推薦入学なのかな、すいれんも夏服のまま試験会場にいる? これは予備校か?
でも進路は専門学校なので教科の勉強はいらない?
パソコンの画面見てで喜んでるのは合格発表か。
良祐は一般受験で見事合格。
川澄のマンツーマン指導のお陰ですね。
ゆりちゃん、めぐなちゃんも進路決定。
ちなみに進路といえば、その1年前に壱兄も頭のいい地元の大学に入学が決定している。
この人は最後まで謎だったなぁ。
ゴゴゴゴゴゴ、と謎の威圧感を出す(だけの)キャラだった。
彼の恋愛こそ番外編で読みたいが。

友人・めぐなちゃんといえば初登場時から魂胆がありそうな顔だと思っていましたが、何もありませんでしたね。
川澄に横恋慕したり、すいれんに悪意を持って接したりするのかと思ってた。
顔で判断してゴメンよ。
幼なじみのあやちゃんが側にいないすいれんの新環境に必要だったんですね。
これも可能性を考慮していたあやちゃんとも友情におけるひと悶着もなく仲良し4人組として学校を卒業しましたね。
ちなみに、『1巻』からその設定は見受けられる、あや父はカメラ小僧ですね。
あや宅では美少女すいれんを撮ってる変態オヤジかと思いましたよ。

ちなみに『前巻』とは違い今巻では登場がめっきり少ない小春(1コマ)と後平の話は番外編集である『12巻』に追いやられたみたい。
後平のすいれんへの横恋慕はともかく、小春を絡める必要性はあったのかな…?


卒業式に壇上から好きな人に思いの丈を伝えるってのは、少女漫画で人気の胸キュンシーンなんですかね。
私はこれピンと来ないんですよね。
単に好みの問題かな。
答辞で一生愛してますとかは私物化してると思うし、それ以前に教師や保護者の前で恋人への想いを伝えるってのは考えただけで羞恥心が身体を駆け巡ってしまう。
公開告白は真摯さの表現だろうか。

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卒業式の余興のようになった すいれん への告白大会に川澄は…。
1巻ずつ読んでいた初読時は余りのスローペースと、すいれんの学校一の美少女と、喋らない守られるだけの設定にもどかしさを感じていた。
しかし通して読んでみると、加速し続ける構成に心地よさを覚え、すいれんの性格の変化も手に取るように分かって作品への評価が変わった。
異性が苦手なはずの2人が最終的に醸し出す雰囲気は、甘い甘い恋の香りである。
そこに惹きつけられて今日も蝶は舞い続ける。

ただし全体を通してモノローグが分かりにくいかな。
誰のモノローグなのか、どこに繋がるのかなど文章やポエムの飛躍に追いつけない箇所が幾つかあった。