《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

童話 うさぎとかめ。すいれんがゴールするまでこの辺で一休み。って、すいれんっ⁉

日々蝶々 4 (マーガレットコミックスDIGITAL)
森下 suu(もりした すう)
日々蝶々(ひびちょうちょう)
第4巻評価:★★★☆(7点)
  総合評価:★★★☆(7点)
 

すいれんと川澄、2人だけの帰り道。少しずつ話もできるように──。名前をよんでくれるだけで、幸せ。でも…。近づけば、近づくほどつのる想いにすいれんは胸がはりさけそうです。

簡潔完結感想文

  • 水曜日の川澄。次の約束をする二人。少しずつ会話も増えていき…。
  • 文化祭準備。喋った、喋った、クララすいれんが喋った! 不思議な感動。
  • 文化祭当日。すいれんと教室の物陰に隠れる川澄。そこですいれんは…。


すいれんの歩くスピードに合わせていたつもりが置いて行かれる4巻。

すいれんの進化が止まらない。
「となりあるいて」「また一緒に帰ろう」「毎週待ってる」「今日から(敬語)禁止」「文化祭一緒にまわろ」「花火の時は 手首じゃなかったのにな」そしてラストの質問と、今巻では川澄への要望だけでこれだけ話しかけている。

こうやって並べてその内容を見るとすいれんは「高嶺の花」から蝶々になったというよりも、一気に女王様になったような錯覚すら覚える。
最終巻では「さぁ川澄、私を楽しませなさい」ぐらい言ってるかもしれない…。


友人たちのアシストもあり毎週水曜日にすいれんを自宅まで送ることになった川澄。
初めて送ってもらった際、すいれんと川澄は互いに次回を約束する。
水曜日を心待ちにして、二人の時間のために会話を準備する。
そうやって一層輝き出す、すいれんの学校生活。

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一度 空に飛び立ってしまえば 二度目の約束だって簡単にできる。
だが身体は一歩進むと自然に次の一歩の為の予備動作をしているもの。
すいれんは川澄が自分と一緒に帰ってくれる真意を探る。
その為に踏み出す二歩目。
彼らは文化祭を一緒に回ることを約束するのだった…。


そして文化祭。
すいれんと一緒に校内を回る事はやはり容易ではないと悟った川澄は、教室の隅に隠れる。
そこですいれんの口から意外な言葉が出て…。

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恋の主導権は すいれん にあり⁉ 聞きたいことはしっかり聞くタイプ。
これは本当に意外でしたね。
私の予想の二倍は早かった。
もっと引っ張るかと思ってました。
すいれんは一歩を歩き出してからは加速し続け、そして大きくジャンプしていった。
競技は走り幅跳びですね。

特に冒頭で描いた通り、すいれんの進化には驚きます。
「花火の時は 手首じゃなかったのにな」というセリフには違和感を覚えますが、距離を縮めようとするすいれんの切迫感の表れか。
このカップルは受動態の川澄と、能動のすいれんという力関係なのだろうか。
ここも意外な関係性だ。
思わずすいれんに対して「かわいいふりしてあの子わりとやるもんだねと」という昔の歌が頭をよぎりました。

最早、要求を通す事に躊躇がないすいれんに対して、彼女の言葉にいちいち動揺する川澄は純情でかわいい。
初めて一緒に帰った日に笑顔で駆け出して帰るとか、二人の思い出の品のお面を眺めるとか、枕元に置いて寝るとか。
すいれんの一世一代のお願いに「ドッキリっすか」とか言っちゃうムードのない奴だけど。


その他のエピソードとしては文化祭前日にクラスの準備が終わった直後、皆で作った出し物を壊してしまう友人・ゆりちゃんの場面は丸ごと好きです。
完成に浮かれたゆりちゃんから一転、瞬時に顔が青ざめるゆり。
そこにすいれんが近づくが、川澄との下校を楽しみにしている事を知るゆりはすいれんに帰るように促す。

だが彼女はフリフリちゃんとなって首を横に振り続ける。
そしてゆりに向かって自分の意志と気遣いを見せるのだった。
喋らないすいれんに少なからず苛立ちを覚えていた私もここは感動しました。

すいれんとゆりの友情がしっかり示されたエピソードとなりました。
過保護な幼なじみ・あやちゃんに比べて、高校からの友達で、二人だけの時は一方的に喋るしかなかったゆりの姿を依然見ていただけに、このゆりの窮地に手を差し伸べるすいれんの姿は頼もしく、好ましいものだ。
またミスを責めることなく修復に協力的なクラスメイトの反応もまた良くて文化祭ならではの高揚感や連帯感が出ている。


今巻の中盤から分かりやすいチャラ男キャラが登場。
川澄や友人・高屋と顔見知りらしく親しげに会話していた。
物語を引っ掻き回しそうな役割で、そして彼の結末も何となく分かる立ち位置である。
これは連載が長期シフトに変わったという証だろうか。
押しに弱そうなすいれんの姿が目に見える。
次巻が最終巻でも私は良いと思うのだが…。


「日々蝶々 番外編」…
川澄とすいれんが夏祭りでつけていたお面のキャラのアニメの内容。
作者の言う通り「あたたかい目で見」ましょう。
現実でも一癖あるキャラクタが爆発的人気を得たりするから、この「まごころの森のなかま達」もグッズ化したら売れる可能性もゼロではない。
ゼロに近いがゼロではない。