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俺物語!! 10 (マーガレットコミックスDIGITAL)
作画/アルコ 原作/河原 和音(かわはら かずね)
俺物語!!(おれものがたり)
第10巻評価:★★★★(8点)
  総合評価:★★★★☆(9点)
 

大和がバイト先で出会ったパティシエの一之瀬さんに「凛子と別れてくれ!」と迫られた猛男。自信をうしないかけた猛男だけど、大和を渡したくない気持ちに気づき、一之瀬さんに立ち向かっていく。いよいよパティシエ・コンクール当日…全てが決まる運命の日に何かが起きる!?

簡潔完結感想文

  • 告白タイム。どちらも大和に相応しい男たち。大和の選択は?
  • 恥辱タイム。砂川最大の失態。言えない性格、聞かれた独白。
  • 煩悩タイム。荒ぶる猛男、閃く大和。修学旅行編に続く…。


誰もが内心を曝け出す10巻。
今回は砂川まで胸の内を正直に話しちゃいますSP。


3巻に亘って繰り広げられてきたパティシエ・一之瀬と猛男の、凛子を巡る戦いもようやく終止符が打たれる。
一之瀬は自分がしでかしたミスを猛男が挽回してくれた事もあり、猛男はいい男(または漢)だという真実にたどり着く。

それは思い込みが強く、物事を曲解する彼をもってしても曲げられないものだ。
だが、その上で遠慮なしで、コンテストの金賞の獲得の際には大和に想いを告げることを宣言する。
大和の幸せを尊重し自分で身を引く覚悟すらある猛男はコンテスト終了間際に堪らなくなって会場を中座する。

会場を出た猛男の背中はデフォルメのない等身大の10代の男のものだ。
そしてその背中に声を掛ける砂川。
この夏休みは大和はバイトで忙しく、更に男たちの事情を知っているのは大和ではなく砂川で、彼がずっと猛男に寄り添ってました。

ちなみに大和の目から見ると、この夏で砂川は日に焼けたらしい。
多少は肌が焼けるんですね、砂川。
連日の海お疲れ様でした。
一連の騒動の幕を閉じるのは、騒動の始まりのあの言葉。

正直、長かったけれど、読み返すとこんなにも猛男の不安に溢れていたのかと再発見させられる。
その名を呼べるぐらい猛男の中にも確かな、譲れない気持ちが深化していった。
もう猛男たちには何の問題も起きないだろうと安心した矢先、問題が色々と起きてしまう…。


そして続く話は、私が全「俺」の中で一番読み返すの砂川が恥辱にまみれる回。
砂川好きの私には堪らない一編。
こんなに連続して羞恥に顔を赤らめる砂川は滅多に見られるものじゃありません。

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剛田兄妹の成長を誰よりも楽しみにしてる砂川だが…。
性格的に自分の気持ちを「オレ 言えないんだよね」と蓋してしまう砂川が心を開いたのは、生後7か月の猛男の妹・真希ちゃん。
大和という恋人を得て、思索と経験を重ねて成長していく猛男を目の当たりにして猛男が自分から巣立っていくような気持になった砂川は、彼女にだけ本心を伝える。

「寂しい」と。

だがその言葉を発する砂川の後ろには猛男が立っていた。
まさか砂川の動揺で目が定まらない描写が見られるとは。
赤面して逃亡する情けない姿が見られるとは。
でも人に言えない、言わないってのも持って生まれた性格なんだよねと思う私は砂川に深く共感する。

確かに猛男は大和の事を思う事で成長した。
でも砂川の調教だって絶対その一端を担っているはずだ。
砂川が別の意味で赤面してしまうほどの剛速球ストレートな言葉を猛男が言えたのも、この夏の騒動があったからだ。
それを解決まで見届けてくれたのは砂川で、猛男は弱い自分も発見したし、一人では袋小路に陥ってしまう自分の思慮の狭さにも気付いた。
だから砂川があぁやって誤魔化すようにしか受け止められない、
彼の胸を打ち抜く言葉が出てくるのだ。本当に、俺たち物語だ!!


でも砂川、早くも何でも頼られる相談役を辞めたくなったってよ。

大和が可愛すぎて辛い猛男は大和に「手を出したくなる」と率直な相談を砂川に投げかけるが、どうやらこの分野の相談は気恥ずかしい砂川。
砂川が可愛すぎて辛いという相談は誰にすればいいのか。
意識過剰で逆に大和を遠ざけるように接してしまう猛男を不審に思い、大和は砂川の部屋を訪ねる。
砂川の自室のベッドの下に潜ればどんな悩みも解決しますね。
『1巻』では猛男が(その巨体はどう入ったのか)、そして今回は大和が入って本人には直接言えない本音を漏らす。
ちなみにこれは上記の通り本書での砂川もそうだ。
今まで言えなかった事を言ってしまうのが10巻なのだ。

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砂川のベッドの下には秘密が…。
猛男の本心を漏れ聞いた大和は顔を上気させながらも、何かを思いつく。
そういえば『1巻』から大和はスキンシップに前のめりでしたもんね。
問題が解決して嬉しい悲鳴を上げながらスキップをして自宅へ帰っていく大和はかわいいのだが、読者も砂川同様に今後の波乱を予感する。
獅子身中の虫
猛男は自分にも大和にも打ち勝たなければならなくなった。
人類最強とまで謳われているが実は苦難つづきの猛男であった。