作画/アルコ 原作/河原 和音(かわはら かずね)
俺物語!!(おれものがたり)
第1巻評価:★★★★☆(9点)
総合評価:★★★★☆(9点)
剛田猛男は高校1年生。身長2m・体重120kg(いずれも推定)。好きになった子は、いつも幼馴染みのイケメン・砂川の方に行っちゃうけど、真っ直ぐで不器用で鈍感で、男子からは超モテモテ! ある朝、通学電車の中で、ひとりの女の子を痴漢から救ったことで猛男にも春到来の予感…!? 笑って泣けて、胸キュンも満載の、爆笑純情コメディー!
簡潔完結感想文
- 猛男。少女漫画史上最強最大の主人公。ボケ。全てが直線。
- 砂川。猛男の親友、イケメン、ツッコミ、道と道を繋ぐ橋。
- 大和。ベタ惚れ、Wボケ、お菓子ちゃん。恋の全てが回り道。
少女漫画の可能性を広げた作品といっても誇張ではないだろう。
↑の表紙のようなゴリラ男が主役になるなんて少女漫画界の革命だ。
お腹を抱えて笑えるコメディーでありながら、間違いなく恋愛漫画であり、友情漫画でもあるという奇跡の一冊。
猛男には失礼だが外的要因を取り払って、人が人を好きになるというのはどういうことか、という問題が内包されているように思う。
多感な時期に読む少女漫画において、洗脳のように繰り返されるイケメンとの恋物語。
本書はまこと強烈なカウンターである。
原作は河原和音さん、作画がアルコさんの共著である。
河原さんの漫画は読んだことありますが、こんな発想の出来る作家さんだとは知らなかった。
王道少女漫画家というイメージだったなぁ。
いつか河原さん単体でもコメディーを描いてみて欲しいものだ。
ただ本書はアルコさんが作画をしなければ、この面白さ・野性味は出せなかっただろう。
猛男(の外見)を生み出してくれてありがとうございます、と拝みたくなる。
本書も少女漫画では頻出する読切→連載となった漫画。
なので1話の完成度がやっぱり凄い。
電車の中で痴漢から女子高生・大和を助けた男子高生・猛男と幼なじみの砂川。
一目で大和に恋に落ちた猛男だったが、これまでの経験から自分の好きな子は砂川を好きになるという教訓を得ているため、大和と砂川が両想いになるよう不器用なりに努力する…。
この時点では猛男こそ青鬼なんですよね。
彼もまた友達想いの優しい人なのである。
だが大和もまた猛男に恋に落ちている事を知った砂川は一計を案じ二人の仲を取り持つ。
砂川はデキる人間です。
めでたくバカップルが爆誕したのだが、その後の砂川のひと言は何度読んでもジーンとしてしまう。
俺と、俺の親友と俺の恋人の物語である!!
猛男の造形はもう突出していて言うことがないので他の二人についてコメント。
恋の暴走物語において砂川(通称・すな)という常識人のツッコミの存在は大きいですね。
クールでいながら、何だかんだで猛男に対し義理堅い、だからこそ騒動に巻き込まれもする優しい人。
物事全てに冷静というかもう冷淡の域に達する態度で客観的に物事を見てしまう砂川の気質。
それはどうして獲得されたかは、後のお話である。
にしても2話目の最後の猛男の砂川への頼みは叶えられたのかなぁ…。
力じゃ勝てないもんねぇ。
猛男の魅力も満載だけど、猛男には大和がいる。
ならば私は砂川を応援しようという(私のような)人は多いと思う。
本来それは「じゃない方」を応援する天邪鬼気質がなせる業なんだけど、砂川に限っては本質的には「じゃない方」じゃないのが面白い構図だ。
W主演という感じか。
そして、かわいいの集合体のような大和。
ちょっと少女少女し過ぎていて、読者から敬遠されるタイプでもあるのだが、猛男に惚れる人に悪い人がいるわけがないという一点で読者から支持されるだろう。
2話目で1話目の大和の、猛男に近づくためにした工作の数々のネタばらしがある。
これはなかなかの策士だ。
だけど恋の重症患者だから仕方がない、と温かい目で見てしまう。
何しろ恋の相手は猛男なのだ。
彼女が砂川に気持ちが移るなんて心配はこれっぽっちもないだろうから、読者は安心してこのカップルを応援できる(力の限り砂川にも)。
2話目に登場する砂川のお姉さんもいい味出していますよね。
あの砂川が好意に気づかないなんて。
猛男の彼女の存在を知って廊下で崩れ落ちるシーンや、大和と共に猛男の良い所を挙げる場面なんて本当にお腹抱えちゃった。
あの時の姉さんの顔ったらない。
多分、彼女を即座に好きになったのも上記の大和と同じ理由。
なんたって相手が猛男なんだから。
その上でちゃんと大和の背中まで押してあげるなんて、姉さん、さすが砂川の姉さんだよ!!