《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

志望校を母校に! しかし大学側の入学生の選別が発覚。これは差別か、それとも⁉

俺物語!! 3 (マーガレットコミックスDIGITAL)
作画/アルコ 原作/河原 和音(かわはら かずね)
俺物語!!(おれものがたり)
第3巻評価:★★★☆(7点)
  総合評価:★★★★☆(9点)
 

初々しさ満点の猛男と大和は、山へピクニックに出かけるが、お約束のように遭難!! 己の使命は大和を無事に家へ送り届けること。そう決意する猛男だが、一方の大和は初めて過ごす2人きりの夜にドキドキ…。 爆笑と感動と胸キュンの最強トリプルコンボで、少女マンガの枠を軽々突破! マンガ界の話題を席巻する大ヒットコメディー。

簡潔完結感想文

  • お泊り回。野宿ですけど。彼が寝ている隙に大和、色々します。
  • 水着回。水着直視で作画が崩壊。進撃の巨人かと思った(笑)
  • 勉強会。同じ大学を希望する二人。だが大学側が猛男を拒否⁉


デート、デート、デート。どんどん日常度を増している物語3巻。

『3巻』は二人でピクニックしたり、皆で海に行ったり、猛男の昔の好きな人に遭遇したり、一緒に勉強したり、ただただそれだけ。
でもいちいち面白い。
『3巻』でもちょっとばかし山で遭難して、イノシシが正面から突進してきたりするが、事件という事件はそれだけ。

収録作がどちらも最終回のような雰囲気を醸し出していた『2巻』から随分と日常にシフトしてきている。
だからと言ってパワーダウンしているかというと、(今のところ)そんな事はない。
むしろ古典的なシチュエーションに猛男を投入するとどんな事が起きるのかという化学反応が楽しめる。

漫画の登場人物が、容姿が美しくて海辺の人たちの視線を独り占めという描写はあるあるだが、猛男もまた例に漏れずその際立った容姿とパワーで視線を独り占めする。
また海で互いの水着姿を見る場面の胸の高鳴りはどの漫画も共通する要素だと思うが、そこに大笑いも追加されるのはこの漫画だけだろう。
男女ともに純粋な反応をしているだけなのに面白い。

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水着姿に胸キュン ではなく リビドーが高まる
そしてその場面を冷静に見つめる砂川の左右どちらかの半身の描写と沈黙の吹き出しでまた笑ってしまうのだ。
興奮して我を忘れかけた猛獣を、手慣れた手際で調教する砂川にもまた大笑い。
視覚情報を遮断して、目的に特化した機能性の高い服だと信じ込ませる。
猛男の吹き出しが催眠状態です。


私が好きなのは猛男×勉強ですね。
猛男と勉強は水と油で相反するものだとばかり思っていましたが、これは発想が奇抜で面白い回に仕上がっている。
勉強法も独特だし、それに付き合う砂川もいい。
まぁ今回の彼には企みがあるんでしょうけど。
他漫画で同じ大学を志望する高校生カップルを見ても、その前に別れそうなどと思ってしまうが、猛男たちにはそういう視点で物を見ない。
むしろ二人が2年以上後も一緒にいる将来像に一点の曇りのないことが嬉しいぐらいだ。

ちなみに同じ回での大和を自宅に招く際の猛男ファミリーはとても良い。
猛男と父はいつも妊娠中の母親の体調を心配しているが、猛男もまた両親から愛されている事が分かるエピソードだ。
絡み方が不器用で面倒くさいけど(笑)


以前にもまして猛男の顔のバリエーションが格段に増えましたね。
そしてどんな表情をしても彼だと認識できる。
守備範囲の広い男です。
水着姿の大和を見た猛男はもう地球上の生物ではありません。
このシルエット、どこかの漫画で見た凄い怖いモノを連想するんだけど、どこのどなたなのかが出てこない。
猛男の崩し方を見るにつけ、やはりアルコさんの作画が面白さを倍増させているんだな、と感謝の気持ちが湧く。


猛男を通すと、ごく普通の感情もとても純粋なもののように昇華されるのも本書の面白さ。

猛男の中学時代の好きな人に猛男と大和が遭遇する回など、単なるカップルの嫉妬や疑心暗鬼の話として終わりそうだ。
しかし猛男の真っ直ぐさ、その真っ直ぐさに感化され砂川の的確なアドバイス、大和の迷いのない手の取り方など、そこに彼らの個性が加わると人を想う事の素晴らしさまで説かれているような気がする。

それは猛男も大和もちゃんと自分の気持ちを表しているからだろう。
好きだという気持ちも、手を繋ぎたい、身体に触れたいという願望も、嫉妬も、相手を思うが故に傷つけてしまった後悔も、全てを言葉にしているから気持ちがいい。
嘘のない世界なのだ。

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砂川比で 最大級の喜びを表現しております
でもやっぱり一押しは砂川。
彼女がいたことがない砂川、休日に一日中自室で本を読んでいる砂川、誕生日を素直に祝われる砂川、毛布にくるまる砂川、さり気なく嘘をつく砂川、好きだ!!