咲坂 伊緒(さきさか いお)
ストロボ・エッジ
第10巻評価:★★★★★(10点)
総合評価:★★★★☆(9点)
蓮のことが好き。わかってるのに――。けんかから守ってくれた安堂が傷ついている姿を見て蓮からの告白を受け入れられなかった仁菜子。でも、断ってしまった本当の理由はもっと別のところにあるのではないか、とぐるぐる悩む仁菜子に安堂がある行動を――。そして、仁菜子がやっとみつけた自分の気持ちとは? みんなの「好き」が積もる感動の最終巻。がっちゃんこと三好学が主人公の番外編と仁菜子・蓮のその後を描いた特別編も収録。
簡潔完結感想文
- 安堂の一押し。全ての信号が青に。恋の始発列車 うごきます。
- 告白で始まって告白で終わる。一途な思いは今、届いた。
- 特別編。蓮って顔に出ないだけで結構エロいと思うの。
完全無欠の片想い漫画も、主人公たちが両想いになってしまったので最終巻。
今回、再読して驚いたのが、てっきり放課後の教室で、蓮の席に座っていた仁菜子を蓮が目撃し、恥ずかしさで逃げ出した仁菜子を蓮が両方の手で囲む場面で仁菜子が観念して告白したのだと記憶を改ざんしていた。
告白にはうってつけのシチュエーションなのに、また先送りされた。
しかしこの時点では問題が一つ残っていたのだった。
どこまでも後腐れなく蓮との両想いの達成させようとする作者だから、最後に仁菜子と安堂に最後の対話をさせる。安堂は露悪的な言葉を仁菜子に投げかけ、そして仁菜子は自分の中の卑怯と向き合う。
ここでちゃんと仁菜子に自分の狡猾さを認めさせることで、典型的な悲劇のヒロイン像から彼女を遠ざけている。
これは安堂の仁菜子への(と蓮への)エールである。
安堂は結局、損な役回りを演じているが今回は色々と得をしてる。
失われた彼の初恋は実るのだろうか。
にしても作中の初恋成就度は高いですね。
大樹ぐらいか玉砕したの。すぐ別の恋始めたけど(笑)
そしてそして電車のホームで2回目の告白。
この間、10巻ずっと仁菜子の気持ちがぶれなかったのが本書の最大の特徴。
大樹の告白に流され恋を錯覚したままだったり、安堂の告白に応え恋人同士の関係を経験したりしなかった。
だからどんなに回り道をしても、時に自分の気持ちを偽ろうとしても、この時のためにその経験があったと思えるのだ。
すれ違ったり、引き留めたり、ホームや電車が登場場面として多い漫画でしたね。
なんかの暗喩なのだろうか。考えたけどまとまらない。にしても仁菜子が告白する表情は、ぶっちゃけ不細工ですね(笑)
でもそんな事で気持ちが萎える蓮じゃないし、急激に感情が迸るのが仁菜子だもんね。
印象的なシーンになりました。
余談:猫の社長が母親になってるけどシングルマザー状態なのかしら。蓮は床に座って勉強するタイプ。
以前も描きましたが初長編作品で、こんなに当初の構想をしっかりと実現させる作者の構成力は本当に凄い。
ベストセラー作家、人気作家になるはずだ。
全10巻のあいだ、ずっと絵のクオリティが変わらないのも読者にとってはありがたい集中力だ。
長期連載になるほど、締め切りや雑事に追われ手を抜くことを覚え、絵が単純化したり雑になったりする作品も多々見られるが、本書はそんな心配もなくゴールまで駆け抜けた。
こんなに恋人同士双方の性格や心情がしっかり描けている漫画はそうそうない。
素晴らしい漫画をありがとう咲坂大先生。
「ストロボ・エッジー三好学ー」…
学くん高校1年生の頃のお話。
学が委員会で見染めたのは歳も背も学より上の女性・律子先輩。好意を全面に押し出す学に律子の態度は素っ気ないが…。
元気キャラにもいろいろあるお話。
バイト代ためて海外に行く訳はこれか。
学の積極的な行動と実直な言葉は、軽い時の安堂と誠実な時の安堂を足して割った感じに近いのかな。
大阪弁とか喋りそうな感じですよね学くん。
失敗しても凹まない自分をフル回転させて生きていく等身大の姿は、同じく年上の女性と恋愛関係にあった蓮の背伸びした感じとはまた違い、彼らの性格の差が良く出ている。「ストロボ・エッジ 特別編」…
付き合い始めた仁菜子と蓮のその後のお話…。
これですよ、読者が読みたかったのは!という痒い所に手の行き届いた短編。
安堂に奪われた仁菜子の初キス問題に触れていたり、蓮とのデートで感じる仁菜子の幸福と一抹の寂しさ、そして蓮の不器用さと胸の高鳴り、そして本編終了後での蓮との初キス。
蓮の口角が上がりまくってるし、頬は赤らんでる。幸せ者め。
読者も蓮がデートプラン考えてる、それが頭を占められてるってだけでニヤニヤしちゃいます。
あんなスマートだった蓮がただの恋する高校2年生の男子になっていく様もちっとも失望しない。
この短編にあるのは幸福感だ。
書いてて思ったが、これ仁菜子の恋人同士になったらやりたい事が全て詰まっているということ。
手を繋ぎ、ケーキを分け、笑い合う。
これ1巻あたりの仁菜子が見た夢の話だったりしませんかね(笑)