《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

誠実な男たちには別れが二度必要である。別れと、別れのための別れだ。

ストロボ・エッジ 7 (マーガレットコミックスDIGITAL)
咲坂 伊緒(さきさか いお)
ストロボ・エッジ
第7巻評価:★★★(6点)
  総合評価:★★★★☆(9点)

高2になった仁菜子。蓮と安堂と同じクラスになる。遠足で鎌倉へ。仁菜子と蓮、仁菜子の友達・さゆりと蓮の友達・裕太郎は同じ班。仁菜子は今の蓮と自分の関係について「友達」だからすごく近くにいれると思うと切ない。さゆりと裕太郎は、過去に何かがあったらしい。2人になった機会に裕太郎が告げたのは…。さゆりと裕太郎の中学時代を描いた番外編も収録。

簡潔完結感想文

  • さゆり時々仁菜子。実例:恋人がいても不安になる時について。
  • 裕太郎 時々 蓮。実例:男の恋愛が本当に終わる時について。
  • 仁菜子と蓮の恋愛手押し相撲。蓮が力を入れる頻度が多くなってる。


主役を押しのけるほど、友人さゆり・裕の元カップルのお話が占める7巻目。

さゆりと大樹カップルに占領された『4巻』と同様に、作者は今回彼ら元カップルを使って、男が終わった恋愛にけりをつける時を描く意図があるのだろう。

実際に裕の心の決着が付いたそのすぐ後に蓮も元カノ・麻由香に再会する機会を得て、別れの際には言えなかった自分の本心からの言葉を伝えている。
謝罪と感謝と離別。
それが言えた蓮の心にわだかまりは消え去った。
麻由香さんの都内への引っ越しは物語からの絶対的な退場を意味するのかな。

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二度のお別れ そして…。
今後、蓮が仁菜子と付き合うことになっても麻由香に目撃されたり、そのことで蓮に罪悪感を抱かせないための仕込みですかね。
さぁ蓮、君の心置きないハッピーライフは約束された。
そしていよいよ蓮が自分の気持ちに素直になり、仁菜子へ好意を伝え始めていく。
物語はますます盛り上がること間違いない!


今回の構成も今後の展開もしっかり組み立てられたものだけれど、だからと言って裕くんの恋愛の一から十まで興味がないのも事実。
作者も「やや影が薄い裕」とか言っちゃってるし、そんな華のない人にスポットライト当てても、舞台は映えない。
自分の過去の恋愛語りだして、そこからアドバイスや教訓を導き出そうとする展開、必要な説明だと分かっていても苦手だなぁ。

元カレ裕くんとのギクシャクした関係と同時進行で起こるさゆりのもう一つの問題、今カレ大樹の心変わり疑惑。
こちらもどうという話ではないのだが、『4巻』感想文でも書いた通り、こちらは仁菜子たちに将来起こり得ることとして読むと関心が持てる。
付き合っていても不安になったり不審に思ったり順風満帆ではない事が伝わる。
大樹がさゆりに言った「思ってる事 ちゃんと言おう」という言葉は、蓮が麻由香に出来なかったことでもある。
それが出来れば交際は継続するという教訓である。蓮にとって教訓ばかりだね7巻は。


そんな中でも蓮と仁菜子の胸キュン場面はしっかり用意されている。
はっきり言って砂漠のオアシスだ。
ただ本人たちは互いの想い人は自分じゃないと思っていて「友達」の範疇を超えないように自制しながらではあるのだが。

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ロボットは愛を学び 表情が多様に。
鎌倉遠足の回は、さゆり・大樹・裕の問題も進行させながら、蓮の変化もしっかり描いていて凄い。
背伸びをやめて完璧人間の仮面を外した蓮は少し幼くみえるし、感情というものが素直に顔に出ている事も分かる。
何回赤面してるだ、ってぐらいに表情豊かで読者も胸キュンである。


ストロボ・エッジーきのうを願う人ー』…
中学2年生の寺田裕太郎は通っている塾で上原さゆりと出会う。
間もなく付き合うことになった二人だが、主導権はいつもさゆりで…。

ここでも出張るか裕くん。
恋愛の記憶に関して「男はフォルダ保存、女は上書き保存」という言葉がありますが、裕くんはまさにそんな感じ。
さゆりフォルダを矯めつ眇めつして思い出をリピート再生する裕くんだが、さゆりには今現在の恋があるだけ。
そういう点でも客観視も出来ないと、いつまでもウジウジしたりストークしちゃったりするかもしれないよ。
裕くんは戻りたい、さゆりを最優先に出来なかった過失を帳消しにしたいという気持ちが最優先で、実際に付き合ってみての違和感は都合よく消してる気がするなぁ。
たとえ高校生になってやり直してもそこもリピートされると思われる。

最終巻では学くんの過去話も出てくるけど、結局、主要男子キャラ全員の過去回が番外編になってるんですね。
作者の母性愛ですかね。私はモブとしか思ってませんでしたが(苦笑)