《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

天然おバカヒロインは当て馬からの告白すらも忘れる。男性諸氏は コイツの どこに惚れるの!?

甘い悪魔が笑う(4) (なかよしコミックス)
鳥海 ペドロ(とりうみ ペドロ)
甘い悪魔が笑う(あまいあくまがわらう)
第04巻評価:★★(4点)
 総合評価:★☆(3点)
 

デンジャラス執事(バトラー)ラブ! 暴走する千莉(せんり)のしかけた罠で、ハルルの男装が、あばかれる! 一心(いっしん)は、ハルルを守りきれるの!? ――男子校に入りこんでしまったハルル。一心のクラスメート・千莉から強引にせまられ、男装がバレそうになってしまう! 悪魔な執事・一心は、ハルルを守ろうとするけど、千莉のメイドが誘惑してきて!?

簡潔完結感想文

  • 三角関係から複雑な四角関係に発展するかと思いきや、全ては途中放棄の運命。
  • 急に冷淡になる悪魔と、急に怒り出すヒロイン。どちらの気持ちも全く分からん。
  • 当て馬に少しも揺るがないヒロインは長編には向かない。作品も何がしたいのか不明。

莉(せんり)の道も一歩から だが ゴールが消失する 4巻。

これまでに比べれば普通の恋愛模様が見られる。当て馬の千莉や その手下で美女メイドの香月(かづき)などが登場し、彼らの存在によってメインの2人(ハルルと一心(いっしん))の関係が変わっていく。

敵か味方か謎の女性メイド・香月。敵か味方か何のために出てきたのか不明のまま行方不明に…。

しかし何度も言う通り、本書には きっちりとした軸がない。千莉によって2人が結ばれる契機となるなら彼の登場にも意味が出てくるのだが、千莉は いつの間にかにフェイドアウトして行方不明というオチ。
序盤は一心の家族関係を匂わせ、中盤は当て馬・千莉の暗躍が描かれるが、終盤には その設定を全部なかったことにする。全体的な視野が欠如した漫画の悪い見本みたいな内容である。


場人物の誰にも共感できないのも本書の残念な所だ。この巻のハルルは自分のことしか考えられず、一心に千莉をあてがわれたら彼を逆恨みし、怒鳴り散らし、千莉とのデート中も一心の動向しか気にしていない。更には千莉の告白も忘却しているというアホさなのだが、千莉は そんなハルルを追い求める。ゲスト男性は あっという間にハルルを好きになるが、頭の弱い少女を好きになる理由が さっぱり分からない。

それは一心も同じ。彼の場合は作品上 気持ちを隠す必要があるのは分かるが、彼が気にする身分差が どう影響するのかが分からない。千莉に長年 仕える香月が身分差を感じるのは分かるが、一心の生まれは執事ではない。自分から志願して執事になっただけだ。この即席の主従関係を絶対的なもののように描いて苦しい恋をしているという演出なのだろうか。

ハルルが告白できない理由も、一心が それに応えられない理由も特にないのに、決着を付けないためだけに話が長引かされている印象だ。

こんな2人に囲まれ、ハルルには その存在を無価値だと一刀両断され、一心には いいように手玉に取られる千莉が可哀想だった。チャラ男に見えて純情な彼なのに、その純情を踏みにじる2人は嫌な感じだった。せめて最後までハルルへの愛を貫き通せれば良かったが、千莉は なぜか いつの間にかに音信不通になる。初読時も そんなに楽しい内容じゃないのに、全てが虚無であることが判明してからの再読は更に辛い。真面目に感想文を書いていること自体が腹立たしいと思うほどだ。

この後、千莉と香月の恋がサイドストーリーとして展開すれば彼らにも意味が出てきたのに、本当に物語から追放され、存在を抹消されるから可哀想。どのゲストキャラも再登場することなく使い捨てられる運命で、作者は本当にキャラたちを愛しているのかと疑問に思う。


「devil's lesson 13」…
イケメンコンテスト後、ハルキ = 男装のハルルは千莉の家に誘われる。本当は女性である秘密を握られているため従い、一心も同行する。千莉の家は豪邸で、メイドが何人もいる。その中のメイド長・香月が新キャラとして登場。
千莉の家では酒池肉林。女性から服を脱ぎ、男性の お相手をする。こうして一心は香月を部屋に連れ込んでしまい、ハルルは千莉と部屋に2人きりにされる。ハルルの貞操の危機かと思われたが、部屋に入った瞬間、千莉は土下座して謝罪する。どうやら いいムードでカムフラージュすることで謝罪の機会を窺っていたらしい。
そこで千莉の誠意を見たハルルは自分の本当の名を彼に告げる。だが それは千莉にフォーリンラブをもたらして…。

「花ざかり」な作風になったと思ったら、一気にアダルトな内容に変貌。少女読者たちは予測のつかない展開に歓喜するかもしれないが、軸足が定まってないので、色々なことに手を出しているように思える。子供しか喜ばない子供だましである。

「devil's lesson 14」…
翌日、ハルルの女子高ではハルキの話題で持ち切り。その上、千莉がハルルの学校に現れるが、教師が入ってきたため、千莉はハルルの机の下に隠れる。そこで ちょっかいを出されるハルルだった…。

なぜか千莉が自分から出てくるまで教師は何も気づかない謎の ご都合主義。
ハルルは千莉に迫られ困るが、一心は そんな2人を傍観するだけ。一心が好きなハルルとしては彼の無関心が悲しく、そして身勝手な怒りを覚える。ヒロインしてるなぁ…。
千莉が指定した日時にハルルは登場し、彼に「ごめんなさい」をするつもりだった。だが そこに一心と香月が登場し、ダブルデートとなる。

「devil's lesson 15」…
こうしてダブルデートが決行される。実はダブルデートを提案したのは一心で、千莉に対しての策略であった。ハルルは千莉よりも、仲良さげな一心と香月が気になる。香月だけは一心の策略に気づいている様子。
ハルルが香月に問いただすことで、彼女が まだ一心と交際していないことが判明。それに欣喜雀躍して機嫌を直す お嬢様ヒロイン。そのテンションのまま千莉にも接し、千莉を無駄に喜ばせる。一人でピエロになってしまっている千莉が悲しい。

好きじゃない方を彼氏役にするダブルデート。少女漫画ヒロインは時に残酷なことをする。

デートの終盤、ハルルは千莉に誘ってくれたことへの感謝を述べるが、千莉は告白の返事が欲しい。そこで初めて千莉の気持ちを思い出す おバカヒロインの真骨頂を見せる。
自分の徹底的な敗北を悟った千莉は、告白を冗談にする。香月の方が賢そうだし、千莉は悪い人じゃないのに損ばかりする人だ。

「devil's lesson 16」…
一心がハルルの気持ちに向き合わないことを知った千莉は、まだまだ あきらめないと宣戦布告。三角関係は継続する。これは、執事に対するメイドという対称性を持つ香月を作品に残すための手段だったのだろうか。千莉よりも香月の方が重要視されているとしか思えない。

ハルルは一心への逆恨みが消えたので ご機嫌で彼にも お土産のスノードーム(?)を用意する。だが そのお土産は車中で疲れ果てて眠ったハルルをベッドに運ぶ際、ねぼけた彼女が一心をベッドに引き寄せたため一心が落としてしまう。

更に寝ぼけたままハルルは一心の頬にキスをして、一心の理性は崩壊。彼からハルルにキスをしようとする。直前にハルルが寝言で一心の名前を言ったことで彼は正気に戻り、身分の差を思い出す。割れてしまったスノードームは何を意味するのか。

ハルルだけが陽気な朝を迎えている中、香月が2人の関係を邪魔するため、千莉によって刺客として送られた。冒頭では男2女1の三角関係は、最終的に男1女2の三角関係と変容していく。あんまり先が気にならないなぁ…。