鳥海 ペドロ（とりうみ ペドロ）
甘い悪魔が笑う（あまいあくまがわらう）
第03巻評価：★★（4点）
総合評価：★☆（3点）
お嬢さまの知らないこと、おしえてあげます。ピュアピュアお嬢さま×悪魔な執事のキケンな恋物語（ラブストーリー）、キョーガクの新展開！！――ハルルに仕える一心（いっしん）は、いちばん近くにいてくれるけど、いちばんキケンな“悪魔な執事”。そんな一心の通う男子校に入り込んでしまい、ハルルは超～ピンチ！！男装して逃げようとするけど、それを許さないのが、一心とはまるでタイプのちがうワイルド系“悪魔”で……！？
簡潔完結感想文
- 初の女性ゲストキャラの登場で、一心自身が どの女性を選ぶかが初めて見える。
- 男子校潜入で男装し、花ざかりな1日が始まる。そして唐突に始まるコンテスト。
- 「黒い悪魔」に対して白いチャラ男登場。最長ゲストキャラだが唐突にリストラ。
花の種類が『花になれっ！』から『花ざかり』に変化する 3巻。
デビュー作が連載化となり、大きな構想もなく始まった本書。これまでは様々な職業イケメンが登場し、彼らをヒーロー・一心（いっしん）が凌駕することで絶対的なヒーロー像を構築してきた。同時に一心とゲストイケメンにヒロイン・ハルルが ちやほや されることで、読者の満足感を満たす。これが宮城理子さん『花になれっ！』方式である。
ただ この『3巻』は これまでと違うアプローチをしている所が見られた。まずは初の女性ゲストキャラの登場。ハルルに関わるイケメンではなく、一心に関わる女性が参戦することで、肉食獣に捕食される一心のピンチを守ろうとするハルルの奮闘を描く。そしてラストでは一心が その女性ではなくハルルのもとに帰ってくるで、初めて彼からハルルを選ぶ姿勢が見える。何もかもを所有している美女より、バカでドジな旧態依然とした少女漫画ヒロインと過ごす毎日が一心にとっては楽しいらしい。
この選択は、まだまだ一心にとっては執事として仕える主の選択、という部分が多いかもしれないが、少なからず恋愛感情もあるはずだ。これから一心の感情が見られる場面が増えるといいなぁ。
そして本書の後半では、いきなり『花ざかりの 君たちへ』のような男装による男子校潜入が開始する。
ここで登場するのが一般の高校生・千莉（せんり）。これまでは大人だけでなく年下の男性でも何かしらの職業に就いていたが、千莉は ただの高校生。深読みするとしたら、千莉は一心が「執事」としてではなく、ただのクラスメイト、同格の存在としてハルルを奪い合う存在なのだろうか。千莉からハルルを守る理由は主だからではなく、高校生の一心の素直な感情なのかもしれない。
ただ本書が徒労まみれなのは、この三角関係もなし崩し的に終わるからだ。読者に何かを予感させておいて、全くノータッチで次の話に進む。連載としての連続性より、1話1話を読者に楽しんでもらおうという方針なのかもしれないが、要は支離滅裂なのである。
ここまで連載も継続してきたのだから、そろそろ物語の軸となるものを探し出して欲しかった。
例えば『3巻』で千莉を含めた三角関係が始まったのなら、これを最後まで継続させても良かったと思う。少女漫画では、2人の関係性を紹介し終わって一息つく3巻から三角関係が始まるのは恒例ですからね。他のゲストキャラと違い千莉の活躍は長く続くが、唐突に終わり、何がしたかったかが見えてこない。一心の背景といい、匂わせるだけ匂わせて、何の説明もなく終わって、読者を困惑させるばかりだ。
話の方向性が定まってないからなのか、プロット作りに時間を割いてしまい、ネタに苦労したんだろうな、と思われる回は作画のクオリティが下がっているような気がする。決め顔以外は、つぶれた饅頭のような のっぺりした顔が気になった。
作品を通して何が描きたちのかがないから、話があっちに行ったりこっちに行ったりして、更にはネタに困って作画が疎かになる悪循環に陥っているように見える。『3巻』後半なんて執事関係のない学園モノですからね。準備不足、想像力不足が見て取れる。
ネタ漫画として吹っ切れている訳でもなく、大真面目にやって ツッコみ所の多い漫画になっている。
「devil's lesson 9」…
友人の助言を聞いて一心にヤキモチを やかせることにしたハルル。お見合いをすると嘘をつく。しかし一心はハルルの お見合いを推進するため、お見合いの練習をすると言い…。
一心にドレスアップしてもらって お世話を焼いてもらうのは いつも通りの展開。2人の恋愛の駆け引きの結果も いつも通り。ゲストキャラがいないとテンプレ展開が満載。
「devil's lesson 10」…
同じクラスの杏（あん）が一心に目を付け、一心が もてあそばれてしまう回。その杏と一心のデートをハルルが尾行する。
感想は上述の通り。ハルルが着ぐるみに入って1日過ごすが、彼女には無限の体力があるのだろうか。いつものことながら、一心が格好つける場面が あんまり締まらないのが本書の残念な所。これで杏を やり込めたとは思えない。
「devil's lesson 11」…
男子校に潜入したまま出られなくなったハルルの「花ざかりな」男装学園ライフ。一心にはバレて、彼と困難を乗り越える二人三脚の連係プレーが見どころか。女子生徒が入ったことが知れると一心が退学処分になるかもしれないからハルルも必死になる。
この回で登場するゲストは千莉（せんり）。一心のクラスメイト。ハルルは隣のクラスの「ハルト」として誤魔化されるが、合同体育の どちらのクラスの生徒からも疑問が湧かないのは ご都合主義。そしてハルルが一言も喋らなくても会話が続く謎現象が続く。
ハルルは普段は見られない「男子高校生」としての一心が見られて満足。だが一心が脱出ルートを確保している最中に、ハルルが女性だと千莉にバレて…!? この話は回を跨ぐ 実に連載っぽい内容だ。
「devil's lesson 12」…
ハルキが女性であると疑う千莉は実際に身体を見て確かめようとする。ピンチに現れるのは一心。そこから唐突に始まるのがイケメンコンテスト。文化祭でもないのに公開人気イベントが開催されるという。
一心は自分がコンテストに出場し、注目を集めてハルルを逃がしやすくする。だがステージ上から千莉がハルキを呼んだことで、3人が壇上に上がることになる。
既にハルキが女性であることを知る千莉、ステージ上で彼女をからかい、困惑する姿を楽しむ。そのピンチも一心が体を張って乗り切る。今回は一番 一心の不慣れなことばかりしていて、彼のストレスはMAXだろう。
この行動に千莉は改心して、イベントは大成功！ だが千莉のアプローチは続き…!?
午前中に通常授業をしていたと思ったら、午後は お祭り。もうツッコむ所しかない。この一心と千莉のサービスに対してハルキ＝ハルルが勝利するとは思えない。一言も喋らない挙動不審の男なんて不気味なだけだろう。
