春木 さき（はるき さき）
ちっちゃいときから好きだけど（ちっちゃいときからすきだけど）
第09巻評価：★★（4点）
総合評価：★★（4点）
修学旅行先で翔（しょう）との絆を深める一方、兼城（かねしろ）くんとも“友情”を深めたつばさ。そして沖縄に帰ってからは、いよいよ進路を考える時期に。「将来の夢は翔のおヨメさん！」…なんて、これからもずっと翔と一緒にいたいと願うつばさだけど――急展開のキュンキュン☆キュートな幼なじみラブ!!
簡潔完結感想文
- 本書において未来の約束は破られる。修学旅行での自由行動、地元での進学。
- その子のために兼城と同じ班になったのに、その子は別の男と付き合いだす…。
- この1年ちゃんと夢に向かって動いていた翔に拓かれる未来と、つばさ の夢。
遠距離危機が持ち上がるということは、もうすぐ作品も終わるの（喜）!? の 9巻。
三角関係は継続させた状態だが、物語は進路問題、それに伴う遠距離危機が持ち上がる。遠距離恋愛は少女漫画におけるクライマックスの合図。さすがに本書も畳む方向で話が進んでいるみたいで安堵するばかりである。
『9巻』で一番 腹が立ったのは つばさ ではなく、彼女と一緒のグループで修学旅行を行動するクラスメイトの女子生徒。この人は兼城（かねしろ）狙いで渋る つばさ を説得し、どうにか男女4人の混合班を成立させた。しかし修学旅行当日、彼女は兼城ではなく もう一方の男子生徒と仲良くなり、2日目の夜までには彼から告白され交際を始めることになった。まぁ彼女の存在自体が、つばさ を どうにか兼城と行動させるために あったのだから仕方ないが、これには唖然とする。彼氏がいても翔に接近し、つばさ に宣戦布告をしてくる諸見里（もろみざと）といい、本書の女性たちの頭の軽さ、脳内の お花畑感は好きになれない（勿論つばさ も）。余りにも「好き」が軽すぎて、私の好みではない。ただ この子が勝手に兼城以外の男性に惹かれたお陰で、つばさ と この子の薄っぺらい友情は守られた、とも言える。この展開はヒロインを傷つけないためでもあるのだろう。
修学旅行という高校最大のイベントであっても、お話の作り方は地元にいる時と一緒。これまでと違う部分があっただろうか、という またもネタの再利用が目立つ。携帯電話を不通にしてみたり、物を落としたり、転んだり、つばさ の周辺でトラブルを起こして話を進める感じが読んでいて楽しくない。本当に作者は読切短編の手法で長編を作っているだけで、新しいアイデアとか構成に挑戦することなく物語が完結しそうである。
物語も終盤になって、兼城の片想いの終わり、2人の遠距離危機の乗り越え方などで見所を作って欲しい。修学旅行は非日常の特別な感覚がないままで残念だった。
東京への修学旅行中の、ちょうどバレンタインデーに翔と一緒に時間を作れそうで つばさ は期待に胸が膨らむ。ただ本書において翔との約束は破られるのが お約束。
約束が破られるのは当日かと思ったら、出発前から翔から その時間、東京の美術大学の見学をすることが発表された。約束を反故にされたことと高校卒業後の翔の東京行き、という二重の悲しみが つばさ を襲う。だが大学の方は見学だけで、翔は沖縄県内での進学を考えているという。
こうして失意の中、修学旅行が始まる。つばさ のミッションはバレンタインデーに翔にチョコを渡すこと。旅行中、つばさ の友人は当初の狙いの兼城ではなく、別の男子生徒と一緒に行動することが多く、必然的に つばさ は兼城と多くの時間を過ごす。更にはケータイを落として不通にしてしまい、翔に連絡を取ることが出来なくなった（ケータイを落としたり忘れたりで話を作ってばかりである）。
2日目の お土産購入の時間に、つばさ は翔の姿を捜すが見当たらず落ち込む。そこに翔が見つけてくれて しばし一緒の時間を過ごす。この束の間の2人きりの時間に つばさ は彼にバレンタインチョコを渡す。すると翔からは3日目の自由時間の お詫びに ぬいぐるみ つきストラップをプレゼントされる。
翔との修学旅行での楽しい思い出は出来たが、2日目の夜、兼城を狙っていたクラスメイトの女性から同じグループの もう一方の男性と交際することを打ち明けられる。こうして3日目の自由時間は彼らカップルと、つばさ・兼城組の2手に別れて行動することになる。
つばさ は兼城との行動を躊躇するが、カップルになりたての2人のために別行動を承諾する。人情に弱いのが つばさ である。この展開も何回目だって感じですけど…。兼城は つばさ のしたかったことを優先してくれ、2人は楽しい時間を過ごす。時折、兼城が「友達」のラインを越えようとするが、すぐに撤退する。
だが集合場所に戻る直前、つばさ は翔から贈られたばかりのストラップがないことに気づく。東京の地理や方向感覚が鈍い つばさ を単独行動させるのは危険と判断した兼城は彼女と一緒に今日一日の工程を巡回する。だが途中で つばさ が転倒し足を怪我したことで、兼城は単独行動に切り替える。そして時間内にストラップを見つけ、つばさ は心から兼城に感謝をする。
沖縄に帰るための空港内で つばさ は翔を発見し、いつもの通り懺悔タイムとなる。毎回、この懺悔タイムで つばさ は罪を浄化し、翔は その懺悔に気持ちを暗くしているのが悲しい。
修学旅行から帰ると学年末テスト、そして進路の問題に直面する。
翔と一緒にいられること以外 何も考えていない つばさ は進路に悩む。翔に相談しても冷たい。やっぱり彼は修学旅行での件を怒っているのではないかと思う。つばさ にも呆れるが毎度、翔の気持ちの切り替えの出来なさにも うんざりする。
冷たく突き放してから優しくするという自家発電のヒーローごっこも成長が感じられない。翔の、というよりも作者が こういう風にしか彼を動かせないのだと思う。こういう単発のお話は毎回 終わり方が同じで作品の浅さが滲み出ている。
つばさ と違って学業の方も優秀な翔は、東京への美術大学への推薦入学の話を持ち掛けられる。翔は その話を自分の中に しばらく留める。この話を職員室で兼城が立ち聞きするのだが、彼も翔の秘密は守る。
その後、翔は つばさ を珍しくデートに誘い、そこで彼女に進路で悩んでいることを告げ…。
