《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

美術予備校に通っているせいで彼女との時間が取れないので「I LOVE YOU」を絵に込める。

ちっちゃいときから好きだけど(8) (別冊フレンドコミックス)
春木 さき(はるき さき)
ちっちゃいときから好きだけど(ちっちゃいときからすきだけど)
第08巻評価:★★(4点)
 総合評価:★★(4点)
 

文化祭2日目、翔(しょう)のライブペインティングも大成功! さらにつき合って1年記念のお祝いもできてシアワセいっぱいのつばさ。これからも、もっともっと翔と一緒に思い出作りをしたいつばさだけど…? そして文化祭では翔と兼城(かねしろ)くんの関係に変化が…? キュンっともどかしい幼なじみラブ!!

簡潔完結感想文

  • キスや言葉よりも1枚の絵の方が雄弁。この絵が一番 刺さったのは兼城?
  • 女性ライバルは足早に去り、当て馬も撤退後を見据えた動きを見せる。
  • 2年目の交際は過去回の寄せ集めで成立してて既視感しかありませんけど。

れまでの内容をコピペすれば1話完成する疑惑、の 8巻。

今回は冒頭の翔(しょう)の絵のパフォーマンスが良かった。この絵を描いたことが これまでで一番 翔が つばさ を好きという気持ちが伝わってきた。つばさ は表層的に感動しているだけだったが、この絵を見た兼城(かねしろ)は衝撃を受け、そこから つばさ を翔に預けるような言動を見せ始める。この三角関係からの撤退を心に決めているようで、更には早くも次の恋のフラグまで立てているように見えた。『8巻』も引き続き、三角関係では誰も動きを見せない現状維持優先だが、兼城が先を見据えた動きをしているのが まだ救いか。そして女性ライバルは静かに撤退していく。意味の分からない動きで、彼女も作者も何がしたかったんだか…。

彼女の知らない所で お互いを認め合う2人。このライバル関係の方が恋愛より魅力的。

2人の交際は文化祭回で2年目を迎えるのだが、この1年で2人が積み上げてきた関係性は まるで見えない。相変わらず つばさ はクリスマスなどイベント事は翔と過ごしたいだけで彼のことを全く考えてないし、翔も自分が つばさ を不安にさせていることを棚に上げて臍を曲げたり機嫌を損ねたりと大人げない。2人に足りないのは圧倒的に会話量で、話し合うことなく すれ違い仲直りばかりを繰り返す。

そして2年目も同じことを繰り返す作者に うんざりした。今回のクリスマス回は全部 過去の内容の繰り返し。手作りケーキを用意するとか、翔からのサプライズのプレゼントとか厚顔無恥に同じことを繰り返す。2年目に違うことが出来ないのなら今年は大幅に割愛すればいいのに、結局 作品は当て馬の兼城とイベント事に頼ることでページを埋めているような状況だから それが出来ない。作者にとって交際後、そして2年目を描けるのは僥倖なのに、そのチャンスに漫然と打席に立っている感じがする。ここまで引き出しが少ないとは、と2年目の描写を見て失望するばかりである。本当に失礼ながら、なぜ この作品は売れたのだろうか。


化祭2日目、翔は美術部のイベントで人前で絵を完成させるパフォーマンスをする。翔が描いたのは『6巻』で つばさ といった恋愛の聖地の絵。彼が それを絵にしたことに つばさ は大喜びする。

ただし翔が多忙で彼とは文化祭を一緒に回れない。つばさ も美術部のはずなのだが翔と両想い後は放置。『3巻』で新入生を歓迎して以来、美術部のシーンはない。真面目に部活をしてれば翔と会う時間が出来るのでは…??

この文化祭で、兼城と つばさ の友達・しーちゃん のフラグが立ったような気がする。ならば兼城は玉砕して さっさと退場してくれ、と思う。彼への印象が どうこうではなく、作品の停滞を早めに打破して欲しい。
そんなフラグが立ったのに兼城は つばさ を翔が捜していたという情報を伝えず、彼女と一緒に文化祭を回る。つばさ が兼城の強引な誘いを断れず、翔に秘密が出来るという展開は何度目だ…。

一緒に文化祭を回っていただが兼城だが、つばさ が翔のことを気に掛けているのを知り、彼女を開放する。だが その直後、兼城が男性に絡まれて殴打されてしまう。最初に その男性のことを制止したのは翔で、彼が殴られそうになったのだが兼城が身を挺して翔を守った。その後の保健室での男性2人の会話によると、兼城は翔のことを認め、絵が描けなくなるなどリスクを負わせたくなかったからだと話す。翔のパフォーマンスで一番 心を打たれたのは兼城なのかもしれない。そして これは事実上の撤退宣言とも取れる。

兼城は つばさ と翔を解放し、2人で文化祭を見るように促す。再び彼らの関係を認めるような損な役回りになっている。
文化祭は彼らにとって交際開始の記念日でもある(『1巻』での曖昧な恋愛成就だったが…)。あれから1年が経過した記念に2人は文化祭で2ショット写真を撮影する。会えない時間 → 会って好きを確認するという流れ作業的な内容だなぁ。


して2年目のクリスマス回。相変わらず翔の周辺に諸見里(もろみざと)の影を見る つばさ は気になる。信用するって決めたもん、と言いながら信用していない つばさ は、何がどうなったら信用できるのだろうか。そして自分の行動は翔に信用されていると思うのか。

2回目のクリスマスもカップルらしく過ごしたいだけの つばさ だが、翔はコンクール用の作品を手がけるので忙しいという。アニバーサリーには手作りケーキが つばさ の必勝テクニック。だが入れてもらった美術予備校の教室で翔と諸見里が身体を寄せ合う場面に遭遇し、つばさ はケーキを落として2人の間に割って入る。それは誤解で、しかも『6巻』ラストの諸見里のライバル宣言は撤回される。お騒がせキャラというか無意味なページの消費に徒労感が募る。

ケーキを食べてプレゼントを渡す、1年前のクリスマスでも同じことしてませんでした(『2巻』)? 幸せなのはいいですけど、2年目の2回目のクリスマスが、心情的にも展開的にも1年目と同じなのは本当に工夫が無さすぎる。2年目2回目は同じイベントをしない、または するにしても全然 違う方向から描く、世の中の よく出来た漫画は そういう読者のためのサービスに溢れているというのに…。

つばさ はプレゼントを用意していないのに、翔は彼女へのプレゼントを予備校にまで持ってきている。この気遣いの差は どうだろうか。ヒロインばかりが幸せになる漫画がいい漫画じゃないよ、と言いたい。約束できずに すれ違うという展開も何度目なのだろうか。

クリスマス、すれ違い、ケーキ、キス、プレゼント、同じことが描かれる2年目という読者の絶望。

あっという間に3学期。3学期の一大イベントは修学旅行。グループ分けは1グループ4~5人であれば男女一緒でもいいらしく、当然のように つばさ は兼城と同じグループになる。これはクラスメイトの女性が兼城を狙っていて つばさ は その応援に回ったからだった。
一応、翔への義理立てをするのだが人情に弱い つばさ は兼城に話を伝えてしまう。翔に それを伝えた際、彼が何も言わないことを怒ってないとして つばさ は安心する。だが翌日からの翔の態度で彼が怒っていることに ようやく気づく。

その お詫びに初詣デートだったはずの週末に、つばさ は翔の小間使いとして働く。『3巻』でも同じことしてたよね…。翔の家に誰もおらず、いい雰囲気になるのも既視感。何度も中断されて大人しく初詣に行く2人。もう完遂しちゃえばいいのに。2人が性行為を躊躇うような理由はないし、そうすれば物語は終わるのに、と思ってしまう。

でも2人が仲良くしていると、それは その後の波乱の始まりでもある。しかも修学旅行中の約束なんてしているが、それは絶対ダメになるフラグでしかない…。